見出し画像

血の通った基礎練習、しよ。

楽器を触っていれば避けては通れない基礎練習。

先日の記事で話題に出した『ハノン』は、ピアノにおける基礎練習のひとつですね。


私も音大受験を決めてからはハノンの練習を始めたのですが、この巻末にはそれはまあ恐ろしいあとがきが添えられています。

さて、みなさんはこの本全巻を学び‟メカニスティックなむずかしさ“がよくおわかりになりました。けれども、本当に学んだことが実を結ぶようにするためには‟一定期間”毎日この本全部を弾かなければなりません。全部を弾いても、たった一時間です。大きな実がなることを思えば、それはほんのわずかな仕事ですね。

『全訳ハノンピアノ教本』(全音楽譜出版社)より

いやはや恐ろしい。

この教則本1巻で60番まであるんですが、それを毎日ですって。
私なんて1番と2番を4回繰り返すだけでも手が攣りそうになるのに…。

世のピアノ弾きさんたちは一定期間やってたんでしょうか、全巻…。
私は1,2番と39番のスケール練習しかやってませんでしたけども。

といいつつ、基礎練習で1時間と考えればたしかにそのくらいはユーフォなら全然やるな…とか思ったり。


ともかくこんな感じで、根本的なスキルアップのためには基礎練習は欠かせないものと言えます。

スポーツでいうストレッチや筋トレと同じようなものでしょうね。


当然のことながら、私もユーフォニアムを始めてからずーっと基礎練習には取り組んでいるわけで。

ユーフォニアムをはじめとした金管楽器にも、ピアノにおけるハノンのような教則本があります(知名度、ユーザーの多さ的にね)。

その名も『アーバン』。

金管楽器の教則本といえばこれ。
アーバンでググったら‟金管演奏のバイブル”ですって。

いろんな出版社から出ており、私が持っているのはなんと359ページありました。鈍器です。

こんなページ数ですから、ハノンのように一日で吹けるはずもなく。

毎日ちまちまとページをめくってみたり、先生や先輩にどの練習を自分の基礎練習に取り入れているか聞いてみたりして活用してました。


アーバンは金管楽器初心者でも吹けるようなシンプルな練習から上級者向けのものまで収録されていますが、私がアーバンを初めて手に取ったのは高校に入ってからでした。

中学までは教則本を使うという概念がまずなくてですね。

そんなにクラブが盛んな方でもなかったので、どの楽器もそんな感じだったと思います。
先輩から代々受け継がれてきた出どころ不明のプリントに書いてある練習をやる、みたいな。


教則本を使い始めると練習のバリエーションがぐっと増えますからそれだけでも上達が早くなるんですが、教則本を使い始めてから基礎練習の必要性がより明確になったのが自分にとっては大きな変化でした。

中学の頃って「ロングトーンやる、リップスラーやる、タンギング練習やる。以上。」だったんですよ。

これがどんな内容の練習だとか、基礎練の種類がどうとかいう話ではなく、「こういう基礎練習があるからやる」ってところから発展がなかったんです。

なんのためにその練習をしているだとか、そこまで意識してなかったんじゃないかなと。そりゃ多少は考えてましたけどね。


例えば具体例を出すとすると、ロングトーンって平たく言えば音を伸ばすだけの練習なんですけど、そんな超シンプルな基礎練ですら大きな違いがございます。

中学の頃の私は、ロングトーンってできるだけ長く音を伸ばすための練習だと思ってました。要は肺活量を増やして息を保つ練習だと。

実は管楽器を演奏するのに肺活量って第一に重要なわけじゃなくて、そりゃ使える息の量が多いに越したことはないですけどそれよりも大事なのは息の効率的な使い方でして。

そんなことまで考えてなかった当時の私は、ロングトーンの練習をすれば肺活量が増えるんじゃないかと思ってたんですね。
むしろそのためのロングトーンだと。

でもそうじゃなくて、より美しいサウンドを作るためとか、音の立ち上がりを明瞭にするとか、伸ばしている間ピッチを一定に保つとか、これだけでなくたくさんロングトーンの目的ってあったんです。

高校の先輩に「ロングトーンの途中で息足りなくなったら吸っていいから」って言われたときは目から鱗でした。
肺活量のためにやってるんだったら吸ったら意味ないやんって話ですからね。

途中で息を吸うとか、自分のできるテンポに設定していいとか、考えたこともなかったんですよ…。
8秒伸ばして4秒で息吸うんでしょ、そういう練習でしょって。


当時のことはあやふやなんで、ここまで極端な勘違いではなかったかもしれないですけど、基礎練習への解像度なんてその程度でした。

これがロングトーンだけじゃなくてあらゆる練習にそのくらいのぼや~っとした認識で取り組んでいたということですから。


これが教則本だと「~を意識してこの練習に取り組みましょう」ですとかその基礎練習の趣旨みたいなものが、懇切丁寧にチャプターのはじめについていたりするんです。

ちゃんとそれを読み込んで練習すればこんな勘違いは起きませんよね。
練習効率爆上がり。

筋トレするときにどこの筋肉を鍛えているのか意識した方がいいとか言われてるのと同じ原理だと思います。


先ほど話題に出したアーバンは、私が持っているものは全部英語でしたが頑張って読みました。

そうやって知識をつけはじめると、シンプルな練習ですら楽しかったりするんです。

これまたアーバンってなぜか中毒性があって、モードに入ったらやめられないんですよ。
とんでもないページ数のおかげで、どれだけやっても終わらないし。


こうして教則本を使うことを学んでいくうちに、「この練習はこの目的のためにやっている」から「ここを伸ばしたいからこの練習をする」のフェーズに入りました。

いくら教則本が楽しかろうと時間は有限ですから基礎練ばっかりやってるわけにもいきません。

今なんてまさにそうで、生活するためには楽器だけ吹いて過ごしてるわけにもいかないって中で毎日練習時間をとって今後控えている本番の曲をさらって…ってなると案外タイトな時間を過ごさないと一瞬で時間が溶けてしまいます。

なのである程度ムラなく基礎を抑えながらも、その日の調子に合わせて練習の内容をころころ変えたりしてます。

ルーティン的にビシッと基礎練習のメニューが決まっている人もいるでしょうし、今もまだ模索中ですけども。


最近のレッスンでアーバンを使うことがありまして、あらためてじっくりと‟金管演奏のバイブル”と向かい合う中で、自分の中高の頃ってどんなかんじだったかな~と思い出すなどしていました。

そんな感じで。
アーバン、技術的にクリアしていたとして全て吹くのに何時間かかるんですかね。
試してみても面白いかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?