自分の趣味全開で絶対見たほうがいいと思う映画10選
前に見かけたTwitterのハッシュタグで『#自分の趣味全開で絶対見た方がいいと思う映画10選』というのがあって、ともかくテーマを決めて10本選んでみました。今回のテーマは「刑事モノ&犯罪系」どちらの要件も満たしているのもあるしそうでないのもあったけどなかなか面白いおススメのやつを選んでみました。でも実際にそれだけじゃない、趣味全開で観とけな映画って10選では終わらないのが世の常です。ということでまとめてみました。ご笑覧頂ければ幸いです。
趣味全開必見映画10選(刑事&犯罪系)
ダーティ・ハリー
フレンチ・コネクション
48時間
ザ・ドライバー
ザ・クラッカー真夜中のアウトロー
ヒート
ブリット
ミッドナイト・ラン
イノセンス
ボーダーライン
『ダーティ・ハリー』
最近ちょっとこの映画で色々いわゆるTwitter(X)界隈がなんかざわざわしたんだけども、tonbori堂にとっては「いろはのい」みたいなものでして、初見は日曜洋画劇場での山田康雄さん吹替えのが最初でした。その後、名画座でかかる時に行ってスクリーンでも観ました。シネコン全盛になってからは『午前10時の映画祭』の最初の方でもかかったのも行きましたね。タイトルの文字が鮮やかな黄色と茶色でTVで観た分や名画座で観たやつは褪せて退色していたんで、本当はそうだったんだと新たな発見がありました。懐かしい話です。監督はドン・シーゲルで主演はクリント・イーストウッド。マカロニウエスタンで再ブレイクを果たしたイーストウッドが本国アメリカでのキャリアを確かなものにした1本です。お話としては単純でマンハント(人狩り)をするような悪人を保安官のような刑事(ハリー)が退治するような西部劇のような刑事ドラマでした。単純ではあるけれど当時のサンフランシスコの風俗や世相の気分も点描されていて、マイベスト映画の1本です。
『フレンチ・コネクション』
『ダーティ・ハリー』とは同年の公開だったそうで。これもTVで観たのが最初でした。ポパイことジミー・ドイル刑事を演じたジーン・ハックマンの吹替えを担当したのはコロンボでお馴染みの小池朝雄さん。俳優としても脇役や敵役で上手い演技を見せている小池さんもまた吹替えが上手い俳優さんでした。相棒のクラウディことラソー刑事役ロイ・シャイダーは羽佐間道夫さんでした。あの頃(1970年代)は顔出しの俳優さんでも吹替えはやっていたし舞台をやってる方は基本的に吹替えは上手かったように思います。監督はウィリアム・フリードキン、翌々年にはホラー映画の金字塔『エクソシスト』を撮りました。とにかくハリーが孤高の保安官な風情に対してドイル刑事は猟犬のように食らいついたら離さない。こちらも今の刑事映画のエッセンスが詰まっている、善と悪の対決ではなく人と人のぶつかり合いが活写されている1本だと思います。NY地下鉄の高架下(地下鉄の高架線ってのも変ですけど高架を走ってるところがあるのです。)でのカーチェイスなどアクションの観どころも有るのでおすすめの1本です。
『48時間』
これは劇場に観に行きました。監督はウォルター・ヒル。主演はニック・ノルティとエディ・マーフィー。エディは人気コメディアンだったそうですが映画はこれがデビュー作。ここからの快進撃で『ビバリーヒルズ・コップ』シリーズや『大逆転』『星の王子ニューヨークへ行く』などが思い出深いですね。ニック・ノルティはタフガイイメージが強いんですが拳銃の構え方、仕草が上手いなって観てて思いました。両腕でダーティ・ハリーと同じM29/.44マグナムの4in銃身(ハリーは6in銃身で長い)を構えるポーズや、それを犯人に奪われ代わりに使うM1911A1ガバメントの動作確認など所作が手慣れていてマックィーンなみに痺れました。銃撃戦、カーチェイスどれをとっても面白いしフレンチコネクションのドイルとはまた違った意味で猟犬(ドイルがブルドッグならこっちはグレイハウンド)という風情のケイツ(ノルティ)と若いのに飄々とした風情を持ち口を開くとマシンガントークのレジー(エディ)の凸凹コンビは本当に良かったですね。これの吹替えもエディと言えば下條アトム、ノルティといえば石田太郎というコンビのTV版の吹替えが本当に良くてこちらも機会があれば是非とも。DVD版の吹替えはノルティが大塚明夫さんでエディは山ちゃんこと山寺宏一さんでそちらも悪くは無いんですが、石田下条コンビの印象が強く刷り込まれてて…。相棒(バディ)ものとしては相手が犯罪者という変則ものでしたがやっぱり相棒映画としてもこれは外せない1本ですね。
『ザ・ドライバー』
こちらも映画館で観た作品です。きっかけが多分、当時購読してた雑誌の情報だと思うんですがこちらも『48時間』のウォルター・ヒルです。『48時間』はエディ・マーフィーを迎えているのでハードな話ですがコメディタッチもあります。でもこちらは硬派な作品で内容は犯罪を犯した者を逃がす逃走専門のドライバーという話です。今でこそ逃走専門のドライバーの映画だけでなく米のケイパームービー(強盗モノ映画)では強盗には直接加わらず逃走専門のドライバーが出てくるのもありますが当時としては珍しかったと思います。主演は甘いマスクで青春映画のスターだったライアン・オニール。イメージチェンジを図るために挑戦したのかどうかはその当時全然そういう事を知らなかったのでとにかく無口な人だなと思ったのをよく覚えています。そのためちょっと違う映画ではあるんですがライアン・ゴズリングの『ドライヴ』っていう映画がこれは『ザ・ドライバー』やんか!となりました。(よくよく観ると全く違うものですが下敷きにはなっていると思います。)
『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』
マイケル・マン監督のプロの強盗が主人公の映画です。『ザ・ドライバー』などと同じくケイパームービーの一篇です。主人公はプロなので計画は念入りに。いたずらに仲間を増やさない。そして何かあったらすぐに逃げる。マン監督の『ヒート』でデ・ニーロが演じたニールにも通じる主人公像が既に確立している作品です。マン監督は初期の頃からリアリティを求めアドバイザーとして元泥棒や元刑事を雇い、彼らを劇中で出演もさせています。そこから着想を得た主人公なので似通ってしまうかと思っています。それと特筆すべき点は銃撃戦。シュートアウトと呼ばれる銃撃シーンでしばしば主人公フランクは見事なトゥハンドホールドでコルト・ガバメントを構えます。マン監督の銃撃シーンに対するこだわりの原点といってもいいかもしれません。その主人公フランクにはジェームズ・カーン。『ゴッドファーザー』では粗野なパチーノの兄を演じハチの巣になったけど今回は相手をハチの巣にしています。マイケル・マンのある意味、原点の作品だと思います。
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『HEAT/ヒート』
そして『HEAT/ヒート』、この映画はアル・パチーノとロバート・デ・ニーロの共演ということで大きな話題になりました。でも趣味全開という部分で言わせてもらうとやっぱりクライマックスの10分以上に渡って繰り広げられる銃撃戦です。銀行前からの道路を封鎖しての銃撃戦は他の映画では未だ越えられない迫力を産んでいます。実際道路での銃撃戦シーンは他の映画でも凄いってのはあるんですがやはり『ヒート』の銃撃戦はエポックメーキングだと思います。多分それまでそんな長大な時間の銃撃シーンというのは準備もそうですがリアリティが無いと思われていたと思います。ですがニール率いる強盗団が銀行を襲うという情報をキャッチし急行するパチーノの演じる刑事ヴィンセント。そして銀行を出てきた強盗団と刑事が銀行前で鉢合わせパトカーで道路封鎖されて八方塞がりの中、逃走を図るニールたちと阻止するため包囲するヴィンセントたちのと攻防。見ごたえがあり固唾を飲むとはこの事か!となるシーンでした。今でもここだけ観なおしています。
『ブリット』
スティーブ・マックィーン主演の刑事モノ映画です。この映画実は最初に観た時はいまいち全体像が掴みづらく、その後数回ソフトで見直してもやはり判りづらい話なんですが、雰囲気がとにかくカッコいい。スティーブ・マックィーンがカッコいいからかもしれないけど(笑)タバコを吸う、ホルスターを装着する。何気ない所作がカッコいいんですよ。それとカーチェイス。ここだけは一番盛り上がるところです。それがこの映画の根幹だったりします。先に挙げた『フレンチ・コネクション』でもNYの地下鉄の高架下の激しいカーチェイスがあるのですがそのカーチェイスシーンにも関わってるビル・ヒックマンが創出したチェイス。マックィーン自身もステアリングを握ってマスタングで強烈なカーチェイスを演じたこのシーンは後の刑事もの、ポリスもの映画や犯罪サスペンス、アクションに至るまで続きとうとうカーチェイスマシマシなワイスピシリーズを産み出したと言ったら言い過ぎでしょうか(笑)
『ミッドナイト・ラン』
ロバート・デ・ニーロ主演で助演にチャールズ・グローディンを迎えたデ・ニーロ演じる賞金稼ぎが元ギャングの会計士を護送するのに口封じのための殺し屋や商売敵にFBIまで巻き込んで逃走するお話です。米映画ではよくある設定なんですが、刑事事件の容疑者でも普通に保釈が認められる事が多く、保釈金を積めば出廷期間までは拘置施設に入ることもないのですが、当然そのまま逃走する者もいます。そして多くの場合はこの保釈金を肩代わりするベイルボンズという業者(貸金業者)が貸し付けており、そのまま逃亡されると元金が裁判所に没収され回収出来なくなるため賞金をかけて逃走犯を捕まえるというのが現代の賞金稼ぎの仕事です。スティーブ・マックイーンの遺作『ハンター』も実在のバウンディハンターをモデルにした作品でした。デ・ニーロ演じる賞金稼ぎも腕利きですが、いろいろくたびれた感じでいい味を出しておりデ・ニーロ自身もこの作品を気に入っており再演したいという話もありましたけど結局今に至るまで実現していません。でも面白い映画なのでグダグダ説明するより観てくださいという映画です(笑)
『イノセンス』
押井守監督の『攻殻機動隊GHOST IN THE SHELL』の続編にあたる映画でそもそもは『GHOST IN THE SHELL2』として企画されていたのをスタジオ・ジブリの鈴木Pを宣伝Pに迎えてタイトルを『イノセンス』に変更したものです。物語は義眼サイボーグの大男バトーと刑事上がりのトグサのバディものになっていますが、前作でマトリクスの裂け目の向こうにいってしまった少佐こと草薙素子も絡んできます。ペシミズムにも思える雰囲気を纏いながらもマトリクスの裂け目にも行けず悶々とするバトーが主人公のハードボイルドな1本です。何かと観てしまうんですが、草薙素子少佐役の田中敦子さんがお亡くなりになられてこの座組での(SACも含めて)公安9課はもう聴けないのかと思うと、これからも何かに付けて見る事になるかと思います。
『ボーダーライン』
テイラー・シェリダン脚本、ドゥニ・ヴィルヌーブ監督のクライムアクションというには淡々と描かれた酷薄な映画で、乾いた空気とヒリヒリとする緊張感の中、主人公のFBI捜査官ケイトが地獄を巡るという映画です。2作目もありますがまずはこの1作目をご覧ください。クライマックスで視点が切り替わり、最後にまたケイトに戻ってくる事で混乱する人もいるかもしれませんがヴィルヌーブ監督は何かを巡って喪失する物語が好きなのかもしれないと思わせる1本ですし、突如として炸裂する暴力の渦を描くのが好きなシェリダン脚本も堪能できる1本です。謎の男ベニチオ・デル・トロや胡散臭いCIA捜査官ジョシュ・ブローリンなど役者も適材適所すぎて好きな1本です。
以上10本
もちろんご紹介した作品以外にも色々とおすすめしたい作品はあるんですが今回はここまで。何かと言うと「10本」と区切りありますが、キリがいいんですよね。10本という数字が。とは言え今度はどんなネタでご紹介しようかと頭を悩ましそうです(笑)