20111023_写真映画_ヤーチャイカ_トークショー

谷川俊太郎・覚和歌子が語る写真映画『ヤーチャイカ』

詩人の谷川俊太郎さんと覚和歌子さんが共同で監督した写真映画『ヤーチャイカ』。その製作秘話をお二人に語っていただいた。これは2011年10月23日に山梨県甲府市の岡島ローヤル会館で開催された映画上映&トークショーの記録である。

鈴木春花(以下鈴木):谷川さん、お越し下さいましてありがとうございます。

谷川俊太郎(以下谷川):この頃自己紹介する時に「まだ生きてます。」と言わなきゃいけないんです(笑)
小学校行くと「あっ生きてる!」って言われるんですよ。教科書に載っちゃうとね。死んだ人みたいになっちゃうんですよね。

鈴木:それだけ長きに渡って活躍されているという方です。覚さん、お帰りなさい。

覚和歌子(以下覚):ありがとうございます。きょうの映画のオペレートをして下さっているのが塩山シネマさんだとうかがいまして、とても懐かしい気分になりました。小学校1年生の時に『ウエストサイド・ストーリー』を観に行ったという、とても衝撃的な鮮烈的な記憶があります。多分、私が劇場で観た初めての映画だと思います。ちょっとご縁を感じてしみじみとしております。塩山シネマさんありがとうございます。(会場拍手)

鈴木:では『ヤーチャイカ』のことについてお二方にお伺いしていきたいと思います。すごく風景が綺麗でした。今回、山梨県北杜市と長野県川上村でロケが行われたんですよね。この映画はどのようにして、出来上がっていったのでしょうか?覚さんからお願いいたします。

覚:色んな説明の仕方があるのですけれども、写真映画を私たちが撮りたいと思ったわけではなく、プロデューサーが、写真を繋げた紙芝居のような映画を作りたい。ついては覚さん脚本を書いてくれないか?とお願いがありました。それで、脚本を練っているうちに監督さんは誰にしたらいいだろうかというところで、谷川さんのお名前が挙がり、お願いをしたら、快諾していただきました。撮影チームができあがり、写真家が決まり、写真を撮りに行き、写真家は写真を1万枚撮り、ひたすら、ひたすら写真を1万枚撮り、というような現場でした。谷川さんは「よーいスタート!」も言えずに・・・(笑)

谷川:映画じゃないから言えないんですよね。

鈴木:なるほど。

覚:動画ではないので、いまから始めるよっていう、「よーいスタート!」が言えないんですよね。普通はどうなんだろうということを頭のどこかで考えながら、撮影をし、1万枚の写真をどのくらいかな?3カ月かな?もっとかな?死ぬ思いで編集作業をし、音楽をつけ、DVDにしたということですね。

鈴木:谷川さんはどのような考えで快諾したのでしょうか?

谷川:快諾しちゃったんですよね(笑)写真映画だと言われて、割と簡単だろうと。自分、写真好きでね。写真集も出しているから。写真を並べればいいのだから。面白いし、簡単だからってつい快諾しちゃったら、いやあ、もう大変でした。特に編集に入ってからが、もう私と覚さんの間の友情がもうこれで終わりかというような(笑)編集というのはね、一番なんか生理にかかわるんですよ。1人1人の。

覚:身体性みたいなものですね。この1枚の写真を何秒見せるか?

谷川:ムービーだとね、今実際に3分のシーンがあれば、それを3分使えるわけでしょ。写真だと1枚の写真だから、それを一体、3分使うのか15秒使うのかってだけですごい違いがあるんですよね。そこで、だんだん難しくなってくるわけですよね。私は15秒、私は3分みたいな話になってくるわけ。

覚:で、その意見が食い違った時に、生理なので、つまり自分が見てそれは快感かそうじゃないかというところが判断基準なので、説明のしようがないんですね。

谷川:お互いに説得できないわけです。相手を。

鈴木:感覚的なものだからということですね。

覚:この方が気持ちいいじゃないかということで、永遠の平行線になるわけですね。

谷川:もうちょっとで僕は覚さんに回し蹴りを…(笑)暴力で解決しようみたいなとこまでいくわけですよ。

覚:しませんでしたけどね(笑)

鈴木:ギリギリで。

覚:心の中でみたいな。それは何でかっていうと、一番編集作業が佳境の時に、谷川さんが「12月生まれのお友達の誕生パーティがあるから。それでは覚さん、あとはよろしく。」って言って帰ったからなんですよ(笑)

谷川:その時はね、編集は絶対1人でやった方がいいと思ってたんですよね。それで恨まれたみたいですね。

覚:あの足取りの軽さ、ほとんどスキップしながら去って行きましたから。編集室から(笑)

谷川:だってこの地獄から逃げられると思ったから(笑)

覚:そうでしょうと思いました。残された私は好き勝手にやってやるぞとあの時心を決めましたね。

鈴木:男性的感覚と女性的感覚という違いもあったりしたんですか?

覚:それが極め付けですね。

谷川:一番大きいですよね。

鈴木:お2人は一緒に詩を作られたり、長年仕事のパートナーとして築きあげられてきたものがあって、その上でもやはり相当大変だったということですよね?

谷川:大丈夫だと思っちゃったんですよね。一緒に詩も書いているし。ところがやっぱり普通の映画と違ったんですね。写真ということで。

覚:つまり人間関係に影響が及ぶというところまでは想定していなかったということなんですよ。

谷川:想定外。

覚:それぞれがアイディアを出し合って、良いものができるだろうと。鷹をくくったということですよね。

鈴木:谷川さんはこれまでも映画という分野には携われてこられましたよね。

谷川:僕は大体シナリオを書くだけですけども。市川崑さんと一緒に『東京オリンピック』の頃からですよね。一応今度は監督という名前がついているわけじゃないですか。監督は全責任を負うわけでしょ。シナリオライターは、映画の出来上がりの全責任は負わなくて、書いたら監督任せになれるわけですよ。だからそこのところを誤算してたんですね。どこかで「後は任せられるな」ってつい思っちゃったんだけど、実際には覚さんと自分と2人で、全責任を負うという形ですからね。

鈴木:役者さんが台詞がない中で演技をするという、話題のお2人(香川照之・尾野真千子)が主演だったのですが主演のお2人についてはいかがでしたか?

覚:役者さんたちはちゃんとやって下さいました。自分の芝居感みたいなものはそれぞれで。香川さんは静止した写真の中からはみ出すような躍動的な芝居を皆さんは作品を観てわかってくださったと思います。私の理想を言うと、黙って立っていてもその中で、香川さんの内面で何かが起こっているというような芝居を望んでいました。でもご自分で本当に色々考えて色々作り上げて色々組み立てて、提出してくる方だったなという印象です。
どうですか俊太郎さん?

谷川:本来は動く役者だとおもいましたね。まあ、今度歌舞伎の世界に入るらしいけれども、例えばお能の人とかそういう古典芸能の人だと、ただ立っているだけという芝居というか存在感みたいなものは出せると思うけど、香川さんは他の映画を観てると、動きとやっぱり声ですね。台詞で生きている俳優さんだという気がしたから、相当、彼にとっては酷な要求だったのかなというふうには思いますけど。でもあんまり演出しませんでしたよね?撮影の時に。

覚:私は尾野真千子さんには結構(芝居を)つけたんです。尾野さんは、こちらの言うことを本当に咀嚼して、思った通りに動いてくれた感じですね。一説にどれよりも説得力のある尾野真千子さんのプロモーションビデオになったのではないかという。

谷川:あれからすごい売れちゃったよね。

覚:そうなんです。

鈴木:ドラマもたくさん出演されていますしね。

谷川:シーツに包まったラブシーンがあったでしょ。

鈴木:はい。

谷川:あそこはシーツの中に潜り込んで、写真家が写真撮ったんですよね。

覚:シーツの中に3人がいるんですよね。

鈴木:すごい(笑)

谷川:だから時々間違えて足に触っちゃったりしたって香川さんが言ってましたけどね(笑)

覚:カメラの冷たい縁がつま先に触れたみたいと言ってましたね。

谷川:そのアイディアは面白かったと思うんですけれどもね。だからカメラマンも相当真剣に撮ったと思います。

覚:あと音楽はやっぱり空気感を8割方演出するものだったので、丸尾めぐみさんが音楽を担当して下さったのですが、とても頑張ってもらいました。今彼女は『ヤーチャイカ』を撮ったあとに、北杜市に移住しまして、山梨県民になっています。

谷川:すごく僕好きですけどね。いい音楽を書いてくれたよね。

覚:本当に細かい注文をしてしまったので、彼女にも相当消耗させたと思います(笑)でも100%以上に応えて下さったと思います。

鈴木:では最後になるんですけれども、きょうここにお集まりいただいていますファンの皆さんに一言ずつお願いいたします。

覚:こんなにたくさんの方にまた観ていただけて本当に嬉しい気持ちです。ありがとうございました。

谷川:僕は山梨県民ではないんですけれども、文学館をはじめ、山梨にはよく来るんですね。そこで行われる映画イベントの一番最初の作品に選ばれたということをすごく光栄に思っております。ありがとうございました。

鈴木:きょうは本当にありがとうございました。


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