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産後4ヶ月で専門医試験を受験した話。その3

5)母乳育児

母乳?混合?ミルク?

 受験するにあたり、悩んだのは息子への授乳でした。母乳が出れば母乳で、と考えていましたが、受験の際には哺乳瓶でミルクを飲んでもらう必要がありました。そのため、哺乳瓶拒否は避けたい。一方で、哺乳瓶を使うことで乳頭混乱を起こし、母乳拒否になってしまっても困る。どういった形が息子と私にとっていいのか、悩みました。

「あえて混合」哺乳瓶を使えるようにしたい。

 結果的に、息子は乳頭混乱を起こさず、産後5ヶ月を過ぎた今でも直母、哺乳瓶どちらも抵抗なく飲んでくれています。

 哺乳瓶は退院後から2ヶ月頃までは1週間に1,2回程度(乳頭混乱が怖くてなかなか使えなかった)使っていました。乳首が新生児からSサイズに上がりましたが、特に変化なく。ぐずりが酷くて直母ができない時もありましたが、それを除けば、特に混乱なく使用していました。産後2ヶ月の時に一度、丸一日哺乳瓶のみで過ごしたこともありましたが、翌日は何事もなかったかのように直母で飲んでくれました。

 哺乳瓶やおしゃぶりを1回使っただけで乳頭混乱を起こしたり、あるいは直母拒否や哺乳瓶拒否を起こすお子さんもいらっしゃるので何とも言えませんが、これに関してもある程度、運やその子の性格的なものがあるのかもしれません。

 幸にして哺乳瓶で問題なく授乳できましたので、試験前日、当日は夫に完全に息子を任せることができました。

もしも哺乳瓶拒否になったら?

 哺乳瓶で飲ませる練習をしても飲んでくれなかった場合、どうしても直母以外受け付けなくなってしまった場合、対処法としては、いくつかあると思います。

①試験会場に子供(+付き添い家族)を連れてくる

 神戸会場(ポートピアホテル)は授乳室がありましたので、休憩時間の間に授乳室で授乳し、それ以外は家族に付き添ってもらって赤ちゃんを見ていてもらう方法。ただし、A問題は時間に余裕がありましたが、B問題やC問題はギリギリでしたので、授乳時間がしっかり確保できたかは不明です。また、試験中に家族や赤ちゃんが過ごす場所がないため、一泊余分にホテルの部屋を確保するか、試験中はホテル内の託児所に預ける必要があるかもしれません。

②飲むだろう、と信じて哺乳瓶で飲ませる

 お腹が空いたら飲むはず、と考えて頑張る、という方法もあるようです。が、これについては本当に飲めるのか、と言う検証が事前にできないので、踏み切れないかもしれません。

③コップやスプーンでの飲水練習をする

 NPO法人『ラ・レーチェ・リーグ』のサイトには、哺乳瓶以外での授乳方法が書かれています。https://llljapan.org/faq.php?num=106

 小さなコップやスプーンでも、赤ちゃんは上手に飲めるとのこと。もし本当に哺乳瓶拒否になってしまった場合は、これを練習する必要があるのかな、と考えていました。メリットとしては、練習して飲めるようになったら安心して預けられること。デメリットとしては、哺乳瓶練習と同様に、練習に時間と労力が割かれること、1回の哺乳時間が(おそらく)長くなることがあると思います。

④離乳食(スパウトやストロー)で補う

 息子は4ヶ月だったので無理でしたが、5ヶ月を過ぎていればスパウトやストローでの飲水練習を始められたかもしれません。哺乳瓶以外でミルクや搾母乳を飲むことができれば、合間に授乳しなくてもすみます。

試験当日の過ごし方「搾乳」「乳腺炎のリスク」

 前泊していたこともあり、当日は搾乳していました。起床時にホテルの部屋で1回、A問題・B問題・C問題それぞれ終了後にトイレで1回ずつ、合計4回でした。1回の搾乳時間は15〜20分程度。B問題終了後〜C問題開始までの時間が短く、搾乳したら勉強時間があまり残りませんでした。

 試験中に胸が張ってしまった場合、申し出ればトイレ休憩と同じように対応してもらえるとのことです。また、これは後から教えていただいたのですが、事前申請していれば、搾乳用の部屋を準備してもらえる場合もあるとのことでした。予想される方は、伝えておくと何かしらの配慮をしてもらえるかもしれませんので是非。

 とにかくB問題とC問題の間は時間がありません。搾乳や授乳をする場合は時間配分に気をつける必要があります。また、1日4回搾乳しましたが、胸の張りは完全にはすっきりしませんでした。授乳回数が急激に減ってしまうので、乳腺炎のリスクも高かったと思います。

 ちなみに使用したのはHaakaaシリコーン搾乳機(150ml)でした。シリコン性で形がシンプルであり、当日は何回も洗って使用できました。使用するのに慣れが必要なのと、搾母乳を保存するのに手間がかかると言う難点はありますが、なにしろ軽くて携帯しやすいのがよかったです。

6)産後のマイナートラブル

睡眠不足(細切れ睡眠)

 一番辛かったです。幸い、産後2ヶ月から夜間6時間以上の連続睡眠を得られましたが、それがなければ受験できませんでした。睡眠不足の解消法(家族と交代する、昼間は一時預かりやファミリーサポートを利用して休む)が勉強の鍵だと思います。

腱鞘炎

 産後2ヶ月ごろから朝方に指の強張りを感じるようになりました。最初はリウマチかと思ったのですが、どうも腱鞘炎の症状に「指の曲げにくさ、動かしにくさ」があるらしく、それだったみたいです。鉛筆やペンを持てなくなったら病院へ行こうと考えていましたが、幸い、そこまでにはなりませんでした。(ですが今も続いています)

抜け毛

 これは産後3ヶ月くらいから。朝起きると、布団に大量の抜け毛がありました。シャワーを浴びれば抜け毛。手櫛をすれば抜け毛。起きても抜け毛、寝ても抜け毛。体調がどうこうと言うよりは、大量の抜け毛を前にして割とショックを受けました。(これも今も続いています)

授乳に伴う疲労感

 カロリーが消費されるので、消耗する感じがありました。体重が落ち込んだ時が一番疲れやすかったように思います。妊娠前体重を維持する程度には間食をしたり1回の食事量を増やすなどして対応していました。

7)子どもの面倒を誰が見るのか

実家?一時保育?シッター?

 筆記試験は日曜日、口頭・実技試験は金曜日でした。その間、夫が休みを取り、子供を見ていてくれました。夫も同業他種なので休みにくい環境だったとは思いますが、こちらの希望通りに休みをくださった職場の先生方には感謝しきりです。

 寝かしつけや生活リズムを把握してくれていましたし、できる限り夫に仕事を休んで見て欲しい、と言うのが私の希望でした。幸い、今回はそれが叶いましたが、できない場合の対処法も考えていました。

①実家に預ける

 夫の出勤前後に送り迎えをしてもらい、どちらかの実家に預ける方法です。一番典型的なのかな、と思います。実の親なので預けやすい方もおられると思います。一方で、里帰りが終わってからは実家に帰ることもあまりなかったので、預ける前に乳児育児に慣れてもらう必要があったと思います。

②一時預かり

 近くに生後3ヶ月から一時預かりをしている保育所があったので(試験前に3回利用しました)そこで預かってもらう。夫が出勤前後に送り迎えをしてもらうことになります。メリットとしては、プロなのでその点では安心できること。ネックになるのは施設によって利用時間が限られていること、平日しか利用できないこと、特に0歳児は受入可能施設が少ないこと(かなり広範囲で調べましたが、可能なのは2カ所だけでした)、定員が少なく事前予約がすぐにいっぱいになること、だと思います。

③ポートピアホテルの託児所

 ポートピアホテルには託児所があります。(ファンタジックアリス)生後3ヶ月から可能です。ただ、保育開始は10時からなので、9時からの試験開始に間に合いません。料金は保育所の一時預かりに比べて割高ですし、神戸まで赤ちゃんを連れて往復する労力もかかりますが、会場近くに住んでいる場合は、十分ありだと思います。(なお、東京会場には託児所はありません)

④ベビーシッター、ファミリーサポート

 そのまんまですね。預かり施設が利用できない場合、預かってくれる人にお願いします。ただ、どちらも探す手間がかかるのと、どんな方が来てくれるかわからない、事前に登録や面接が必要、といった点がネックになると思います。第2子や第3子出産などですでに利用されている場合は、使いやすいかもしれません。お値段もそれなりですが、平日・土日祝日関係なくお願いできるのはメリットだと思います。

もし子どもが病気になった場合は…?

 仮に一時保育やベビーシッターをお願いしていても、子どもが風邪をひいてしまった場合はどうするか。

 これに関しては仕事が休めるかわからなかった段階で、「もし色々やって無理だった場合は、仕事を休んでください」と夫にお願いをしていました。病児保育は急には取れませんし、利用できても時間が限られています。実家で見てもらうにも、どちらか状況をわかっている保護者は必要です。病気になった場合、仮に病児保育や実家に預けるにしても、その日一日のマネジメントは夫に丸ごとお願いすることにしました。

8)最後に

 ここまで、産後専門医試験を受験した際に悩んだことや考えたことを書いてきました。これが、これから出産育児を控えられている方の何かしらのお役に立てれば幸いです。専門医試験の勉強はかなり辛かったのですが、無事に合格できた今は、挑戦してよかったと本当に思っています。専門医なんて、と言われますが、努力する価値はあると思います。これを読んでくださって、少しでもやってみよう、と前向きに思っていただければ幸いです。

2019年11月6日 産後5ヶ月の麻酔科医・とかげ

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