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チャンピオンホースになるという事とは #宝塚記念 全頭評価


レース展望

今年は2006年以来の京都開催となります。阪神開催と異なるのは、コーナーが緩やかになる点。阪神開催でコーナリングの巧拙が勝ち負けに直結したケースはあまり見受けられないですが、京都開催に替わることで走りやすくなる馬が居るのも事実です。昨年のイクイノックスもそうですね。ただ、大前提として力の強い馬が順当に走ります。過去5年の勝ち馬も、リスグラシュー、クロノジェネシス、タイトルホルダー、イクイノックスとチャンピオンホースの名がズラリと並びます。今年に関しても、ドウデュースやジャスティンパレスといった現日本競馬のトップホースが参戦しますし、よほどの事が無い限りこの2頭が高確率で好走すると思います。

2020年クロノジェネシス、2022年タイトルホルダーの勝った年は強烈なハイペースでの消耗戦。阪神開催時はやや流れるペースの方が多いイメージですが、京都開催となればそこまで流れなさそうではあります。加えて今年は逃げ馬が不在となるため、極端なスローペースも念頭に入れる必要があります。今年の逃げ想定はベラジオオペラ、ディープボンド、掛かりつつの先頭ならローシャムパーク辺りが妥当なラインでしょうか。3頭とも持続力を武器とするタイプの馬ですし、後半1200m~1000m単位でのロングスパート戦となりそうです。日本ダービーのように前半が緩むのであれば、スピードレンジが求められますが、そこまで前半から負荷の掛からないラップになるかと言えば疑問ではあります。2021年ぐらいのラップでスパート始動が早いというイメージでしょうか。以下にディープボンドが逃げたと仮定した際のラップを記載しておきます。比較対象として、2021年のユニコーンライオンの個別ラップと見比べて頂ければと思います。

2024年宝塚記念 ディープボンド(推定値)
12.3-11.2-11.8-12.4-12.5-12.0-11.8-11.5-11.4-11.9-12.4(2:11.2)

2021年宝塚記念 ユニコーンライオン
12.3-11.2-11.6-12.4-12.5-12.4-12.3-11.5-11.5-11.5-12.1(2:11.3)

後半1000m勝負という点では、日本ダービーと類似しそうな点は見受けられるものの、先行馬における全開区間はゴールよりかなり手前と考えています。差し有利という訳ではなく、単純に待てる馬、全開区間から耐えられる馬が有利となると思います。

今回も例の如く、各馬の推定理想値タイムを掲載しておきます。馬場差は先週のマーメイドSと同程度と設定しています。ただ、あくまで良馬場開催の指標でもありますし、雨予報という点を考慮してもここまでの高速化は考えにくいかと。

ジャスティンパレス 2:08.6
ドウデュース 2:09.2
ディープボンド 2:09.3
ブローザホーン 2:09.6
カラテ 2:09.7
ベラジオオペラ 2:09.8
ローシャムパーク 2:09.8
プラダリア 2:09.9
ルージュエヴァイユ 2:09.9
ヒートオンビート 2:10.0
ソールオリエンス 2:10.1
シュトルーヴェ 2:10.2
ヤマニンサンパ 2:10.2

勝利水準は想定レコード更新となる4頭で、加えて近3走以内に指数の最高打点を叩き出したドウデュース、ジャスティンパレス、ブローザホーン辺りでしょうか。2分10秒を切る馬は馬券として一考の余地があります。この数字上では成長曲線を無視していますが、4歳馬と5歳馬は成長を加味して評価を上げても良いと思います。特に4歳。

今回も各馬のフローチャート、および指数・追走・末脚のキャリアハイの値を評価し、3項目で順位化しています。馬券の参考となれば幸いです。

各馬見解

●ドウデュース

総合評価:SS+(95点)
指数評価:SS(2位)
追走評価:S(2位)
末脚評価:SS(2位)

阪神1600m、東京2400m、中山2500mという全く異なるコースのGⅠを勝利しており、現役馬でもトップクラスの余力を持っています。天皇賞・秋を掛かりながら追走したように、本来は速いペースでスイスイと走れるマイラーなのですが、日本ダービーや有馬記念を勝利した時のように、前半をゆっくりと走り後半を抜群の速さで走破する事で、中距離戦でも高いパフォーマンスを発揮しており、ガツンと速いトップスピードが武器。ピッチ走法で機動力も高く、コースの違いでパフォーマンスが落ちるという事も無いため、阪神2200mから京都2200mに変わっても力は出せると思いますが、やや阪神の方が良かった気も。ドバイターフの敗戦は馬っ気を出したモノというより、天皇賞・秋の延長で速いペースの追走で余力を失ったとするのが妥当でしょうか。定期的にポカはやらかす馬なので、自分の力が出し切れるかどうかで見た方が良さそうです。


●ジャスティンパレス

総合評価:SS+(95点)
指数評価:SS+(1位)
追走評価:S(3位)
末脚評価:SS(1位)

持ち指数は天皇賞・秋のモノで、このメンバーでは抜けてトップになりますが、これ自体はイクイノックスに引き上げられたモノで能力的にはドウデュースやプログノーシスとどっこいだと思います。まあそれでも十分チャンピオンホースですが。阪神や中山ではコーナーで動けず、後手後手に回る展開が続きましたので、京都に替わる点は大きくプラスになると思います。ルメール騎手とは高相性で、内回りの阪神大賞典や同コースの天皇賞・春も勝っていますが、どちらもコーナーでは無理をさせない騎乗をしています。ルメール騎手はコーナーで動く騎手ではありませんし、そういう意味でも有馬記念の0.4秒差は縮まる、ないし逆転もあると思います。後半も1000m単位で速く走れますし、ドウデュースより位置を取りに行けるタイプなのも魅力です。コーナーからスピードが上がるペースのレースになると末脚が不発に終わる可能性もありますが、普通に待てば良いだけなので杞憂に終わる気もしますし、ドウデュースとの比較では、総合力か爆発力か、という好みの問題な気はします。


●ブローザホーン

総合評価:90点(S+)
指数評価:S(4位)
追走評価:S(3位)
末脚評価:A+(10位)

タフなヘヴィステイヤーで、脚が遅い代わりに消耗戦では部類の強さを発揮します。前走の天皇賞・春でもそれなりに流れたペースではありましたが、ほぼ2年ぶりに上がり3F34秒台を叩き出せたように、ようやく本格化して強くなっているという印象です。菅原騎手も前走の敗因として道中の位置取りを挙げていましたし、短縮といえどドウデュースやジャスティンパレスと上がり勝負は望ましくありませんから、今回は積極的に位置を取りに行くと思われます。タフな自力勝負を刻めるようであれば上位2頭に食らいついても。道悪希望ですが、ディープボンドが苦しい流れを演出してくれれば。


●ベラジオオペラ

総合評価:90点(S+)
指数評価:S(5位)
追走評価:A++(5位)
末脚評価:S(5位)

今回、4歳馬には注目しています。大阪杯の記事で、追走限界と末脚限界を叩いた事が強くなっている要因と記載しましたが、京都記念では1キロ重いプラダリアに0.1秒先着され、大阪杯では同斤量で0.4秒先着しました。単純な字面で考えれば(1キロ=0.2秒換算で)プラダリアより0.7秒速く走る成長をしたという事。勿論10F戦のスピードレンジによる差という見方も可能ですが、ベラジオオペラ自身の指数が上り調子なのは事実です。上2頭は打点全てで上を行っているからこそのチャンピオンなのですが、もう少しの成長を見せる事があれば、新時代のチャンピオンホースの座に君臨するかもしれません。


●ローシャムパーク

総合評価:85点(S)
指数評価:S(6位)
追走評価:A(10位)
末脚評価:A++(9位)

ベラジオオペラとは真逆のタイプで、追走力や末脚の限界を叩いて強くなったというよりは、全体的な走破時計を詰めて強くなった馬です。掛かる点やゲートが速くないのはありますが、上手く流れに乗ればハマって強さが出ると思います。型にハメるには逃げるのが一番良いのですが。オールカマーでは斤量差等はありましたが、タイトルホルダーを捩じ伏せたのは立派ですし、平均スピードの落ちる距離延長はプラスに感じます。ただ、極端に上がり目があるかと言われると特性的には疑問が残る印象。


●ディープボンド

総合評価:85点(S)
指数評価:S+(3位)
追走評価:S+(1位)
末脚評価:A+(11位)

こちらは明確に逃げた方が良いタイプで、タフな流れを如何に演出するかが好走の鍵となります。労せずハナに立てるかというと疑問ですが、残り1200〜1000m付近からロングスパートを仕掛ければかなりの馬を脱落させられそうです。追走力や指数の最高打点は2022年宝塚記念のもので、パンサラッサやタイトルホルダーに引っ張られたもの。平均的な数字の打点は4〜5歳時と比べると落ちているものの、自力で消耗戦に持ち込めるようであれば、悲願達成も見えて来ると思います。


●ルージュエヴァイユ

総合評価:80点(A++)
指数評価:S(7位)
追走評価:A+(8位)
末脚評価:S+(4位)

ジャスタウェイ産駒で、牝系はデインドリームの孫というのもあり、追って味が出るタイプ。川田騎手とは手が合いそう。大阪杯の際にも述べましたが、機動力を活かすよりは大味なレースで持続力を活かすのが向いています。やや距離は長いと思いますが、末脚の重厚さはこの中でも全く見劣りしません。勝ち負けまではどうかですが、3着以内に割り込んでも良いのではと思います。


●ソールオリエンス

総合評価:80点(A++)
指数評価:A++(9位)
追走評価:A(11位)
末脚評価:S(6位)

ダービー以降は決定的な着差を付けられる敗戦が続いていますが、直線の爆発力はピカイチ。後半のロングスパートが求められる展開になると不発になるというか、ダービー以降はそういうレースが続いていた点はアンラッキーな部分。直線まで我慢が効くかどうかでしょう。今回もそういうレースになるかと言えば疑問ですが、もっと走れても良いとは思います。


●プラダリア

総合評価:80点(A++)
指数評価:A++(10位)
追走評価:A+(7位)
末脚評価:A+(12位)

京都記念ではベラジオオペラ相手に1キロ重い斤量で勝ち切っている辺り侮れないですが、日本ダービーからあまり強くなっている訳ではないんですよね。ダービーのレベルが高すぎたというのはありますが、ドウデュース、イクイノックス、ジャスティンパレスときちんと成長しての今の地位がある訳なので、やはりGⅠだと一歩足りないというイメージです。距離延長自体は良いと思います。


●シュトルーヴェ

総合評価:75点(A+)
指数評価:A+(12位)
追走評価:A(12位)
末脚評価:SS(3位)

個人的にはかなり期待している馬で、後半1000m単位で良い脚を使えます。前半をゆっくり走って後半を長く速く走るタイプのステイヤーで、ヴェラアズールやテーオーロイヤルなんかと近いタイプ。ペースが緩むのが前提条件とはなりますが、左ばかり使われている割には特段コーナリングに難がある訳でもないですし、レーン騎手なら良い塩梅で走れそうな気はします。


●カラテ

総合評価:70点(A)
指数評価:A++(8位)
追走評価:A+(9位)
末脚評価:A++(8位)

昨年の新潟大賞典で良い数字を叩きましたが、馬場やペースがマッチしたというのはありそうです。10Fの数字はそれなりに良いですが、200m伸びた途端に全く見せ場を失ってしまうので、馬齢的な面も含めて今回は様子見が妥当でしょうか。数字通りなら絡んでも良さそうですが。


●ヒートオンビート

総合評価:70点(A)
指数評価:A+(11位)
追走評価:A+(6位)
末脚評価:A++(7位)

重賞を実力で勝てるようになる頃にはすでにピークアウトしたような印象で、見せ場がありそうで無いレースが続いています。打点が上がりきらないという点からも、中々好走は難しそうなイメージです。ただ、追走も末脚もそこそこのラインでですし、そういう意味では人気以上に走れそう。


●ヤマニンサンパ

総合評価:65点(B+)
指数評価:A(13位)
追走評価:A(13位)
末脚評価:A(13位)

全ての数字がちゃんと一番下ですね。鳴尾記念自体はそこまで悪い数字ではないですし、重賞でバリバリ消すような馬でもないですが、GⅠだと流石に物足りないですね。今回のメンバーは重賞勝利ないしGⅠ連対がこの馬以外の全頭で、格というのが数字面でも現れています。


予想・買い目

先んじて印のみ掲載しておきます。馬場差も踏まえた最終稿は6/22深夜に追記予定です。

◎ブローザホーン
○ジャスティンパレス
▲ドウデュース
△ルージュエヴァイユ
☆ディープボンド


予想軸
能力40:TB30:展開40

買い目
⑫ 単勝1点
⑫-①②③④⑤⑦⑨⑩⑬ 馬連9点

2024-06-22 22:00 追記

土曜時点の馬場はまるで参考にならない程の高速度で、ここから明日の想定タイムを連想するのは至難の業です。土曜の高速度は上記の想定理想値タイムよりは1秒程度遅いという印象。基本線として、ドウデュースとジャスティンパレスの2頭で決まる可能性は中々に高いと思われます。2頭の比較としては、微々たる差ですがレースの選択肢が多いジャスティンパレスの方に分があると考えます。ドウデュースは本質的に距離がやや長く、仕掛けるタイミングがシビアになる以上は、ある程度強引でも勝負になるジャスティンパレスを上位と取ります。ただ、こちらも最内な訳ですし、現在のトラックバイアスを考慮しても、内で窮屈な競馬は避けたい所。この2頭から三連複で流すのが常套だとは思いますが、馬場悪化によるサブプランも考えたいと思います。とはいえ、2分13秒0以内での決着であれば、道悪適性以上に能力の差が顕著に出ると思います。

勝ち時計が2分13秒台にならないと難しいと思いますが、本命はブローザホーンとしました。消耗戦やロングスパート戦における耐久力は高いものがあり、そういうレースの延長として力を付けてきました。恵みの雨となるかは疑問ですが、ペースが上がり切らない以上は高速線には限度があると思いますし、遅くなる分には歓迎でしょう。2・3番手の2頭は前述の通りですが、穴としてルージュエヴァイユとディープボンドを取り上げます。2頭とも重厚な追走力・末脚を持つ馬で、持久力が求められるようなレースは期待できると思います。

4歳馬2頭には期待しており、順調な成長曲線を描いているベラジオオペラもそうですが、ダービー以降思うようなレースが出来ていないソールオリエンスにも期待したいです。ローシャムパークは逃げればもう一つ数字が上がっても良さそうですが、末脚や追走力には限度があるため高く評価しきるのは難しいです。シュトルーヴェも末脚は脅威ですが、消耗戦の耐性力に関しては疑問です。楽に後半を長く走れるなら有力でしょう。

相手を絞り切れないため、ブローザホーンの馬連の相手として広げて狙うことにします。絞ったワイドの方が良さそうではありますが、グランプリなので夢を見る事にします。ここまでご覧頂きありがとうございます。馬券の参考となれば幸いです。

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