【ドキュメンタリー#1】メルケルが残したもの 16年間の足跡
最近、テレビでドキュメンタリーの録画をみることにはまっている。
特にBSドキュメンタリーは、普段日本でぬくぬくと生きていたら絶対に感じられない、世界で起きているリアルを感じられることが多く、見ていてとても面白い。
(たまに、グロい・重い・暗いものもあるが、それらも含めてリアルが知れるので私は好きです)
そんな番組を見ていて面白かった内容をシェアしていきたい。
初回は、ドイツで16年間権力のトップに立っていた女性首相、アンゲラ・メルケル氏の軌跡を特集した回を紹介したいと思う。
日本では、安倍晋三首相の連続在任年数7.7年で最長と言われているが、その倍以上の任期をどのようなリーダーシップを発揮して率いていたのか?
特に、「多様性とリーダーシップ」について興味のある方に見ていただきたい内容になっている。
アンゲラ・メルケル元首相ってどんな人?
・1954年7月17日生
・東ドイツ出身
・父親はプロテスタント系の牧師
・元物理学者
・政治の世界に入ったのは35歳
・東西ドイツ統一時は36歳。副報道官として首相に帯同、各国を回っていた。
・ドイツ史上でも初めてとなる女性首相。16年間の長期政権を築いた。
16年ドイツの首相を務めたメルケル氏の強みと弱み
彼女は事実に基づいて話ができる冷静で中立で誠実な人。東ドイツでは、締め付けの厳しいカトリックが多い西ドイツよりも男女平等の考え方が進んでいた。政治の世界に入った後も、良い部分は積極的に取り入れていった。
国が正しく進む道に影響を与えたいという強い意思が、周囲からの信頼に繋がっていった。
そして、東西ドイツ再統一で大きな功績を残し、当時不動の地位を誇っていたコール首相を退任に追い込んだ。メルケル氏にとって恩人とも言える人をどう引きづり下ろすのか、5年間も粛々とチャンスを伺っていた。
常に冷静で賢明。それは彼女の戦略の切り札。やりたいようにさせておけばそのうち終わるというスタンス。少しずつメルケル氏はドイツ国民の信頼を得ていった。
静かにすれば救われ、信頼は力を得る。勝利するまで、彼女は男性たちの攻撃に相対した。
彼女の野心を駆り立てる理由はプロテスタントの牧師である父親の影響が大きい。勤勉・道徳・質素。穏やかで自己主張も強くない人。
一方で、ギリシャ危機の際は、判断の遅さと倫理観が裏目に出て凄まじい批判を受けた。慎重さや忍耐強さに呆れる人も。緊急事態において、慎重さが欠点となった。
かと思えば、頑なな道徳感で驚くようなスピードで決断をすることもある。東日本大震災の後はたった1日で原発廃止を決定。また、難民危機の際はドイツの国境を閉鎖しないと宣言し、100万人以上の難民を受け入れた。
ギリシャ危機の際は頑なに支援を拒否して批判を浴びていたが、コロナ禍での危機ではフランスと共同で基金を設立。大きな危機にぶつかり決断を迫られる中で、過去の失敗を生かして進化していく人だった。
そして2021年12月、16年間権力の頂点に立った人気絶頂の中で、自らの意思で首相を退任し政界を引退した。
リーダーシップの形と日本のジェンダーギャップについて思うこと
多様性のある組織(東西統一後のドイツ)を率いる場合は支配型のリーダーシップではなく、メルケルさんのように道徳観や倫理観、冷静さや忍耐強さを武器に周囲の指示を集めるリーダーシップの形もあるということを感じた。
また、メルケルさんは16年間も前から女性首相としてドイツの権力のトップに立っていて、ヨーロッパのジェンダーギャップの少なさもこのようなところに表れていると感じた。
「ジェンダー・ギャップ指数」は、「経済的参加度および機会」「教育達成度」「健康と生存」「政治的エンパワーメント」の4種類の指標を基に格差が算定されている(日本は2021年に世界153カ国中120位。)
その中でも特に低いのが「政治的エンパワーメント」の数字らしい。(国会議員数140位、立法者、高官、管理職数139位、閣僚数126位)
ちなみに「経済分野」でのランクは、賃金格差83位、労働力参加68位、所得101位。
少子高齢化社会が急速に進む日本。国のあり方を大きく左右する政治の分野で、もっともっと女性の存在感を高めていくことが国際社会に取り残されたないためにも必要であると強く感じた。