読んで良かった本11月部門

12冊読んだうちの5冊を紹介。


いくつもの週末(江國香織)
エッセイ。江國香織の実際の夫婦生活が題材。
「きらきらひかる」を読んだ時も同じ感覚を抱いたが、江國香織の文章は本当に魅力的。好きな作家は色々いるが、文章だけで評価するなら一番好きな作家かもしれない。
読んでいる間は「江國香織の世界感に入ってるな〜」と思わされるのに、それでいてまったく押し付けがましくなく自然に平易に没入していく感覚がある。

来年もこのひとと一緒に桜をみる可能性がある。そのことがとても希望にみちたことに思えて嬉しい。そうして、それは勿論一緒に桜をみない可能性もあるからこその嬉しさだ。
物語が幸福なのは、いくつもの可能性のなかから一つが選ばれていくからで、それは私を素晴らしくぞくぞくさせる。

生のみ生のままで(綿矢りさ)
小説。今年読んだ小説のベスト5には確実に入れる。
題材を言ってしまうと軽いネタバレになるが、物語の2割くらいのうちでわかる内容なのと、言わないとさすがに感想を書きづらいので、以下軽微なネタバレ。
(気になる人は下の数行は飛ばしてください。)




題材は女性同士の恋愛。これまで読んだことがなかったし、題材を知らないで読んだことが逆に良かった気がする。
綿矢りさらしい意志のこもった文体と主人公たちの考えがマッチしていてとても心に響いた。

どんな退屈な毎日の連続でも、同じ場所には留まっていられない。絶えず時間を移動し肉体を衰えさせて確実に死に近づいていく。骨や灰や塵になる、それまでの短いひととき、なんで自分を、もしくは誰かを、むげに攻撃する必要があるだろうか。


熱源(川越宗一)
小説。
樺太を舞台にアイヌや少数民族の生き様を描いた歴史小説。
歴史小説というとなんとなく敬遠していたが、1900年代なのでそこまで古い時代感がないからかイメージしやすく読みやすい。ゴールデンカムイ読んでたのもあるかも。
民族のアイデンティティが主題だと思うが、その中で「教育の意義」を説くシーンが好き。

「理不尽の中で自分を守り、保つ力を与えるのが教育だ」


学生時代にやらなくてもいい20のこと(朝井リョウ)

エッセイ。
朝井リョウのエッセイを読むのは「風とともにゆとりぬ」以来の2冊目だが、これも面白かった。
良い話とかはなくただただ力を抜いて笑えるエッセイ。
「母の車」「北海道旅行」「下着メーカーのES」が好き。




インシテミル(米澤穂信)
小説。
米澤穂信の作品を読んでみたかったので選んだ。
隔離された施設に集められた12人が殺し合ういかにもなデスゲーム兼クローズドサークル。
緊張感のある感じは読んでて楽しい。