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#おうち旅行 フタコブラクダの乗り心地:中編

お家にいながら旅を楽しむ素敵な企画 #おうち旅行 参加作。
昨日のnoteの続きです。

「ユー、テレフォン、ミー、OK!?」としきりに確認するお隣さん。首を横に振り、顔の横に手をかかげてチャオっとお別れし、入国審査場へと向かいます。
かわいい緑のスタンプをパスポートに押してもらい入国。預入荷物をピックアップし、出口で待っていた現地ガイドさんと合流しました。

ホームステイ先のゲル(遊牧民の移動式テント)までは4WD車での移動です。
空港を出てウランバートル市街を抜けると、すぐに道が変化しました。あたりは真っ暗な草原です。車のライトに照らされた道は道路と呼ぶには頼りない。
いうなれば、草原の中にまっすぐ伸びる、草がやや踏み倒された跡です。


日本語堪能なモンゴル人ガイドさんと会話をしているうちに遠くまできたようです。車が止まりました。
真っ暗やねんけど。

あった。闇の中にぼんやり白いゲル。
ガイドさんに先導してもらい、分厚い布で作られたゲルの中に入ります。

裸電球が下がった薄暗いゲルの中、浮かび上がる4人の人影。
中年男性、中年女性、小学生ぐらいの男の子、そして破裂しそうにいい笑顔の中年女性。
ガイドさんが紹介してくれます。
「こちらホストファミリーのお父さん、お母さん、子ども、えっと、知らない人。」

知らない人。

「では、ホームステイ、楽しんでくださいね!」
そう言い残してガイドさんは去って行きました。3日間ガイドさん無し、指さし会話帳と身振り手振りで過ごすホームステイです。


外は吐く息が白い寒さ、中央にストーブが焚かれたゲルは心休まる暖かさ。
無口なお父さん、無口なお母さん、緊張気味の息子さん、そしてニコニコえびす顔のおばちゃん(親しみを込めてこう呼ばせていただく)と夕食を食べました。
シャイなホストファミリーに代わって、おばちゃんが食事を勧めてきます。
「マリナ、マリナ、イート!グッド?グッド!」
ホストファミリーは私たちのやりとりをながめて静かに微笑むだけ。お父さんもお母さんも無口すぎて、おばちゃんに関する情報は引き出せません。おばちゃん、本当に名前しかわからない。

その人が何者でもいいじゃないか。
ニンゲンハ、ミンナ、トモダチ。


食後にみんなでテレビを見ました。
大きな発電機につながれたテレビに映し出されていたのは、映画『タイタニック』(1997年・米)。
「マリナ、マリナ、ルック!チタニック!」
ディカプリオにうっとりするおばちゃん。

突如、硬さを帯びるおばちゃんの表情。
ホストファミリーの息子くんにモンゴル語で布団に入れと指示します。
そして、私にジェスチャーで知らせてきます。
「マリナ、トイレット。レッツゴー。」

うん、知ってる。
もうすぐタイタニックのあのシーンですよね。
気まずいのわかるよ。


おばちゃんと外に出ます。草を踏むとしゃりしゃり音がする。霜が降りているのかな。
さっぶー!!のリアクションを取りながらおばちゃんが言います。
「トイレット、ヒア、ジャーーー。」
覚悟はしてた。
ほんまにトイレないんや。
草原一帯がみんなのおトイレットなんや。

ズボンをおろし、しゃがみこむおばちゃん。
私も意を決して尻を出し、しゃがみこみました。
気持ち良さそうに放尿しきったおばちゃんが、よくやった!と言わんばかりにこちらを見てきます。暗すぎて表情は見えませんでしたが、きっとウインクをしてたのでしょう。

おトイレのあとは、なぜだか、無性に楽しかったです。
よくわからないけど、謎の高揚感。
女性に生まれると連れションを体験することってなかなかないですが、仲良し同士の男性はいつもこんな連帯感を感じながら放尿してるんですか。どうなんです。
なんかずるい。

おばちゃんと連帯感を育んで、暖かいゲルに戻り、その日は眠りにつきました。
(ちなみに風呂/シャワーはありません。三日間no風呂です。)


朝になりました。が、

おばちゃんの話をしていたら1600字を超えてしまったのでここまでにします。
今日も、タイトルのフタコブラクダに辿り着けなかった。

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