2024エリザベス女王杯回顧〜有効牌の枚数差〜
今回はエリザベス女王杯の回顧となります。私自身も読み返して参考にするような記事を心掛けておりますので、皆さんにも今後の予想の参考となるような内容であれば幸いです。
先んじて予想稿は投稿しているため、よろしければ是非ご覧ください。
予想を軽く振り返ると
◎キミノナハマリア:11着
○レガレイラ:5着
▲ライラック:6着
△1サリエラ:7着
△2ホールネス:3着
☆ハーパー:17着
という、久し振りに大きく外す予想となりました。力関係が横並びな以上は展開を固めて予想するほか無いので、予想した真逆の展開となれば苦しかったです。馬券も当然掠りもせず。サブプランのある予想でも良かったのかもしれません。
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全体回顧・スタニングローズの勝因
予想稿では「前半1000mが59.5秒を切るようであれば消耗戦になる可能性が高い」という記載を行いました。実際の1000m通過タイムは59.6秒で、見た目上はまずまずのペースであるように見えます。しかし、コンクシェルは前半200mを少し過ぎた地点で既に先頭を奪っており、ペースダウンは3F目に入る前から行っています。とはいえ、2F目の10.6は馬場を考慮しても相当に速いタイムで、過去10年の京都開催時と比較しても最速。もう少し緩やかにスタートダッシュをさせていれば逃げ粘れていた可能性はありますね。
勝ちタイムは過去20年の京都開催でも最速。前日の古馬3勝クラスでも、定量より2キロ軽いとはいえ2000mで1:57.8のタイムが出るコンディションでした。600m~1600m区間における200m辺りの平均タイムは約12.27秒で、それなりに緩めることができているなという印象です。6~7F目における12.5-12.6は上り坂、8F目における12.0は下り坂の影響を加味すると、コンクシェル自身はペースを落とさず走っているものの、キツいペースという訳ではありません。予想稿における展望では、これより0.2秒前後200m辺りの平均のラップタイムが速いという公算でしたので、それを基に予想を固めていた分大きく外す結果となりました。
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コンクシェルが先頭に立ってから隊列は大きく動いていませんが、問題は4コーナー出口付近までそれが続いているという点。過去20年の京都開催時だと、ラスト2Fの22.7秒自体は3番目に速いタイムですが、ラスト2F目の11.1秒は最速。この区間はスタニングローズの単独走。先頭の馬がこのタイムで走っている以上後ろは届く訳がない、というのは勿論ですが、大事なのはこの組み合わせ。「4コーナー出口付近まで隊列が動かない」×「先頭の馬が過去20年でも最速のラスト2F目を走る」という点で、トップスピードに加えて加速力も求められるという状況な訳です。1秒圏内に13頭が入る接戦にもかかわらず、スタニングローズが着差を付けたのも納得が行きます。
以下に予想稿に掲載した各馬の評価一覧を着順で並び替えて再掲します。末脚値の高い馬が上位入線しているのが分かるかと。
末脚質に関しても、5F特化の末脚質を持つライラックやサリエラが掲示板に載る事ができていない訳ですから、ペースの見た目通りに最後のスピードが求められるようなレースとなった印象。
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今年のエリザベス女王杯はドウデュースが勝った2024天皇賞・秋も似た展開でしたが、直線距離が短い分こちらの方がよりタイトなスピード勝負が求められました。この展開でスタニングローズに勝てる馬は誰も居ません。モリアーナが2F特化の末脚質を持っていますが、位置取りの差で物理的に届かない状況。スタニングローズは3歳時に小回りコースの重賞を3勝している点からも明らかですが、ラスト2F勝負にもかなり強い馬。仮に同じ位置取りであったとしても同じ展開であれば殆どの他馬は勝てないです。
言ってしまえば「スタニングローズがほぼ確実に勝つような展開となった」訳ですが、勝敗を分けたのはもっと根底的な部分ではないかと推察しています。というのも、今年の出走馬はメンバー間の能力差が小さく、ほぼ全馬が「展開待ち」になるようなレースだったと思いますが、欲しい展開を取るまでの有効要素の数には差がある状況でした。分かりやすく麻雀用語で解説していきます。
例えば、レガレイラは「ペースが遅過ぎない」「極端な上がり勝負にならない」という2枚の有効牌を展開として待っています。サリエラなんて「ペースが遅過ぎない」「極端な上がり勝負にならない」「前の脚が止まる」の3枚です。それに対し、スタニングローズは「中盤が緩む」の1枚で待っている展開が来る状況でした。どの馬もペースに対してある程度の注文はつく訳で、逃げ馬への依存度「しか」展開に要求しないスタニングローズが、レース前から圧倒的に有利な状況だったのではないかと思います。勿論展開に恵まれたのは事実ですが、枠順を含めた配牌の段階で、展開(テンパイ)に対しての手順が少なかったのは純然たる部分。
実際、2F目までの23.1秒は過去20年でも2位タイのラップタイムで、スタートダッシュはかなり速い部類です。その中でもしっかりと出していって最後に加速力を見せ付けた内容は、流石にG1馬だと言わざるを得ないと思います。レースレベルはそこまで高くありませんが、着差を付けて勝った点はもっと高く評価されても良いはず。クラブ規定であと1〜2戦程度、もしくはこれで引退かと思いますが、最後に花を飾る事ができて良かったですね。今後も走るのであれば、中盤が緩むラップという前提条件がついて回ります。最近の香港カップは中盤がやや緩む印象があるので狙い目なのではと思います。
余談ですが、現5歳世代はドウデュースやイクイノックスに負けず劣らず牝馬も面白いですね。ナミュール、スタニングローズ、スターズオンアースの3強が3歳からそれぞれ引っ張る形でしたが、展開のアヤで本来の適性とはやや違うようなレースでの好走・凡走が目立ちました。グランアレグリア、ラヴズオンリーユー、クロノジェネシスは適性を突き詰めた勝ち鞍でしたが、純マイルに強いナミュールがオークスで3着に入ったり、2400mに完全適性のあるスターズオンアースが小回りコースに強かったり。3頭とも面白い馬でした。
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今回のレース、正直一番の見所は直線の攻防だったと思います。書こうと思いましたが、私はパトロールを見ながらの解説が不得手(不勉強でジョッキーの騎乗姿勢などに関して書く事が出来ません)なので、金色のマスクマン氏の解説をご覧になって頂ければと思います。こちらの方が分かりやすいですし。
全体回顧はここまで。スタニングローズ陣営、および出資者の皆様、おめでとうございます。
以下は2着以下の気になった馬について軽く短評を記載していこうと思います。
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2着馬以降の回顧
●ラヴェル
外から枠なりにレガレイラに蓋をしてしっかりと伸びてきました。スローペースで外を回せば実走距離的に不利となりやすいですが、2着をしっかりと確保しています。近走(どころか2年近く)の不振が嘘のようなパフォーマンスで、シンプルに力が無いとできない芸当。一度はリバティアイランドに土を付けた馬ですから、この激走はフロックではないです。低人気で弥生賞→皐月賞と好走したコスモキュランダ同様、本来はこれぐらい走れる馬で、それまでが力を出しきれていないと見るのが妥当線。
中盤で緩んでラストでしっかり脚を使うとなると、恐らく純12F戦のラップが適している可能性が高いため、これまでの敗戦に合点が行きます。勿論デキは良くなかったと思われるレースも多いですが。香港ヴァーズは流石に相手関係が厳しいですが、狙い目としては日経新春杯辺りが一番良いと思います。牝馬限定戦の10F重賞は全てハンデ戦で軽斤量の逃げ馬が居る都合ペース流れやすく、適さない可能性も高いです。国内路線だと結構選びそうですが、12F重賞は海外も多いですし、管理するのが矢作調教師という点でも楽しみです。あと2・3は勝てると思います。川田騎手も非常に上手く乗っていましたが、主戦は道中をソフトに乗れる騎手が理想。姉ナミュールに騎乗していましたし、武豊騎手とか良いんじゃないでしょうか。
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●ホールネス
絶対速度はギリギリでしたが、何とか3着に残しました。詰まったレガレイラや不利を受けたシンティレーションを除けば、ラスト1Fの減速幅はしっかりと抑えられている印象で、ラスト3Fにおける個別ラップタイムは11.7-11.2-11.5前後。同じく坂井瑠星騎手が騎乗するシンエンペラーとよく似ていて、最後の最後まで頑張る力が現役牝馬の中でも頭抜けていますね。位置取りの有利はありましたが、今回は展開がかなり向かない中での好走ですし、自力感も抜けていました。やはり上級戦でこそ輝くタイプだと思います。
収得賞金は加算できませんでしたがレーティングは積んだので、次走は個人的に海外転戦が見てみたいです。欧州の上級10〜12F戦がいかにもな印象。ゴドルフィンですしフランス遠征とかベストだと思います。国内の牝馬限定戦だと愛知杯のハンデが怪しいですし、9F戦だとスピードレンジ差で負けそう。自力勝負が通りやすい京都記念は好条件。なまじ脚が遅いのでラヴェルより国内戦は条件を選びそうなんですよね。国内G1の2・3着馬に国内戦が向かないだろうというのは何ともですが、2020年の1〜4着馬なんてまんま海外向きでしたし、そういう年もある事にはあるのかと。
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●シンリョクカ
元々こういうラップでも走れる馬ですが、今回は距離が長かったと思います。新潟記念より楽なペースでパフォーマンスダウンしている訳なので。4着と大きく負けてはいませんし、ラヴェルより速く軌道に乗せたという印象。リバティアイランドとガチンコ勝負してきた馬たちが続々と復活してくれるのは嬉しいですね。
今後の狙い目としては8〜10F戦なら何でも良いと思います。3Fもそれなり速く走れますし、阪神JFと日経新春杯で超激流ペースの経験値もあります。先行脚質という点を考えれば万能性が非常に高いです。あとは今の形でどれだけ鍛えるかという段階に来ているかと。ヴィクトリアマイルでも今年2着のフィアスプライドのような形で頑張れると思いますし。大きなトラブル無くこのまま進んでくれるなら先は明るいです。個人的に、木幡初也騎手を乗せ続けているというのは推せる点。
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●レガレイラ
今回は騎乗内容に関しては触れませんが、直線で受けた不利は大きく、それが無ければ2着には入っていたと思います。「一番強い競馬をした」と言われているのを見ましたが、前を走るスタニングローズに勝つには、ラスト2Fで22.1程度の走破をする必要があり現実的ではありません。レガレイラは末脚持続力に秀でた馬で一瞬の加速力がありませんし、ハードラックではあったものの勝てるレースでは無かったように思います。中盤が緩む点は問題無いにせよ、極端な上がり勝負になった時点でゲームセット。
これで4戦連続で展開負け。展開を待ってるだけなのでそれが来なければ好走だけはしていて、3〜4歳時のプログノーシスとイメージがダブります。自力差しをするような鍛え方をしていけばG1をもっと勝ってもおかしくない器。牡馬と1キロしか違わないのにシンエンペラーやサンライズジパングを完封したホープフルSは凄まじいパフォーマンスであり、チャンピオンホースまで狙える馬かと。同厩舎のチェルヴィニアには大きく水をあけられている状況ですが、課題自体は明らかなのでまた伸びてくると思います。時計の掛かる10F、ないし11F以上のレースが次走以降の狙い目となります。ギリギリ賞金が足りるので、有馬記念とか来てくれないかな…
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●ライラック
内を突いた石川騎手の判断は見事でしたが、上がり2F勝負では分が悪く6着。最後は3着ホールネスと差の無い所まで来ていますが、急加速した分最後は脚色が鈍っています。緩やかなスパートをすれば3着はあったと思いますが、スタニングローズが大きく引き離す状況でそれは無理筋でしょう。何故か年を重ねる毎に合わない展開になっており、運は3歳時に使い果たしてしまったのでしょうか。
来年以降も現役続行であれば同じく同レースでは狙えますが、そこまでに使えるレースは限られてくるよなという印象です。愛知杯なら普通に何とかなりそう。道悪も苦にしませんし、AJCCとかでも良いと思います。海外向きの脚質ではありますが、元々関西輸送が全くダメだった馬なので、海外よりは関東圏で失速率の高いレースを走るのが良いと思います。日経賞は相手関係次第。
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●サリエラ
ペースが合いませんでしたし、外からの競馬も大きなロスとなる形。前も止まりませんから昨年以上に引き離されました。何もできなかったレガレイラの未来みたいな戦績となってしまいましたが、これだけの器が重賞未勝利というのは、何とも心苦しいですね。香港ヴァーズに登録のあるラヴェル、香港カップに登録のスタニングローズと違いこちらは未登録。有馬記念も賞金が足りません。
来年のドバイSCを目標に引退のプランであれば、年明けのG2勝利は必須。AJCCか日経新春杯、京都記念以外あり得ないため、使うなら狙っていきたいです。
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●キミノナハマリア
今回の本命なので短評を記載していこうと思います。今回はスピード不足の敗戦で、正直負け過ぎの感は否めないのですが、まあある程度食い下がってはいるのかなと。思い切り流れた福島記念でダンディズムと同じ競馬ができる馬だと思っており、流れやすい牝馬限定の10F戦なら自力勝負に持ち込んでいけると思います。上がりの脚に限界があるのはさておき、今はまだ追走余力を確保できていない状況になりますから、上級戦でビシバシ揉まれて強くなって欲しいです。自力勝負を繰り返す形が理想。
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●シンティレーション
直線の不利が痛かったですが、それが無くても5着がギリギリだったのではと思います。見立て通り2200mはやや長かったですね。目覚ましい成長を見せており、クラブ規定もあって使えても数戦ですが、どういうレースに出てきても楽しみです。小脚も使える事ですし、中山記念とかも良いと思います。ドバイターフを目指して欲しいですが、選出まではやや怪しい印象。
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以上になります。引退するモリアーナはさておき、ハーパーは中々上がってきませんね。キッカケ1つだと思いますが。
総じて展開待ちの要素が殆どを占めたと思いますが、3・4歳馬は課題や今後の目標が浮き彫りになったレースだとも思います。今年の3歳馬は粒揃いで強力なので、自分の強みをどう活かすか、それに対しどう鍛えて行くかは注目していきたいです。
ここまでご覧頂きありがとうございました。皆さんの今後の予想の参考となれば幸いです。