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草刈りの方法と機材、使い分け

「田舎の草刈りが大変で」というのは帰省話の定番だけど、都会暮らしの身には正直ピンとこない。少なくとも僕はそうだった。でも、実際に田舎に行くと、炊事洗濯に匹敵するウェイトの家事たたかいがでんと追加されることが分かる。延々と生えてくる緑の波を押し返し続けないと、家が森に埋もれてしまう。

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草との戦いにヒノキの棒では心もとない。この記事では、身近なものから、大掛かりなところまで武器くさかりきを並べてみるので、その上で、これからの戦いに備えられればと思う。

武器のあれこれ

登場する主な武器を、まずはカード形式で。詳細は後述。

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メイン武器 - 刈払機

一本目の得物として持つべきは、刈払機らしい。田舎で「草刈り機」と言えば、これを指している。一番、使える範囲が広く、これ一本ですべてをまかなう猛者も多い。一方、金属の刃をほぼむき出しで高速回転させる物騒な機械なので、安全には特に気を使う。長らくエンジン式が主流だった中、この数年は充電式の性能が上がっている。これから自家用で使うなら後者で十分。充電式を使っていると「素人」扱いされるかもしれないけど、実際そうなんだから大丈夫。

充電式: 本体(とバッテリー)価格が高め。充電代は誤差みたいなもの。
エンジン式: 本体は安く、馬力が強い。ガソリン代が高い。

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刈払機の刃は、色々な種類があり、メーカー純正以外も含めると発明大会の様相を呈している。調べてみると面白い。一般的なのは、チップソーと、ナイロン紐を回すタイプの二種類で、長所短所がありどちらも揃えておきたい。

チップソー: 切れ味がよく、硬い笹などもOK。比較的飛び散らない。
ナイロン紐: 地面スレスレかつ、広い範囲を短時間で処理出る。

ナイロン紐タイプは、紐が自動的に供給されるようになっていて、切れ味が一定している。農地など、広い範囲を処理する場合はこちらが楽なんだけど、草や小石を盛大に散らかすので、窓ガラスの近くでは使えない。道路付近や近所の人との共同作業でも避けたほうが無難だ。5分ほどの作業で、チップソーとナイロン紐を付け替えることができるので、刈払機1台で両方使える。

ブロック塀の際や、庭木の隙間など細かい部分では、チップソーが使いにくいけど、家屋の近くではナイロン紐も難しい。そんな時は、ヘッジトリマーで補完する。本来は、庭木の枝葉を整えるものだけど、地面でも使える。専用品としては芝生バリカンだけど、どのみち庭木も手入れするならヘッジトリマーで構わない。

サブ武器 - 鉈と鋸

草刈りの途中で竹や灌木が現れると、刈払機ではお手上げ。そんな時は、鉈(なた)と鋸(のこぎり)を腰に差していこう。大抵の刈払機は右側の腰当てで支えるので、僕は左側のベルトにこの2つをぶら下げている。

木の幹の太さが5センチ以下なら、チェーンソーを使うまでもない。鋸でも十分だ。竹については、どんなに太くても鋸で十分だし、2,3センチまでは鉈でも行ける。ついつい、近視眼的に電動工具ばかりに目が行ってしまうけど、アナログな道具が便利なシーンも多い。一揃いは持っていたい。

範囲魔法 - 防草シートとコンクリート

雑草の対処の理想は、「生やさない」こと。普段、人や車が通るところは、魔法で草を封じ込めてしまおう。魔法じゃなかった。防草シートと砂利を使う。草抜きと地ならしをしてから、上に防草シートをかけて行く。専用のピンがあるので、それで留めればOK。シートのままだと耐久性と見た目がイマイチなので、砂利を撒いておく。

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防草シートで残念なのは、端っこが弱い点。割とすぐにシートを持ち上げるようにして雑草が生えてきてしまうので、こまめに手で抜いていくしかない。それも面倒だという場合は、薄いコンクリートで覆ってしまう手が使える。雑草を生やさないだけなら数cmで十分。手練りのコンクリートでも何とかなる範囲だ。もちろん、車が通る場合はそれなりの厚みが要るので、ミキサー車を呼んだほうが早い。

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なお、土の上にそのまま砂利を敷くのはNGだ。せっかく敷いてもしばらくすると土の中に埋もれてしまうし、よほど厚く敷かないと平気で雑草が出てくる。それよりは、ホームセンターに売っている「固まる土」の方が効果が高い。「真砂土」をアルカリ性に調整したもので、セメントのように水で固まるようになっている。こちらも、耐久性を考えるとそれなりの厚みが必要になってしまう。鍬やハンマーで崩してしまえば土に戻るけれど、アルカリ性が強くて植物の生育にはもう適さない。

黒魔法 - 除草剤とバーナー

除草剤(農薬)も定番だ。庭先で使う人もいるし、舗装の割れにだけに使うという人もいる。街暮らしではあまり目にしなかったが、マンションの管理人はおそらく使っていたはず。また、土に石灰を混ぜて、植物が育たない強アルカリ性にするという方法も聞く。どちらも土壌に残るものなので、使用には慎重でありたい一方、労働力のない場所では必要な選択肢になっている。

草焼きバーナーも田舎では割とよく使われている。通りがかりに遭遇すると、絵面的にインパクトがある。燃料は、カセットガスか灯油。地表に落ちた雑草の種まで不活性化できるのが強み。トータルな環境負荷としては疑問が残るが、土壌には優しい。

召喚獣 - 芝刈り「ルンバ」

都会でも、芝刈機は時々見かける。こちらは、相手が芝なので、動力不要な手押し式のものも多い。刃が本体に隠れて安全性が高い。ただ、腰高まで生えた雑草などは対象外になるし、庭が凸凹していても使うことができない。ゴルフ場のようにとまでは言わないものの、地面をキレイに均しておく必要がある。

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コンクリートや砂利ばかりでは美観に合わないし、雨水が浸透する余地がなくなってしまう。日照りで熱くなりすぎるのも問題。その点、芝生は「自然」と「管理」のいいとこ取りだ。庭の凸凹が多少であれば、鍬とスコップで地均してみよう。秋までに芝の種を蒔くと、数ヶ月後に緑の芝生が生え揃うはず。以後はメンテナンスだけで良いから、だいぶ楽になる。

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近年、ロボット芝刈機の価格が下がって、一般家庭でも手が届くようになった。いわばルンバの芝刈り版にあたる。iRobot社は参入していないが、Husqvarna社の入門機が比較的入手しやすい。毎日、設定した時間に動いて、前日に伸びた分だけ刈り取っていくので、微細な刈りカスはすぐ土に紛れてしまう。春夏秋と芝生を放置できるのはとてもありがたい。冬は、納屋にしまっておこう。

伝説級 - ハンマーナイフモア

冒険も進み、戦いにも慣れてくると、ご近所に妙に戦い慣れた戦士がいるのに気づく。まず、速い。そして刈りあとが美しく、刈り取られた部分も粉砕されている。こんな戦士たちが使う武器が、ハンマーナイフモアだ。大きすぎて手では持てないけど、自走式なので手で軽く押すだけ。機種によっては小さなステップに足をかけて、自分ごと動けるものもある。

武器屋のうきてんに置いてあっても、値段が一桁違うのでおいそれと手が出ないけど、あれば時短間違いなし。二拠点生活や、別荘ぐらしが草刈りばかりで終わってしまうという場合は、ハンマーナイフモアで時間を買うという手もあるかもしれない。

戦艦級 - 乗用タイプ

ハンマーナイフモアの刈幅が広いものは、小さなトラクーくらいのサイズで乗用タイプになる。アタッチメントとして売られているものもあり、すでにトラクターを保有しているなら自走式よりも安いくらいで手に入る。

ただ、ここまで来ると近隣で持っている人をあまり見ない。里山で使いたいとすると休耕地の管理。でも、あまりお金をかけられない気がする。今も使っている農地であれば、草刈りが必要なのは斜面やあぜ道くらい。大きすぎて出番がない。

むしろ、ユンボのアームに取付けられるタイプが良さそう。行政の委託を受けた業者さんが、道路脇をこれで草刈りしているのをときどき見かける。道路など地盤がしっかりしているところなら、傾斜地にも強い。

まとめ

もし、冒険のスタート地点で悩んでいるなら、まずは充電式の刈払機から。使い勝手が分かってきたら、故障に備えて2台目もほしいけど、そこは予算次第だ。壊れると、修理に1ヶ月以上かかることもあり、その間放置もできないから買い足すしかない。ちなみに、町内会の草刈りで自機が不調だと、割といたたまれない気持ちになる。

草刈りの面倒さを体感したら、次は防草シートとコンクリートの敷設に挑戦してもいい。大変だけれど、後々が圧倒的に楽になる。DIYでも良いし、重労働なのでプロに頼むのも手だ。設計士や造園家が近くに居るなら、草刈りの手間の少ない造園プランを相談できると思う。

田舎住まいは、ついつい建物の改装に目が行く。でも、外の雑草を放っておくと雪だるま式に大変になるばかり。幸い、屋内に雑草は生えてこない。草刈りレディな屋外環境を先に作って、翌年から楽をしたい。

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草刈りには、ここまでで触れた「武器」のほか、「防具」も忘れてはならない。長袖長ズボンでアイシールド、頭や首を覆うタオル、手袋は必須だし、脚絆やエプロンもあるに越したとはない。このあたりは、また別の記事で。


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