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【ドラム】クリックを聴く=自由になることかもしれない

メトロノーム。クリック。

ドラムを始めた当初、最大の難敵だった。
なんであいつはこちらの意図を汲まず自分勝手にテンポを出しやがるのか。なんなら今でも時折ムカつくことがある。

高校生の時、ジャズアンサンブル部とかいうけったいな名前の部活に入っていた。
今でも思い出すのは合奏やパート練習の前にやる最初の基礎練はメトロノームをかけながらBPM80でひたすら4小節塊でチェンジアップをするという地味な練習だ。管楽器はその間ロングトーン。
当時の僕はリズムキープ力が欠如していたので、本当にメトロノームに合わせることができなかった。多分あの時使ってたメトロノームは勝手にテンポが遅くなるやつだったんだろう。そういうことにしておこう。
結局3年間、僕はメトロノームに合わせることができなかった。あまりに悔しくて毎日電車に乗りながらメトロノームを聴く変人が出来上がった。部活を引退する直前くらいから突然メトロノームの聴こえ方が変わり、ビートを刻んでて少なくとも1拍目が合うようになった。

大学生になり、2年ちょい軽音部と言う名のジャズアンサンブル部に入った。ややこしいんじゃ。
そこではメトロノームを裏拍で聴くという、自分の中で今までにない画期的な活用方法を教えてもらった。
メトロノームを裏で聴きながらドラムを叩くと、メトロノームが音を発する位置と自分の「1」の位置との相関関係を嫌でも意識するようになり、段々とメトロノームが楽器に聴こえるようになってきた。

大学生後半から新社会人まで、同期演奏オンリーのバンドをやることになった。
最初はミキサーが無かったのもあり、バンドサウンドを聴かずクリック&シーケンスに合わせて叩いていた。活動途中でミキサーを導入してイヤモニシステムを構築してクリックと付き合っていたが、バンドを解散する直前の数回のリハは、なぜかどう叩いてもクリックがこちらに合わせてくれるようになった。
今思うと、あの時は最早クリックを聴いておらず、完全無意識下に置かれていたように思える。手元にあったミキサーで中音と混ぜていたが、極力中音を聴くようにしてクリックは本当に薄くしかかけていなかった。最初の4カウントだけもらえれば、あとはバンドとのアンサンブルで成り立った。

そこまでの境地に至ったが実はここ5〜6年、個人練習以外で全くメトロノームを使っていない。というのも、正確なBPMが必要なバンドに居なかったからだ。

クリックを無意識にする境地に達したあと、しばらくこいつと距離を置いてわかったことがある。
クリックはテンポ管理を他人に委ねるものだったのだ。

他人というか機械か。

テンポキープは自分のバッファを思いの外多く取られる。
演奏してて、このパートよくモタるから思ってるより急ごうとかこのフレーズハシりがちだから落ち着こうだとか、録音聴いては修正して...とまあまあ管理が求められる。
あくまで持論だが、面白いことに音楽の性質によっては多少揺らいでいた方が臨場感を演出するスパイスになる場合もあり、逆に正確無比なBPMの提供が必要だなと思う場合、色々ある。

最近サポートを依頼されたバンドが久しぶりに後者だった。初ライブの録音を聴いて確信した。
というわけで今こうやっていそいそイヤモニ&クリックシステムを構築しているのだ。あの時の感覚を呼び起こせるだろうか...

あれだけクリックに苦しめられ縛られていた人が今、クリック聴きながら演奏してみるかと思った時、「そっか、クリック聴けば曲のBPMを自分で管理しなくて良くなるから楽になるなあ」と思った自分がちょっと面白くて筆を取ってみた。

しばらくヤツとは距離を置いてたから、多分苦しめられるんだろうなあ〜

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