読み聞かせ難易度の高い本『マトリョーシカちゃん』
かこさとし(加古里子)氏といえば、2018年に92歳で永眠されるまでに600冊もの絵本等を刊行された、絵本業界の巨匠。
理系出身で、叙情的な話だけではなく、科学的な視点から描かれた素晴らしい絵本も多数・・・というような事を亡くなられてからの特番などで知りましたが、子供時代に一般的な絵本を読まずにいた私は、ほぼスルーしたまま大人になってしまった。
かろうじて、小児科の待合室などで『だるまちゃんとてんぐちゃん』あたりを読んだ記憶はありますが、たぶんあの「だるまからわりとリアルな手足が生えている」という絵柄が子供心に受け入れられず、好ましいとは思わなかった。
名作だという『からすのパン屋さん』は、大人になってから子育て支援センターで初めて読みました。
この『マトリョーシカちゃん』は買ってから、加古氏の絵本だと気づいた。
私はわりと昔からマトリョーシカが好きなのですが、これは10年以上昔に、絵本好きの同期が会社の休み時間に見せてくれたもの。
少し前に「そういえば・・・」思い出して買ってみました。
原作(ロシアの民話)がベースにあって、それを元に加古氏が絵と文をかかれたようです。
かわいらしい(リアルな手足は生えていない)マトリョーシカが、お客様を招いておもてなしをしようとする話で、文章もそれほど難しくないし、ページ数も多くない。
でも「これよんで」と持ってこられると一瞬「ウッ」となる。
なぜかというと、登場人物(?)達の名前がロシア風で滑舌的につらい。
山場は後半の
「さあ、これで おにんぎょうが みんな そろいました
そこで、
イワンちゃんと ドナーシャちゃん
イリューシャちゃんと クラーシャちゃん
アンドリューシャと ダーシャちゃん
ペトリューシャと マトリョーシカちゃんが くみになって」
のページで、噛まないようにリズムよく音読するのは至難。
でも、上手く読めると達成感もけっこうある。
というか、わざとこのカタカナばかりのページは作られているのではないかと思う。
読み聞かせ難易度は高いけれども、可愛いし、可愛いけど甘ったるくはないし、とても好きな本です。
ついでにいうとマトリョーシカの顔や衣装がシンプルなのも良い。
最近よくマトリョーシカは、クリスマスマーケットなどで売られていますけれども、シンプルなのは意外となくって、睫毛が長くて衣装も凝った、派手目なモノが多い。
シンプルなマトリョーシカが欲しいと思ったら、高価な作家モノか、ロシア以外のベラルーシ製なんかを探すことになります。
(というか、この絵本のマトリョーシカに関しては、絵本の絵を模した公式のマトリョーシカが売られているらしく気になる)
ところで、私がひんぱんに絵本の読み聞かせをするようになったのはわりと最近で、子供が0才とか1才の頃はほとんどやっていませんでした(そんな気持ちの余裕は無かった)。
今も「毎晩寝る前に」とか決めているわけではなく、子供側から「読んで」と言ってきたときに、読んでいる。
寝る前のルーティンなどにしている家庭に憧れはありますが、そういうルーティンを作る前に、時間になって寝室に一緒に行ったら自力で寝る子供になっていたので、今さら良い流れを妨げるのもねぇと言う感じ。
なので全く読み聞かせをしない日もけっこうあります。
そして読み聞かせは、「感情を込めすぎず、淡々と読むのが理想」らしいですね。抑揚をつけすぎると、子供自身の想像力を妨げてしまうらしい。
しかしもともと、声マネが得意で色々な声が出るタチで、なるべく淡々と読まねばと思いつつ、ついつい色々な声で読んでしまいます。
何度も何度も同じ本をリクエストされる場合は、イントネーションを方言風にしてみたり、大げさな舞台俳優のように読んでみたりもする(子供はゲラゲラ笑いながら「やめてー!ふつうによんでー!」と叫んでいる)。
色々ダメです。
色々ダメですが、読み聞かせの頻度はともかく、読み方については、まあ良いかと思っている。良い絵本はしっかり芯というかキモというかがあって、変な読み方をしても、そこのところはちゃんと聞いている側に届いている気がする。
とりあえずこの『マトリョーシカちゃん』については、変な声で読んだりしている余裕はありませんけれども。
「シャ」のあとにすぐ「ちゃん」が来るのがたぶん、難易度高い理由なんだろうな。
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『マトリョーシカちゃん』
加古里子 文・絵
ヴェ・ヴィクトロフ/イ・ベロポーリスカヤ 原作
発売日 : 1992/10/15
単行本 : 28ページ
ISBN-13 : 978-4834011883
出版社 : 福音館書店