本日は、お日柄もよく【ブックレビュー】
スピーチライターという仕事をご存知だろうか?
政治家や企業のCEOなどのスピーチ原稿を考える仕事だ。
スピーチライターはどんな風にスピーチに、言葉に、人に向き合っているか想像したことがあるだろうか?
小説や映画、ドラマを見ることの醍醐味は、自分の人生では味わうことのない世界、感情をちょっぴり味わうことができることだと思っている。
そして、人によっては”ちょっぴり味わう”どころか、物語をきっかけに実際にその世界に足を踏み入れる人もいる。
この小説を読んで、「スピーチライターになろう」と心に決めた人もいるんじゃないかな、そんな風に思った。
本のあらすじ
「本日は、お日柄もよく」
原田マハ
感想
言葉にまっすぐに向き合うと決めた主人公こと葉。不器用ながらひたむきに進んでいく姿にエールを送り、ときに一緒に涙した。
こと葉の師匠の久美さんや、俳人のおばあちゃん、幼なじみ、登場人物もみな魅力的だ。
物語の中で出てくるスピーチはどれもグッと心に迫るものがある。なぜ心の琴線に触れるのか確かめたくて、もう一度目を通す。いったりきたりを繰り返して読んだわりには、ページをめくる手が止まらなくてあっという間に読んでしまった。
こと葉のライバルであり、同志でもあるワダカマとのやり取りにもキュンとする。お仕事小説と出版社の紹介には書かれているが、こと葉とワダカマとの恋の行方も見どころのひとつだ。「現実にこんな人いるんか?」と思うのだけれど(笑)、終盤にかけてワダカマは相当かっこいい!
読後は温かくてしあわせな気持ちが広がり「いい物語を読んだな〜」と心から思える。
末端ながらライターとして文章を書いている身としてはハッとさせられる一節もあり、思わずメモしてみたり。
原田マハさん、初めて読みましたが「こりゃ、みんなが好きなわけだ」と納得の面白さだった。
美術館のキュレーターとして働いていた原田マハさんが書くアートと交差する作品もたくさんある。それらも読みたい。
ちなみに比嘉愛未さん主役でドラマ化もされている。
俳人のおばあちゃん役が八千草薫さんというのはめちゃくちゃハマり役!!ワダカマは速水もこみちさん。私のイメージでは松田翔太さんっぽいな〜と思っていた(笑)
スピーチと言えば
数年前に友人の結婚式でスピーチをしたことがある。
内容はその友人の良さが伝わるようにあーでもない、こーでもないと思考をめぐらせてよく練って作ったつもり。
しかし本番でうまくしゃべれたかというと、全くうまくしゃべれなかったな〜と思い出される。
お恥ずかしい限りなのだが、スピーチ中どうでもいいことが頭のなかを占拠していた。それは冬の寒い日のことで、結婚式会場までタイツで行き会場でストッキングに履き替える予定だった。けれど、私はストッキングを家に忘れてしまったのだ。
「うわ〜人前に出るのにタイツのままだ。タイツってたしかマナー違反だったような。。。ストッキングなんで忘れちゃったんだろう。。。」頭のなかの声が止まらない。緊張も重なり、スピーチに集中できなかった。
本書のいちばん始めのページにスピーチの極意十箇条が書かれている。その中でも特に一つ目、三つ目を当時の自分に聞かせてやりたい。
大事なのは友人に心からのおめでとうを伝えることがスピーチの目指すところ。
これらはスピーチの場面でも大事なことだけれど、それに限ったことではない。
私の場合なら、ヨガのクラスを行うときにも、ライターの仕事でインタビューさせてもらうときも忘れてはいけないことだ。
さて、今年6月に友人の結婚式に出席予定だ。私はスピーチをしない。
30代後半にさしかかる身としては、友人の結婚式にお呼ばれすることも、もうあまりない。私は会社員を卒業してフリーで働いているので、社長のスピーチを聞くこともない。
つまり、スピーチを聞く場面は相当レアだ。スピーチする人の話に注目してこようと思う。うとうとしてスープに頭をつっこまないようにだけは気をつけたいところだ(笑)