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冬北海道ツーリング2024 3日目 士別~風連~士別

今まで行った中で一番良かったのはどこですか。

旅が好きだ、というと決まって聞かれる質問だと思う。会社の飲み会で上司から、旅先で出会ったおばちゃん・おじちゃんから。本当によく聞かれる。多分、このブログを読んでいる人のほとんどが、一度は聞かれたことがあると思う。

僕は決まって、冬の北海道です。
それもパキンと空が音を立てそうなくらいよく晴れた日。
そう答えることにしている。

正直、答えるのは難しい。
本気で答えるのは無理だ。
それぞれの土地に、それぞれの季節に、それぞれの良さがある。一番なんて決められっこない。だけど、聞いている側はそんなことはどうでもよかったりする。会話が続けばいいのだ。だから、僕も一番インパクトがあって、納得してもらいやすい冬の北海道と答える。もちろん、この季節の北海道は大好きだ。そこに嘘はない。

この日は、そういう一日だった。
ほうら、これが僕の思う一番だよ、と。一番説得力があるでしょう、と。

晴れた道北。
一番かどうかは決められっこないけど、一番に限りなく近い、素晴らしい景色だった。


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士別の市街地から、西側の中士別町に向かう。
この日は、朝から青空が広がっていた。
だが、なにか様子がおかしい。
自分の上に広がる青色が、鮮やかなグラデーションを描きながら地面に近づくにつれて白色に変わっている。

朝靄か、と気が付いた時は既に朝靄の中だった。

20mくらい先から靄に溶けていく世界。
靄の向こうにぼんやりと明かりが見えエンジン音がする。
しばらくすると車が現れ、すれ違う。
後ろを見ればすぐに車は見えなくなる。 恐ろしいと思った。

ただ、恐ろしい景色ほど、美しい景色もない。
曖昧な青と白が混ざり合う世界。
自分以外の全てが離れるにつれて白に溶ける。
本当に美しかった。恐ろしかった。

靄を抜けたのは道道537号線に合流するまで北上してからだった。

道道537号線は士別と風連の間の、名寄盆地の西のへりを走る道だ。 へりというより、へりと丘のアップダウンをぶった切る道といった方が正しい。 あたりは畑や雪原よりも林が広がる。

その内の一つの丘を越えた時、名寄方面の山々が見えた。
白く冠雪していた。綺麗だ。
換算50mmの標準単焦点しか持ってきていないので、写真からでは全く分からないだろうけど。

その他に、木々の間から風連方面の盆地の底が雲海のようになっているのも見えた。写真には写らなかった。写真に全て写して持って帰ろうなんて、なんて傲慢な考えなのだろうと思う。だけども僕は傲慢だから、こうして文字にしている。

風連近辺は相変わらず抜けるような蒼穹だった。 サングラスを外すと青と白の光線が目に突き刺さる。

しばらく風連界隈で散策する。
何処を走っても路面は素晴らしい。

あとは、どこが景色がいいか、だ。

遊びすぎると雪に埋もれた道に迷い込む。
ここは押し歩いた。

この日は青空をめがけて走ろうと決めていた。
晴れた道北はそんなに多くないだろう。
ならば、この青空を存分に楽しんでやろう、と。

風連より北、つまり名寄方面は雲がかかっていた。
迷いなく南へ舵を切った。

このくらいの雪の深さなら走れる

再び中士別に戻り、朝走った道を少し覗いた。

朝靄がきれいさっぱりなくなった道は、どうも数時間前に通った道には見えなかった。見覚えのあるカーブと標識とガードレールだけが同じ道であることを示してたが、それ以外は何もかも違った。ありふれた農道だった。恐ろしいほどの美しさは、もうなかった。僕はもう、あの朝通った道は通れないのだと悟った。

一期一会などと手垢でべとべとになった表現を意識せずとも、ずっと二度と出会えない場所にいるのだと思った。旅では特に。そんなことをぼんやりと思った。

先に、青空めがけて走る、と書いた。
でも、これだけ青空の写真が続くと、全面が晴れていたように見えるかもしれない。とんでもない。全くそんなことはなかった。その証拠が下の写真。

雪が低く垂れこめて、まるで襲い掛かっているかのように見えるこの写真。 実はこの下の青空の写真と全く同じ時刻・同じ場所で撮った写真だ。 異なるのは方角だけ。
上の写真が北西向きで、下が南東の景色だ。

南東の景色

加えて言うなら、雲が低く垂れこめて雪が降っている写真は、さっきまで青空の下、僕が走っていた場所だ。それほどまでに天気の移り変わりが早い。
恐ろしいなあ、と改めて思った。

再び青空に向け、雪雲から逃れるように進んだ。

天塩川
遠くに見える士別市街
こういう丘がところどころにある。

時刻は3時半を回ったあたりだった。
2月の北海道。 もう仕舞いの時間だ。
辺りはすぐに夕暮れの気配を帯びる。
名寄の宿へハンドルを切った。

今日も素晴らしいサイクリングだった。

サイクリングの〆はセコマにて。

日没が早く、時間が惜しい冬北サイクリングはたいてい昼ご飯を食べない。旅先のご飯をとても楽しみしている自分にとっては、とてもとても珍しい。だが、時間は有限だ。たいていナッツとドライフルーツをホットレモンで流し込んで、エネルギーを補給する。

だからだろうか。ほんのり温いセコマの128円のクリーミーカルボナーラは、いつもよりずっと美味しかった。
つづく


実際走ったルート




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