「いまさら翼といわれても」
長い春休みが明けて、新学期が始まりました。本棚を整理するために本を売って、そのお金で新たに購入した小説の2冊目が米澤穂信さんの「いまさら翼といわれても」です。
スクール×ミステリー
神山高校の古典部に所属する折木奉太郎が、学校で起きる不可解な事件や問題に巻き込まれるところから物語は始まります。
章ごとに物語が完結しているので読みやすく、それでいて読み進めていくと章と章に繋がりを感じられて面白い構成になっています。
高校生特有のシチュエーションから事件や問題が起こるのが物語の特徴です。
選挙管理委員会や漫研などなど懐かしい響き。
高校生らしい出来事をミステリーにしているのでついつい「自分はどうだったかなー」と重ね合わせながら、面白く読んでいました。
折木奉太郎
登場人物が自分の知人や友人に似ていると、親近感を抱いてしまうことがあります。
省エネ主義なところや、なんだかんだで人助けをして、それを口に出さないあたりがそっくりでその人に是非読んでほしいと思ってしまいます。
折木奉太郎の今までの生き方を示す言葉が生まれた過去についての物語が収録されています。
しかし、本の中で奉太郎はこの言葉に反して、やらなくてもいいことをやっています。
奉太郎の姉の言葉がその答えになっていると思いました。
いまさら翼といわれても
本と同じタイトルの章が、物語最後の章です。このタイトルに惹かれて購入したのですが、なぜ翼という言葉を用いたのか疑問が残ります。
千反田えるは父親に家業を継がなくてもいいと言われ、自分のこれからの進路を選択できる自由を得ます。しかし今まで家業を継ぐ覚悟を持って生きてきた彼女にとっては、その突然の告白に戸惑いと不安を感じるのは無理もないはずです。
いまさら翼があるといわれ籠から放たれても、一体どこに向かって飛べばいいのか。そんな意味合いが込められているのではないかと想像します。
「いまさら翼といわれても」を読み終えて、この本が古典部シリーズになっていることにようやく知りました。シリーズの6番目から読み始めてしまったことになります。
物語の背景になる要素は作中で丁寧に説明されているので、読んでいて全く問題はなかったのですが、シリーズの始まりである「氷菓」から読んでみたいと思いました。