「路」
大学が春休みになり、久しぶりに小説を読もうと思い立って書店をうろうろと歩き回り、そこで立ち読みした際に惹かれて購入したのが吉田修一さんの小説、路(ルウ)です。
湿度と匂いが伝わってくる文章
情景を想像しやすく温かみのある文章が私は好きで、路を読んでいると台湾の気候や風土がひしひしと伝わってきました。私自身台湾に訪れたことはないけれど、熱帯のスコールや屋台の熱気、台湾料理の香辛料の香りなど、異国を感じさせられる文章が瑞々しくて、読んでいて心地良い。本場の台湾料理が食べてみたくなります。
路について
タイトルや各章の冒頭に出てくる台湾高速鉄道についての実際の新聞記事から、はじめは台湾を走る新幹線を設計していく建設業の話だと思っていました。
しかし、本を読み進めると路というタイトルには登場する人々の歩んできた人生という意味合いも込められているのかなー、と感じました。
登場する人々の歩む道は近づいたり離れたり、予期していなかった道であったり、あるいは道の終わりが見えたり。
印象的な春香と人豪の物語の終盤に差し掛かるシーンを読んでいて感じた2点。
起こってしまったことや起きなかったことはどうすることもできないが、その一つひとつが今の自分をつくっている
今これからの道のりをどう歩いていくかは自分で決めることができる
終わりに
3月、4月は学校や職場の人との出会いと別れの季節なので、自分が関わってきた人たちとの時間を少しでも大切に過ごそうと思わせてくれる一冊でした。