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【2000字ドラマ】それでも、地球は動く 気づき編〜あの日、手を差し伸べてくれたのは〜

【登場人物】
遠藤 千春(17)高校三年生
押水 結衣(17)千春の親友
嶺井 涼介(17)千春の同級生

ママ 

【注釈】
*プロットは脚本形式に近い形で書いております。
*この話にリンクしている「告白編」と「サイドストーリー」を後に公開予定です。単品で楽しんでいただいても構いませんが、繋げるとテーマの「若者の日常」をより感じ取れる作品になると思います。
*人物名M「〜」のMは、モノローグで心の声を表しています。
*人物表と注釈は、字数に含めておりません。

【プロット】
○奈良・商店街
シャッターが閉まり、閑散としている。
道を歩いているのは鹿だけ。

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そう、今は緊急事態宣言中なのだ。


○千春の部屋
スマホで、NETFLIXを見ている千春。

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パラシュートが開かなくなった女を救う男。二人は、パリの上空で熱いキスを交わす。
千春、スマホを投げ飛ばす。
千春「ああ!なんて、ロマンティック。私もこういう恋がしたい」
窓から空を見上げる。
千春「明日で、緊急事態宣言解除か」

壁にはクラスメイト男子の写真が並べられ、10人の顔にバツ印が付けられている。
千春「それに、十連敗中」
ママの声「千春、会議が長引きそうだから、買い物行ってくれる?冷蔵庫が空っぽで」
千春「はーい」
ママの声「マスク、忘れずにね」

○家への帰り道
マスクを装着した千春、買い物袋を下げて歩いている。
すると、目の前に飢えた鹿が3匹現れる。

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横切ろうとするが塞がれ、困惑した表情の千春。
千春「な、なんですか?」
千春、戻ろうとすると、

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後ろにも鹿が!
千春「うそ、囲まれた!」
千春、買い物袋からハーゲンダッツを差し出すが、角で弾き飛ばされる。
千春「ううっ、私のハーゲンダッツ」
一匹の鹿が突進しきて、避けた拍子に側溝に落ちる千春。
買い物袋から割れた卵が散乱している。

鹿たちが千春を覗き込んでいる。

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絶体絶命の千春。

そのとき、

パリッ!

鹿せんべいを割る男が現れる。
男の声「(手を叩いて)こっちだ!」
周りを囲んでいた鹿たちは、退散していく。
千春「助かった……」

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千春に差し伸べられる男の手(人差し指の先に黒子)。
千春、満身創痍で手を掴む。
顔を見ようとするが、逆光で見えない。

安堵した拍子に、次第に意識が薄れる。

○公園
千春、目を覚ますと、ベンチの上。

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買い物袋を見ると、卵も新しいのに代えられている。
千春「イタタ……」
千春、腕の擦り傷を見ると、絆創膏が貼ってあることに気づく。
千春「誰がここに?」
千春M「彼は、私の守護天使、いや王子様に違いない」

○千春の部屋(夜)
千春、結衣とビデオ通話をしている。

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結衣「へー、そんなカッコいい人いたんだ。王子様の顔は見たん?」
千春「ううん。だけど、分かることが一つだけある。これが恋なんだって」
結衣「ふ〜ん。ついに千春にも春が訪れたか。意外と身近な人かもね」
千春「え?どういうこと?」
結衣「おっと、キャッチが入ったから、またねえ」
通話が切れる。
千春「結衣は、何か知ってる?」

千春、壁のクラスメイトの写真を剥がし、床に並べ出す。

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千春M「あの人は、同じ制服だった。それに、下の学年からは私服に変わったから、きっと私と同学年のはず。消去法で探そう」

嶺井の写真を持つと、マジックでバツ印をつける。

千春「嶺井は絶対に違うから、最初に消去してと」
嶺井の写真を横に掃ける。
千春「身長は175センチくらいだから」
千春、マジックで、数人の顔にバツ印をつけると、横に掃ける。
千春「声は梶裕貴似だったから……」

夜が明け……

○千春の部屋(朝)
全員の顔にバツ印がついている。
千春、椅子にもたれ天井を見上げている。目の下にはクマ。
千春「万策尽きた」

千春、椅子から転落する。頭を押さえて
千春「イテテテテ」

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千春「そういえば……まさか!」
千春、男の指に黒子があることを思い出す。

写真の山に埋もれた嶺井の写真を引きずり出す。
千春「全ての条件に当てはまって、確か人差し指の黒子。そんな……嶺井……!」
千春、驚きの表情をする。

○高校・廊下

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千春の前から嶺井がやって来る。
千春M「黒子を確認しないと」

千春、嶺井の目の前で、わざとらしく教科書を落とす。
千春「あ!やっちゃった」
嶺井、スルーしていく。
千春M「おいいいい」

○高校・教室

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座りながら、リフティングをしている嶺井。
そこへ、千春が飛沫防止パーテーション越しに現れる。

千春「上手いね。私にも教えてくんない?」
嶺井「ヤダ」

嶺井、ボールを片付けて、出ていく。
千春M「くうううう」

○高校・階段

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千春、ふらふらとした表情で歩いている。
千春M「昨日、徹夜したせいかな?頭がだんだんボーッとしてきて」
階段から落ちそうになる、千春。

千春を引き戻す嶺井。
千春「はっ!」
嶺井「危ないだろ」

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嶺井、ポケットから非接触の体温計を取り出し、千春の額に当てる。
表示は36.4度。
嶺井「熱は無いか。体調、悪そうだし、早く帰れよ」

帰ろうとする嶺井を引き止める千春。
千春、嶺井の手を握って
千春「ありがと」

千春、嶺井の指を見ると、人差し指に黒子を発見する。
嶺井、手を引き抜いて去っていく。
嶺井の後ろ姿を見て、
千春「やっぱり、私の王子様は」

○桜の舞い散る校庭

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千春、マスクを顎までズラし、大声で叫ぶ。
千春「わーーー!」
スッキリした表情の千春。

千春、拳を握り締め、校舎を見つめる。

【了】(本文:1932字)

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