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『初冬かきしま/とびしま海道旅』 2日目 とびしま海道

今日の目的は「とびしま海道」を走ること。
「とびしま海道」は、瀬戸内海に浮かぶ下蒲刈島~上蒲刈島~豊島~大崎下島~岡村島にまたがるルートだ。

宿のあった広から、まずは下蒲刈島を目指した。
広という地名も面白いものだと思う。 ちゃんと調べたわけではないけれど、形容詞語幹かつ漢字一字の地名というのは、とても珍しいように思う。

広を出てからは、県道279号線を走った。
並行する国道のほうがとびしま海道までの距離は短かい。けれど行こうとは1ミリも考えなかった。県道279号線が海沿いの道だったからだ。こんな綺麗な海岸線に道があれば、行きたくなるのが人情ってやつだろう。

安芸灘大橋を渡る。
この日は「とびしまウルトラマラニック」の開催日だった。 「とびしまウルトラマラニック」は、とびしまの島々をつないで100kmランするイベントらしい。この日の旅路の半分以上は、このイベントの参加者がいた。公道を塞ぐイベントじゃなくて助かったと思いつつ、おそらくいつも以上に賑やかなとびしま海道を走った。

下蒲刈島より安芸灘大橋を見る

とびしま海道の正式ルートでは、下蒲刈島は島全体の1/4しか走らない。下蒲刈島の形は丸に近く、島を時計に見立てるなら12時から3時までの間が正式ルート。それはもったいない。時間もたっぷりある。12時から3時まで”反時計回り”で島の3/4をぐるりと回った。

12月の朝の光は、まだ角度が低く水平線の近くから差し込む。島の山々を上から順に照らしていった。

暖冬だという2023年12月。日が当たる場所は、まだ秋の暖かさだった。でも、山の影になった日陰の区間は、初冬らしいひんやりとした空気だった。

蒲刈大橋を渡り、上蒲刈島へ渡る。
上蒲刈島は島の北側を走った。
これといった理由はあまりないけれど、時計回りの方が海が近いかな、と。

蒲刈大橋から上蒲刈島を望む
瀬戸内海は今日も穏やか

島の北側は日陰になる。
日陰になるけど、そこに射す陽がとても美しい。

海岸線から一瞬逸れて、豊島大橋を下から望む。
その先はミカン畑。
瀬戸内海の景色だ。

瀬戸内海の海は、エメラルドブルー。
本当に綺麗な海だと、来るたびに思う。

昨日走った江田島同様、上蒲刈島も岩が露頭していた。 遠目に山の中腹、岩の間を突っ切る道が見えた。 今度来るときは、あそこに行こう。

こういうとき、行きたい場所はまだまだ減ってくれそうにないな、と思う。こうして旅中で見つけた行きたい場所は、いっぱいある。行ったことのない行きたい場所も、もちろんいっぱいある。僕の人生の数少ない幸せだ。

豊島大橋で豊島へ渡る
橋の上から見る”うねり”

ほとんど海岸線をトレースしてきたけれど、ここからは林道へ。そして山へ。 十文字山展望台を目指した。

十文字山は標高309m。
斜度はそれなりにあった。 瀬戸内海に浮かぶ山を上るというのは、斜度のきつい坂を登ると同義なのだと、2日目にして何となくわかるようになった。

落ち葉(に隠れている石)に注意!

―――――

十文字山展望台に着いたのは、11時を過ぎたころだった。

十文字山展望台の眺望は悪かった。
360°の展望があるにもかかわらず、視界の下の方は木々に喰われていた。

それでも、来てよかったと思った。
木々をがさがさと言わせながら鳥が動き回る。そこらから鳥の囀りが聞こえる。遮るものがない場所にしては、あまりにも緩やかな風が吹く。その風に乗って、遠くからヒットソングのBGMが聞こえる。道の駅でもあるのだろうか。展望台には自分以外誰一人いない。見える範囲に人もいない。とても良い孤独だ、と思った。

急斜面の曲がりくねった道で、豊浜大橋のある島の西側へ下った。

ちょうどお昼時。
街に下れたのでここでお昼ごはんとした。

ひじきピザ。とても美味しかった。

とびしま海道は、飲食店が少ない。

これはちょっと注意したほうがいいかもしれないと思う。民家の数の割に、補給食を含め食べものを買える場所は少ない。ちなみに、とびしま海道にコンビニはない。ある程度、時間と街の位置を考えながら進んだ方がいい、というのが今回の気づきだった。

昼食後は豊島を少し散策してから、豊浜大橋を渡り大崎下島へ向かった。

「とびしま海道」の島はどれも山がちだ。
豊島も少し登れば上から町が見渡せた。

豊浜大橋を渡る
橋の上から豊島。よい景色。

大崎下島は、島の南側を走った。

沖友という集落から、山側へハンドルを切る。
一峰寺展望台へ向かうためである。

トンネルを抜けて、軽トラ専用かと思うような細い道に入った。農道というか林道というか、という感じだった。やはり斜度はきつくなった。時間の余裕はまだある。ゆっくり登ろうと心に決めてペダルを踏んだ。

看板があるので迷わず行ける
晩秋のような景色が続く

―――

一峰寺展望台に着いた。
そこからは、中の瀬戸大橋と岡村大橋が仲良く並んでいるのが見えた。

山はすっかり落葉しているのに、紅葉しているように見えた。冬特有の低い角度から射す太陽光のせいだろうか。それにしても、山肌の陰影の感じがとてもいい。「この時間に、ここに来れて良かった」と思った。

展望台近くには神社があった。 この先の旅路(といってもあと少しだが)の安全を祈願しておいた。

展望台に戻って再びゆっくり
遠くに見えるのはしまなみ海道だろうか

少しのんびりしていると、もう日が傾いてきた。 日陰では冷たい風が吹き抜けている。 坂を下って岡村島へ向かおう。

下りの道中にはミカン畑が広がる


久比の町

岡村島は愛媛県今治市になる。 ここまで(下蒲刈島・上蒲刈島・豊島・大崎下島)は広島県呉市。 「なぜここで県境?」と思ったが、それについては今も謎のまま。

中の瀬戸大橋

岡村島を時計回りに一周した。 理由は、北側が先に日陰になってしまうから。 日陰になってしまっては、見えるものもよく見えない。見えなくてはもったいない。だけど、島に着いたころには、もう日陰になってしまった後だった。

12月の日は短いのである。自転車で外を走れば、当たり前のことをよくよく感じる。いや、日々の生活が季節に疎すぎるのだろう。

島の北側の海はとても穏やか

島の南側は、北に比べ少し波が立っていた。
遠くに見えるのは、方角的に愛媛の方だろう。

岡村大橋を渡って、また大崎下島に

この日の宿は、大崎下島の御手洗地区にある。
御手洗地区についたとき、まだ日没までに時間があった。

「今日は夕暮れが綺麗そうだ」

ふとそう思ったら、日没が見たくなった。 御手洗地区から日没は見えない。 地図を確認すると、さきほど通った沖友という集落まで行けば見えそうだった。そこまでは未走区間でもある。 決まりだ。行こう。

あの山を回れば、夕日が見えるはず…

沖友の集落の前、少し南に張り出したところから夕日が見えた。

堤防の上に立って、沈む夕日を見た。
時々、ファインダー越しに見た。
ゆっくり陽が沈んでいく。
良い一日だったなあ、と思う。
旅先のこの瞬間がたまらなく好きだ。

日没までしっかり見届けた

御手洗の集落まで戻ってきた。 さて、この日の宿は、廃病院を改修したゲストハウス。
長くなったのでその話は次の記事で。
つづく。


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