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最凶タッグ誕生 ーいじめ当事者たちの邂逅

地域の子育てイベントに顔を出しているうちに、顔馴染みの子育て仲間が増えた。そんな付き合いの浅い仲間で集まって、児童館で子どもたちを遊ばせ、子育て談義をしていたときのお話。


小学生の上の子がいるお母さんが言った。ちょっと前に子どもがいじめにあっちゃって、胸がギュッとなってトイレに隠れて泣いちゃった。ウンウンとみんなで共感して一通りの話を聞き終えたとき、ひとりが言った。

「わたし思うんだけどさー。いじめられる子の支援はよくあるけど、いじめる子の方が真にサポートが必要なんじゃないかと思う。」

たしかにね。いじめる側をケアすることで、いじめが減るかもしれない。

「わたし昔、超いじめっ子でたくさんいじめてきたんだけど、ある日突然気づいたの。こんなことしてたら友達がいなくなるって。それでお風呂にこもっていっぱい泣いた。でも、その辛い気持ちは誰も受け止めてくれないんだよね。いじめられっ子は心配してもらえるのに。」

え、しょぼ。そのレベルの話?

彼女の(しょぼい)苦労話は続く。いじめる側「も」辛いならば、百歩譲って同意だ。でも彼女の主張は、いじめる側の「方が」辛い、である。

私は思わず話をさえぎってしまった。
「私、元いじめられっ子。」


いまでこそ生まれてこのかた順風満帆といった顔をして過ごしているが、小学校6年間、私はいじめられていた。
幸運にも、いじめから脱出できたあとは人間関係に恵まれ、長年のいじめで会話下手だった私も、数多の失敗を乗り越えてコミュニケーション強者になった。元いじめっ子の彼女も、どこからどう見てもコミュ強。相手に不足はない。ガンガン行かせてもらう。

(私は、同窓会に現れた元いじめっ子が当時のノリでいじろうとしてきたのを「相変わらず失礼だな。」と返り討ちにし「え?し、しつれい……?」とキョドらせた人間である。強く出てくる相手には、フルスイングで側頭部をぶん殴る人間だ。)

私のカミングアウトを「え、そうなんだー。」と軽く受け流し、いじめる方が辛い論を展開しつづける彼女。屈託がない。卵が先かヒヨコが先かという話だが、屈託がない子はいじめられない。いじめられたことがない子は屈託がない。


ここは追い討ちをかける。
「風呂場で1回泣くとかどうでもよくない?こっちは自殺未遂3回だよ。」
自殺、という響きに、さすがに彼女は言葉を失った。他のお母さんがおろおろしながら、未遂でよかったよ〜、とハグしてくれた。うっかりホロリとしそうになったそのとき、

「なんで自殺とかしようと思うの?死んでも意味なくない?」

こいつまだ言ってるぜッ!!おひさまの下ばかり歩いてきた奴は言うことが違うなァーッ!?
数年に渡って、来る日も来る日も、一瞬たりとも楽しい時間がない生活を想像することは、おまえには出来んのだろうなァァァーーッ!!!

「いじめる側は何も思ってないよ。これ本当に。あ、死んじゃったーアイツ、こんなことで死ななくてもいいのに、ぐらいにしか思ってない。ははっ。」

知ってるよォォ。知ってはいたけどよォ〜!はっきり言うじゃねェかァッ、おまえはよォォォォ〜ッ!!

今まで何人をいじめたんだ。と言う問いに「お前は今まで食ったパンの枚数を覚えているのか?」とでも返しそうな彼女とのいじめ談義は、どこまでも平行線であった。

無駄無駄無駄無駄無駄である。

まぁ、別に彼女をやり込めるのが目的ではない。いじめる「方が」辛い、に異論を唱えたかっただけだ。この話はおしまいにしよう。
ちなみにここまでの会話、信じられないかもしれないが和気あいあいと進行された。コミュニケーション強者たちの匠の技である。

いじめサバイバーとして不死鳥のように蘇った私と、過去の悪行を省みた彼女とで、目配せをして言いあった。

「自分の子が大きくなって、いじめる方か、いじめられる方、どっちになるか分からないし。いざというときは相談し合おうね。」

元いじめっ子と元いじめられっ子。そこそこヘビーないじめに関わってきた2人による最凶タッグがここに成立した。

しょーがないのだ。人間は。

どーしょーもない。

でも、残念なことに、人生のキラキラはしょうもない人間たちの関係性の中から産まれるのだ。

人間はしょーもない、と割り切って人付き合いしているうちに、しょうもなくない人たちにきっと出会えるから。
そのあとは人生キラキラだ。
キラキラを見るまでは、死ぬな。


※ 第三者の発言をここまでクローズアップしたnoteは普段書きませんが(エッセイにて他人をおちょくるように描くのは自分の美学に反するため)、イジメに対する積年の恨みが無差別に元イジメっ子である彼女に向いて書き散らかしてしまいました。深く反省しております。
……イジメは大罪だからな。イジメの罪を、noteのネタにされることで少し浄化しろい。

P.S. 過去イジメられたイジメられっ子のみなさま。彼女は今も元気に楽しくやってます。

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マリナ油森
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