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チョッパ回路のコイル電流が三角波になる理由を解説

スイッチング電源を扱うと、降圧チョッパ回路などで、コイルの電流が三角波になるのを見かけると思います。ここの理解で悩むことがあると思います。

そこで、本記事では降圧チョッパ回路を例に、コイルの電流が三角波になる理由を解説します。


RL直列回路の過渡現象

RL直列回路の過渡現象はご存じでしょうか?

え?チョッパ回路の説明は?

と思うかもしれませんが、根本的なところから理解しようと思うと、ここがスタート地点になります。

RL 直列回路は、抵抗 R 、コイル L 、電源 Vin が直列になった回路で、そこにスイッチ SW が挿入された回路です。スイッチ SW がON したとき、この回路に流れる電流の過渡的な変化を導出します。パラメータは、具体的な電流波形の例を示すために、適当な値を入れています。

また、抵抗 R はコイルの巻き線抵抗を意図しています。コイルは、磁性体に電線をグルグル巻いたものです。電線とはいえ、少なからず抵抗値があります。

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まず、電圧方程式を立てます。

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この微分方程式を解くと次式が得られます。今回、計算過程は省略しますが、式変形して、変数分離し、両辺を積分していく計算過程となります。

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では、回路シミュレータのPSIM(デモ版)を用いて、コイル電流波形のシミュレーションをしてみます。シミュレーション回路は次の図とします。

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コイル電流波形を出力すると次の波形になります。シミュレーション開始を 0sec とし、2msec 経過したところでスイッチ SW を ON します。すると、コイル電流は 6msec 程度で 10A に収束します。

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先ほど導出した数式に「t = ∞」として解を求めると、i = Vin / R となり、100V / 10Ω = 10A となります。

これが、RL直列回路の過渡現象です。


RL直列回路+ダイオード

次に、先ほどのRL直列回路にダイオードを追加します。既に気づいているかもしれませんが、下図の回路は降圧チョッパ回路に近い形になっています。

まず初めに、以下の条件でスイッチを ON/OFF します。

1周期 = ON時間+OFF時間 = 20msec(50Hz)
ON時間:10msec(50%)
OFF時間:10msec(50%)

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上記の条件における、コイル電流波形は次のようになります。

上の波形がスイッチ SW に与える ON/OFF 信号、下の波形がコイルに流れている電流です。

スイッチの ON 時間と OFF 時間はそれぞれ 10msec です。スイッチの ON/OFF により、コイルの電流は 6msec ほどの応答で 10A→0A→10A の変化を繰り返しています。

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先ほどの波形では、スイッチを OFF したときに、コイルの電流が減少しています。その原理について補足します。

コイルに電流が流れたとき、次式でコイルにエネルギーが蓄えられます。

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スイッチを OFF したとき、コイルに蓄えられたエネルギーによって、コイルの両端に「逆起電圧」が発生し、コイルに蓄えられていたエネルギーを「逆起電力として放出」します。

それが、コイルには電流の変化を妨げようと作用する特性となるのです。より細かい原理については、電気磁気学の「ファラデーの電磁誘導の法則」や「レンツの法則」を参照してみると良いと思います。

そして、コイルの両端に逆起電圧が生じることで、ダイオードが導通し、ダイオードを介して電流が流れるのです。コイルに蓄えられていたエネルギーは抵抗によって消費され、次第に 0A に減少していくのです。


では話を戻して、以下の条件に変えてスイッチを ON/OFF したらどうなるでしょうか?

1周期 = ON時間+OFF時間 = 2msec(500Hz)
ON時間:1msec(50%)
OFF時間:1msec(50%)

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上記の条件における、コイル電流波形は次のようになります。

先ほどと同様に、上の波形がスイッチ SW に与える ON/OFF 信号、下の波形がコイルに流れている電流です。

スイッチの ON 時間と OFF 時間はそれぞれ 1msec です。スイッチの ON/OFF により、コイルの電流の過渡現象が収束する前に、状態が変化していることが分かります。その結果、平均すると 5A ほど電流になっていることが分かります。

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これがチョッパ回路でコイルの電流波形が三角波になる理由です。

つまりどういう事かというと、スイッチを ON/OFF したときの過渡現象の収束時間に対して、十分に短い周期でスイッチを ON/OFF させることにより、コイルの電流波形が三角波に見えているのです。

次の波形に青点線で示したように、スイッチの ON/OFF 周期を短くすることで、過渡現象の初めの部分の変化だけが見えてくるので、コイルの電流波形は三角波に見えてくるのです。

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おわりに

本記事では、チョッパ回路のコイル電流が三角波になる理由を解説しました。少しでも、理解の助けになっていただければ嬉しいです。気に入っていただけたら、「いいね!」をして頂けるとモチベーションも上がるので嬉しいです。

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