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前川喜平「面従腹背」
前川喜平著「面従腹背(めんじゅうふくはい)」読了。
著者の前川喜平さんは、元文科省官僚。
安倍政権下で起きた加計学園問題で「総理の意向があった」ことを告発した方です。
安倍政権の8年弱、安倍晋三による行政の私物化が顕著でした。森友学園、加計学園、桜を見る会、アベノマスク…と疑惑のデパートだった安倍晋三がなぜまだ国会議員なのか、謎です。
それはさておき、「面従腹背」とは、表面では服従するようにみせかけて、内心では背いていること。
悪いことのように思えるけど、組織で働くには、大事な心構えかもしれない。
公務員は代議制民主主義の下、国民・住民の代表者の下でその政治的意思に従い、組織として一体となって仕事をする。一体となった組織の中で、個人の意思は捨象される。その意味で公務員は匿名である。…私個人の名前の入った文書であっても、それは私個人の意思を表したものではない。
しかしそれは決して、組織の考え方と異なる見解を持ってはならないということではない。個人としてどのような見解を持つかは自由だ。それはあまりにも当然のことなのだが、実際には組織の中で仕事をするうちに、その組織の論理に完全に同化していく人間がでてきてしまう。…そのほうが楽なのだ。
本書では加計学園のことは第4章で触れられる程度で、全体としては最近の日本社会の課題である、歴史修正主義者たちによる「戦後民主主義的価値観の破壊」がテーマかな?と思いました。
教育勅語の復権、道徳の教科化、日の丸・君が代の強制、教員免許更新制度、教科書採択、建国記念の日イベント…
自民党議員も多く所属する日本会議は、国民主権を否定し、明治時代のような天皇中心の国家観、家父長制、男尊女卑、滅私奉公の考えを復活させたいというような人たちが多い。
戦後の「個人の自由」「権利」の意識が社会をダメにしたと考え、「自虐史観」といって南京大虐殺や慰安婦問題も過小評価しようとしている。
教科化された道徳では、憲法が立脚する「基本的人権の尊重」「平和主義」「国民主権」ではなく、「家族、学校、郷土、国という集団への帰属意識」「節度、礼儀、規則、公共の精神など集団を束ねるための規範」「父母・祖父母への敬愛、国を愛する心」が強調されている。
権力者っていうのは、民主主義も共産主義も関係なく、全体主義国家を作ろうとしますよね。
今ある権利や自由を失わないために、権力の監視は大切です。