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楽器に触れることって当たり前に日常ではないので。

ご縁がありまして、先日とある講習を受けてきました。

内容は、講師としてユーフォニアムを教えるための講習。こんなの滅多にない機会です。

普段は演奏活動以外に、ユーフォニアムを教えたり吹奏楽の指導をする機会がございます。ございます、というか今のところ演奏よりこっちの方が多いのかもしれません。

音楽業界ではレッスンと呼ぶことが多いでしょうか。

音大生は学生の頃から近所の学校にレッスンに行ったりする機会が意外と多く、私も例に漏れずこれまで地元や大学近くの学校にお邪魔することがありました。

ですがどうやって楽器(演奏)を教えるかというのは、明確にマニュアルがあるわけでも誰かに教えてもらえるわけでもありません(専門のコースは省いて)。

今まで自分がレッスンを受けてきた経験からだったり、現場で得た知識を活用してレッスンに活かします。

この言い回しいいなぁと思えば、こっそり自分のボキャブラリーに追加してみたりして。

私は、大学で教員免許を取ったのでレッスンに応用できそうな知識は取り入れるなど工夫していました。


今回は、ユーフォニアムの講師として楽器を教えるノウハウを学びましたが、吹奏楽の指導にも生かせる知識がたくさんありました。

今の自分にとって一番の課題だと感じたのは、自分の視点を相手に合わせるということ。

例えばこれはこのnoteを書くときにも意識していることですが、音楽の分野で当たり前に使われている言葉は、世間一般では通用しないのが普通です。

ですが私もユーフォニアムを始めて十数年、周りにはもっと長く音楽をされている方がたくさんいらっしゃる中で過ごしていると、音楽ネイティブの温度感に慣れてしまいます。

その専門用語というのは、音楽の中でも少し分野が違うだけで使われるワードが変わるほどです。

勉強のために身近でない音楽分野の専門書を読んでみたりするのですが、聞きなれない単語が出てきて調べてみると普段ごく普通に使っている単語が横文字になっているだけだった、なんてよくある話です。

音楽に親しんでいてもなおそういった齟齬が生まれる可能性があるくらいですから、いかに視点をフラットに持ち続けることが大切かということです…。


そう考えると、自分が楽器を始めたばかりの頃に視点を戻すのが一番適切なんだと思います。

今回の講習で目から鱗だったのは、音を出す前の楽器の扱い方に関するトピックです。

楽器経験のある方は、先生または先輩から「楽器は自分の子どものように丁寧に扱ってね」なんて言われた経験などないでしょうか。

楽器はすごく繊細なものです。
大切に扱っていてもなおケースへの入れ方や運び方、置き方ひとつで歪みが出てしまったり、ちょっとした衝撃ですぐへこんでしまったり。

楽器を大切に扱ううちにもはや自らとリンクしてしまって、楽器をぶつけたら「痛っ」と声が出てしまうなんていうのはあるあるなんじゃないでしょうか。

この「楽器は丁寧に扱うもの」というのも、自分にとっては当たり前であるからこそ勝手に共通認識かのような錯覚に陥りますが、そんなことはないのです。


私自身が管楽器を吹いているからこそ「どうやったらよりよい音になるか」とか「つまずいているところをどうすればもっとスムーズに吹けるようになるか」といったように、音を出すことばかりにフォーカスしてしまいがちでした。

それじゃあということで自分が楽器を始めた中学1年生の頃のことをおぼろげながら思い出してみるとよく分かります。

細かいスキル云々の前にそういった基礎的なことを学んでいく時間があって、音を出すなんてのは上手い下手とか関係なく「昨日より音が出た!嬉しい!」とか、そんなんでした、確か。

楽器が構えられることも、腹式呼吸(管楽器を吹くときはこの呼吸を使います)がなんとなく分かってきたときも、楽譜に指番号を書き込まずに吹けるようになったときも、新鮮に嬉しかったんです。


今回の講習で「視点を相手に合わせて」を意識してみることで、ぐぐっと楽器を始めたばかりのことを思い出すことができました。

音楽って楽しいと思える中にもこんなにたくさんの発見があって楽しんで楽器続けてきたんだなあと嬉しくなりましたし、自分の好きなユーフォニアムや吹奏楽の魅力を伝えるためには、そういったちょっとした喜びや発見、ときに不安にも気付けるセンサーを備えておかなければと思います。


研修に向けて資料を読み込んだり普段の教材を分析したりと、非常に濃密な経験になりました。
今日からまた頑張っていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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