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#おうち旅行 フタコブラクダの乗り心地:中編その2

お家にいながら旅行を楽しむ素敵な企画 #おうち旅行 参加作。

先に言っておこう。今日もタイトルのフタコブラクダは出てきません。


モンゴルの大草原にポツンと建つゲルの中で、ホストファミリーのお父さん、お母さん、息子くん、おばちゃん(知らない人)と目覚める朝。

すぐに仕事が始まりました。

まずは息子くんと一緒に、ゲルから数百メートル離れたところに流れる小川へ。手押し車で運んできた金属製の大きな容器に水を汲みます。
これがまた重たい。30kg以上はあった。
普段Macbook Airより重たいものは持たない私だったので(当時の話。育児中のいまは20kg近い長男と12kgの次男を抱える毎日。)「うっ……」となりつつ、息子くんの手を借りながら、水を満タンにした容器2つをなんとか手押し車に載せました。

容器を載せた手押し車をゲルまで押し帰るのも一苦労。なんせ地面はデコボコです。両腕と腰と脚に力をこめて、小石に乗り上げふらついても手押し車は断固として倒せない。水を死守しなければなりません。

これを息子くん(10歳)は普段1人でこなしているというのです。


ゲルに戻り、次は羊を入れていた囲い(柵)の扉を開け、羊を放牧。囲いの中に落ちている羊の糞を拾います。今度はおばちゃんも参戦。
協力しながらシャベルで糞をすくい手押し車に集めていきます。集めた糞はゲルの脇に積んで乾燥させ、ストーブの燃料として使うのです。
ゲルのぬくもりは羊のウンチで支えられている。ちなみに燃やしても臭くはない。

この作業もまた足腰と背中の筋肉にきます。


昼過ぎには放牧していた羊を回収。
私は右サイド担当。

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ぶらぶらのんびり歩きながら羊を追うので激しい運動というわけではないですが、朝に解放した羊、数時間後には遠くまで行っているんですね。

写真のこの日は徒歩で行って帰ってきましたが、羊の群れが肉眼で豆粒ぐらいにしか見えないぐらい遠くに行ってしまっていた日には、お父さんが運転するバイクに私と息子くんが乗って羊を迎えにいき、バイクで追いかけ回して連れて帰りました。


とにかく一日をとおして運動量が多い。

ただ生活するだけで全身が鍛え上げられる国。モンゴル。
モンゴル人男性は都市部の人も草原の人も、もれなく「仕上がって」いました。服の上からでもわかる全身を覆う筋肉。


モンゴルの恐ろしいところ。それは、外仕事以外でも身体を鍛えるイベントが発生するところ。
いつでもどこでも誰とでも。突如はじまる『モンゴル相撲(ブフ)』。

モンゴル相撲は日本の相撲と少しルールが違い、手のひらを地面についただけでは負けになりません。
倒されかけても手をついて復活できるため長期戦になりがち、相手の肘か膝か尻か背中か頭かを地面につけなければ終わらない、体にも頭脳にも体力が必要な相撲です。

モンゴルに滞在している間、誇張ではなく何十回もモンゴル相撲で勝負しました。モンゴルの人は本当に相撲が好き。


一緒に過ごすうちに打ち解けて、目くばせで会話ができるほど仲良くなったホストファミリーの息子くん。

会話が途切れると、そう、相撲がはじまる。

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(敗者は羊のウンコまみれになる)

はじめの数回は歯が立ちませんでしたが、私は負けず嫌いです、徐々にコツをつかみ強くなりました。
ホームステイ二日目の夕暮れ時には勝負は五分五分に。

ホームステイを通じて稽古を重ねた結果、ホームステイ後に滞在した乗馬キャンプのモンゴル人ガイドさん(女性)にたやすく勝つほどの力士に成長しました。

モンゴルの成人男性にはまったくかないませんが。
こちら、全力で挑んだにもかかわらず赤子のように抱えられてポイッとされた私です。

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モンゴル人、つおい。
ちなみにこの男性は、中編に登場した「知らないおばちゃん」の旦那さんです。おばちゃんのお迎えに来て、私と挨拶をして、いきなり相撲。


モンゴル人の相撲愛は強い。

ホームステイをしていたのはちょうど秋場所の時期。
モンゴルの草原でもNHKの相撲中継を見ることができ、家族や、入れ替わり立ち替わり訪れる来客と一緒に、日本の相撲を観戦しました。
彼らはモンゴル出身力士も日本人力士も関係なく応援し、相撲自体を心から楽しんでいました。

日本の相撲界で繰り返し起こるモンゴル出身力士バッシング。
週刊誌だったかワイドニュースだったかの「彼らは日本に出稼ぎに来ている」といった言説を見たことがありますが、あれ、裏取なく記者が思いつきで言っただけの根拠のない悪口なんじゃないかな。

だってモンゴルの人、心から相撲を愛しているもの。
力士はモンゴル人のヒーローだもの。
彼らは出稼ぎに来ている、と書いた記者。ゲルに泊まってみろよ。
キラキラと目を輝かせて取組を見つめる彼らと並んで相撲中継を見てみろよ。
その熱を隣に感じてもなお、出稼ぎ、って書けるか?


力士の話で2100字を超えたので今日はここでおしまい。


そうそう、そういえば。

ホームステイ中は指さし会話帳を使わなかったんですよ。英語はまったく通じませんでしたが、身振り手振りと表情で事足りました。乗馬キャンプではガイドさんが日本語堪能で、これまた指さし会話帳の出番はなく。
前編に登場した「結婚してください」「No」が私の指さし会話帳の中で一番使われたフレーズになったのでした。

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マリナ油森
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