勧酒、あるいは花に星
ことなこのデュエダン、お好きですか。
私は大好きです。
触れた手が切れてしまう剃刀のように鋭い動き、一人の人間が二人に分かれて踊っているのかと見紛うほどにシンクロする振り付け、「トップコンビ」という唯一無二の関係性が織りなす世界観。
どれを取っても素晴らしい精度・練度・円熟度のそれは、私に「トップコンビを見る喜び」という物を教えてくれました。
これはトップコンビファンではないヅカオタあるあるだと決めつけているのですが、意外と真ん中のトップコンビを見ないという方は多いと思います(諸説あり)
まず基本的に必ず二人きりの場面は用意されますし、BDでも必ずこの真ん中の二人は収録され、舞台写真も豊富です。そうなると、「ではメディアに残らない下級生を見よう」という気持ちが働くのも無理のないことです。
ですが、このことなこの二人には、「今この瞬間に輝く二人をみたい」という気持ちが呼び起こされるのです。
BDに必ず収録されようが、舞台写真が豊富に残ろうが、それが何だと言うのか。いま、この瞬間、同じ空気を共有しながら舞い踊る二人は、ここにしかいないと言うのに。
指先の角度まで揃っている、足運びが測ったかのように均一、それどころではない。
あなたは翻されたドレスの、ジャケットの、その裾が全く同じ空気抵抗を受けながら、全く同じように空間になびく様を、見たことがありますか。
それはあたかもこの二人だけが息をすることを許された水の中を、ただ二人きりで泳いでいるかのような、そんな情景でした。
あるいはトップコンビというものは、すべからくそういった水の中にいる存在なのかもしれません。
そして、ことなこという唯一無二の二人が、箒星のようにどこまでもどこまでも夜空を拓き、駆けて行く姿に、私は心を奪われたのです。
二人の大劇場お披露目公演の中にこんなセリフがあります。
このセリフは、ダンスが得意な新トップコンビのために、アテガキとして作られたセリフなのだと思います。
正直当時はこのセリフがやや強引気味に捩じ込まれるので、若干のおかしみもありました。
ですが、今このセリフに立ち返ってみると、このトップコンビの二人は、ずっとそれを実践していたのかもしれません。
語り尽くせぬほどの思いを、指先に、足の運びに、全身に漲らせながら、ずっとそのように踊っていたのでしょう。
ストイックなまでに突き詰められたその動きは、彼女らの思いを発露するために、必要な物であったのだと思います。
それほどまでに研ぎ澄まされた動きから、伝わる感動。
私はきっと、ことなこの技術だけではなく、何よりその「技術」を極限まで突き詰めさせる彼女らの情熱に、心打たれていたのでしょう。
本日2024年12月1日をもって退団される、星組トップ娘役、舞空瞳さん。
そして、次回大劇場公演での退団を発表された、星組トップスター、礼真琴さん。
二人きりの星で、同じ重力を共有しながら踊っているかのようなお二人のデュエットダンスが、本当に本当に大好きでした。
どうかお二人のこれからに、星のような幸福が降り注ぎますように。
ことなこに出会えて幸せでした!!!