今でも思い出すあの光景。
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初めて借りた1Kのアパート。
引っ越しを手伝いに来た親をベランダから見送るあの瞬間。お母さんとお父さんが笑顔で手を振り、車に乗り込む。車が見えなくなるまで手を振り続けた私。
車が曲がって見えなくなって数分動けなかった。親の笑顔がやけにまぶたの裏にこびりついて離れなかった。悲しくもないはずなのに涙が頬をつたった。
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ひとり暮らしをすると、親のありがたみが分かるようになるとよく言うけど、そんなの比じゃなかった。
親ってどうしてここまで子どもの門出をニコニコと送り出せるのだろう。どうしてここまで優しい言葉をかけてくれるのだろう。今までは受け流すように当たり前のように聞いていた言葉が、時々帰る実家では母や父の言葉が身に染みて、心に染みて、私の胸をいっぱいにする。不思議な感覚だった。
1人暮らしへの楽しみ、新社会人への憧れ、実家を出ることの怖さ、生活できるかの不安。いろんな気持ちがめまぐるしい新生活のスタートだった。
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ひとり暮らしをしてからの毎日は、楽しいとか、つらいとか、そんな感情を振り返る暇もなかった。毎日仕事仕事、時々実家。めまぐるしく過ぎていく毎日にあらがえなかった。お家に帰って、布団に倒れ込む。そんな毎日。
お家に帰って部屋が真っ暗なことなんて、
何年ぶりだっただろう。
「ただいま」って言っても、しーんとしてるなんて、
何年ぶりだっただろう。
親と離れたこと、家族と離れたこと、
私にとって寂しさとなってひしひしと感じていた。
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ひとりでいると、誰かに話したくなった。
ひとりでいると、誰かの声を聴きたくなった。初めておじいちゃんに電話した。仕事のこと、ひとり暮らしのこと、最近の体調のこと。
ああ、こうやって繋がってるんだ。って実感した。
声ってこんなに私を勇気づけるんだ。
静かな部屋に響き渡る自分の声。でも嫌いじゃなかった。自分が存在している。生きていることを実感できたから。
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あの時の日々は、実はたった4ヶ月で終わりを告げてしまった。でもあの時に感じた気持ち、今でも忘れることはない。あの時に感じた親への感謝、当たり前のことでもありがとうと言えるようになった。
あの時は色々あって会社を辞めてしまって、実家に戻ることにした私。
あれから5年経って結婚して今は夫婦で2人暮らし。今、幸せだからこそ、あの時の家に感謝したい。
「あの時の4ヶ月ありがとう」
あの時の日々があるから今の私がある。仕事ではつらかったこともあったけど、家族の優しさ、おじいちゃんの言葉の力強さ、LINEで支えてくれる彼氏、飲み会で話を聞いてくれて励ましてくれる友達、いろんな人に支えられて生きていることに気づけた。
これからは私は旦那と2人で穏やかで小さな幸せをたくさん見つけていくから。君もまた違う人を幸せにしてあげてね。
ばいばい、国立のアパートよ。
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