トーキング・ヘッズ-STOP MAKING SENSE
Amazonプライムで観た。
トーキング・ヘッズはもちろん知っている。ニューウェーブ系とかなんとか。デイヴィッド・バーンの神経症的なボーカルとパフォーマンスとかを見たことがある。でも考えてみたらきちんと聴いたことがない。どちらかといえば苦手なタイプだったか。
Amazonプライムでは音楽系のビデオ、ライブだったり、ドキュメンタリーだったりがけっこう配信されていて時々観る。ウェストコースト系のフォークロックのドキュメンタリーだったり、ザ・バンドのものだったり、モータウン・ミュージックものだったりとか。
トーキング・ヘッズ「Stop making sense」のタイトルが目に入ってきてずっと気になっていた。「意味づけすな」というのがけっこうくすぐる。まあ通して観る、聴くのではなく、ちょっと流していてしんどかったら止めてしまおうぐらいの気持ちだ。深夜なので退屈だと止めるかそのまま寝てしまうか。よくある話だ。
でもこのライブのドキュメンタリー、けっこう食い入るように観てしまった。まず最初にラジカセとともに登場したデイヴィッド・バーンが、ラジカセから流れるリズムボックスとともにアコギ一本で代表曲「サイコキラー」を歌いだす。実際はバックでドラムマシーンが使われているようだ。続いて「ヘブン」をバーンが歌いだすと、ベースのティナ・ウェイマスが登場する。次の曲、次の曲でそれぞれドラムのクリス・フランツ、ギターのジェリー・ハリソンが登場する。面白い演出。
それからキーボードやギター、パーカッション、バックコーラスが加わっていく。このライブは1984年にハリウッドのパンテージズ・シアターで行われた4回のライブをまとめたもだ。監督はまだメジャーデビューする以前のジョナサン・デミ。『羊たちの沈黙』の監督だ。そして1時間27分のライブ演奏が続く。
1984年のライブを40年を経て観ている。このへんの感覚がなんとも不思議だ。そしてトーキング・ヘッズの音楽はけっして古びていない。ところどころ時代性を感じさせる部分があるにはあるが、さほど気にならない。この40年、さほどミュージック・シーンは変化していないのかもしれない。
いわゆるニューウェーブ系はなんとなく苦手にしてきた。そして80年代というと、いわゆるベストヒットUSAではないが、ヒット曲を適当に聴いていることが多く、聴きこむようなことはなかったのかもしれない。なので当時としては尖がっていた、ある意味先進性のあったトーキング・ヘッズはすり抜けてしまったのか。
でも今、聴いてみると、ギターリフがいいし、パンクやニューウェーブというよりもファンキーな音楽が多い。なんとなくだがシンセサイザーを多用したポップ系ファンキーバンドみたいな感じだ。まあ今更なに言っているんだよと、まあそういうことではあるけれど。
改めてトーキング・ヘッズについておさらい。
1975年に結成され1991年に解散。メンバーはデイヴィッド・バーン、クリス・フランツ、ティナ・ウェイマス、ジェリー・ハリソン。何よりリード・ボーカルのデイヴィッド・バーンのキャラクター、才能が全面に出たバンドだった。そして途中でプロデューサー、ブライアン・イーノとのコラボ作品が生まれていく。ミュージック・シーンではバーンとイーノの環境音楽みたいなことで括られることが多い。自分もそんな情報をいろいろと読んだり、聞いたりした記憶がある。
そしてバンドの後半及びソロになってからデイヴィッド・バーンはワールド・ミュージックに傾倒する。トーキング・ヘッズの曲でも大胆にアフリカ系のリズムが取り入れらている。
バーン以外ではベースのティナ・ウェイマスが異彩を放っている。ジャンプスーツから一転フェミニンなミニスカートでグルーブ溢れるベースを弾く。この人のミニスカート姿はなんていうんだろう、男に媚びる感じがない。「あたしが何着ようと勝手でしょ。別に可愛くするの嫌いじゃないし」みたいな。そしてベースラインがけっこう攻めてるというか、多分トーキング・ヘッズのグルーブ感、ファンキーな雰囲気はこの人のベースによるところが大きいみたいだ。70年代から80年代、バンドでベースを女性がやるのは珍しかったし、けっこうこの人のスタイルがロールモデルになったかもしれない。そんなことを思ったりもした。
ティナ・ウェイマスは結成当時ドラムのクリス・フランツの恋人で、もともとベースがいなかったので彼女が練習してベースを担当するようになったという。フランツは彼女にスージー・クアトロのレコードを聴いて練習するようにとアドバイスしたとか。のちにウェイマスとフランツは結婚し、トーキング・ヘッズの活動と並走してトム・トム・クラブというユニットでも活動する。
ティナ・ウェイマスのベースは多分、その後の女性ベーシストにけっこう影響を与えているとは書いたが、そのさらに先行したアイコンがスージー・クアトロだったとは。確かに彼女の登場はけっこうインパクトがあった。ただしクアトロとウェイマスは二人とも1950年生まれの同い年で74歳になる。なぜか遠い目になってしまうけど。
ということで今更ながらにトーキング・ヘッズがなんとなくマイ・ブームになりつつあるのだが、食わず嫌いだったせいか実は1枚もCDもない。なのでとりあえずベスト盤を入手することにする。
中古盤である。2枚組で33曲を収録。ヒット曲、有名な曲はほとんど網羅されている。多分、これで十分かなとも思ったりする。しばしトーキング・ヘッズがマイブーム的に聴くことになりそうだ。
しかし1956年生まれのジイさんが、1975年結成1991年に解散したもはや歴史に記録されるようなバンドを新たに聴く、ハマる。あらゆる音楽は同時代性を帯びている。そんなようなことを言ったのはブライアン・イーノだっただろうか。