友達の結婚を知った話
「結婚することになった!」
彼女からのその知らせは、死角からパンチを打たれる位、びっくりするものだった。
彼女とは大学に入学してから出会い、お互いに恋愛経験が無いことなどから、勝手に仲間意識を持っていた(卒業後も何度か顔を合わせたので、彼女も僕のことを友達だと思っている筈だ)。
当時僕たちには、「恋人」と言う存在が居た事がなかった。
普通の人ならば10代のうちに経験するだろうその経験を、20代になっても経験出来なかった。
歳を重ねる毎に、その経験が出来ない自分が、「もしかしたら普通の人とは違うのではないか?」とか、「自分には何か大きな欠陥があるのではないか?」とか僕は考えてしまっていた。
そんな僕にとって、彼女は同じ境遇で、「自分はおかしく無い(同じ様な人が他にも居る)」と思わせてくれる存在だった。
彼女と最後に会ったのは一年位前だ、20代が終わろうとしている僕らは、お互いに悩んでいる事や、仕事の話、将来の不安などについて、コメダ珈琲店で同じアイスコーヒーを飲みながら話した。
それからたった一年で、彼女は一生一緒に居られる相手を見つけて、約束までしてしまった(結婚という、「一生一緒に居ましょう」と言う約束だ)。本当に凄いと思う。どうやったらそんなに上手くいったのか教えてほしいくらいだ(今度あったら必ず聞くと思う)。
彼女から結婚の知らせを聞いて、思わず電話して「おめでとう」と伝えて電話を切った時、とっても寂しい気持ちになった。
すごろくで彼女が先に上がって、僕だけ取り残された様な寂しさを感じたのを覚えている(もちろん心の底からおめでとうと思っている)。
コメダ珈琲店では同じ所に居たのに、僕の駒は全然動いてなかったことに凄くショックを受けている。
「おめでとう」と一緒にそんな気持ちも生まれてきた事はここだけの話にしよう。
今度彼女とコメダ珈琲店に行く機会があったら、結婚生活の話を聞こう。それはそれでお互いにとってきっと良い時間になると思う。