#1 松浦弥太郎さんの『日々の100』
2019年も終わりを迎えようとしていた12月の末ごろ、帽子を買いに下北沢へでかけた。お店の前に立つとまだ開いていなくて、仕方なく古本屋をうろつくことにした。出会いというのはうっかりやってくるもので、店頭の1冊100円コーナーに目が吸いこまれる。ぎっしり並んだ本の題名を右から左へ、舐めるようにたしかめていく。するとあるではないか、松浦弥太郎さんの著書。わたしは迷わず手にとった。弥太郎さんの「日々の100」、一日ひとつ、読んでいこう。
就活を終わらせたころ、人生の答えでも求めるかのように闇雲に通った書店で「これだ」とみつけたのが松浦弥太郎という人物だった。「生きることの基本」をひとつずつ掬いあげて織りなした弥太郎さんの言葉の数々はすとんと胸に落ちてきて、足元を強く固めてくれた。
さて、わたしもやってみることにした。「わたしの日々の100」。これがはじめの1ページ。自分の持ちものはそう多くはないけれど、部屋の中をみわたせば意外とある、「これはあのときこんなきっかけで…」と語れるもの。ずっと使っている愛着のあるもの、こだわってようやくみつけた宝もの、なくてはならない優れもの。ひとつずつ手にとって、ふりかえってみよう。いつかそれが「わたしの日々の100」からはずれるとしても、今の100ぶんの1として、かぞえてみる。