"いま"のフジファブリック
7月1日土曜日、久しぶりにフジファブリックのワンマンライブを観に行った。フェスなどではときたま観ていたものの、ワンマンとしては最後に観たのがSTAND!!ツアーの時のZepp Tokyoだったから、かれこれ6、7年は経っていることになる。Zepp Tokyoもとっくになくなってしまい、時の流れを感じる。かなり好きなバンドなのに気がつくとこんなに時間が経っていて、この機にやはり観ておかねばと思い、チケットを取った。
今回訪れたのは横浜Bay Hall。初めて行くハコだった。元町・中華街駅から約15分。まあまあ歩く。キャパ1100人くらいの会場はソールドアウトしていて、お客で満杯のフロアは開演前から熱気に包まれていた。
18時。「LOVE YOU」をSEにメンバーがお客に姿を見せる。自分にとって久々すぎるフジファブリックのライブで1曲目に披露されたのは「陽炎」だった。
往年のフジファブファンにとって、この曲がどれだけ大切かは説明不要だろう。雨上がりの蒸し蒸しする気候のなかやってきたお客たちのテンションを思い切りぶち上げる曲だったのは間違いない。盛り上がりすぎて、曲が終わると観客の拍手と歓声が鳴り止まず、メンバーたちはなかなか次の曲に入るに入れないという様子だった。7月1日の夏の始まりにふさわしいライブが幕を開けた。
志村がいなくなってからも、3人はけっこう志村時代の曲をやってくれている。これがファンにとってどれだけ嬉しいことか。今回は「陽炎」のほか、「地平線を越えて」「Surfer King」「若者のすべて」の4曲を披露。17曲中4曲なのでやや少ない方だが、1曲目やアンコールの最初に志村の曲を持ってくるあたり、やっぱり志村の曲を大切にし、ライブのここぞというところに配置しているように感じる。ここ最近のセトリを検索しても、「星降る夜になったら」「TEENAGER」など昔からの人気曲が組み込まれているようだ。
「志村が死んでからのフジファブリックは聴いていない(辛くて聴けない)」というファンは少なくない。その気持ちは痛いほどよくわかる。僕の友人には、「(志村が残した最後の曲たちが収録されている)MUSICを聴いてしまうと志村の新曲が聴けなくなってしまうから未だに聴けない」という人もいる。
もちろん、今のフジファブリックは志村がいた頃とはちがう。やっぱり志村、そして彼の書く曲は偉大で、唯一無二のものだった。だけど、彼が亡くなった後もバンドを続ける決意をしてくれて、いまだに志村の曲をライブでやり続けてくれている。ボーカルであり作詞作曲の大半を担っていた、バンドの核である志村を失ってもなおフジファブリックを続けてくれている。このことが背景にあるからこそ、フジファブリックのライブは観る者の胸を打つ。現ボーカルの総くんは志村とは声質は違うものの、歌い方はどことなく志村を意識しているように感じる。
そして3人になってからの曲も本当に良いものが多いし、アレンジもどことなく志村時代を彷彿とさせるような曲もある。ライブの定番曲になっている曲も少なくない。今回のセトリにも入っていた「STAND!!」のギターソロは楽しげでかつかっこよく、ライブ会場を1つにする力を持っている。祭囃子のようなアレンジが特徴的な「Feverman」では踊らずにはいられない魅力があるし、アンコールの最後で披露した「LIFE」は、生活のなかの些細な幸せをどこか切なさの感じられるメロディで高らかに歌い上げる。今回のライブで聴いてあらためてその良さを感じた曲だ。聴いていると多幸感で胸がいっぱいになる。
MCも冗談を交えながら和やかで、聞いていて面白かった。横浜Bay Hallは柱が少し邪魔で、位置によっては上手側の加藤さん、下手側のダイちゃんが見えないのだけど、ダイちゃんはそれを茶化しながら、「この辺りの人たちは僕を捨てた人ですね〜」なんて言ってみたり。総くんも終始テンション高めで、ライブをやっている本人たちも心から楽しんでいるのが嬉しかった。
志村はもういないし、戻ってくることはないんだけど、志村がいたフジファブリックを引き継ぎながらも、3人は新たなフジファブリックを作っている。そんなことをあらためて感じたライブだった。昔は好きだったけど、最近はライブ観てないな、新曲聴いてないなって人たちにこそ、ぜひ"いま"のフジファブリックを観てほしい。