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【2000字ドラマ】それでも、地球は動く Side Story〜それでも、嶺井涼介は動かない〜

★できれば、『それでも、地球は動く 気づき編〜あの日、手を差し伸べてくれたのは〜』と『それでも、地球は動く 告白編〜100回目の告白〜』を先に読んでいただけると、面白さが増すと思います。

【登場人物】
嶺井涼介(17)高校三年生
押水結衣(17)嶺井の同級生、巫女
遠藤千春(17)嶺井の想い人

友達

【注釈】
*プロットは脚本形式に近い形で書いております。
*この話の前日譚である「それでも、地球は動く 気づき編〜あの日、手を差し伸べてくれたのは〜」と、本編である「それでも、地球は動く 告白編〜100回目の告白〜」も是非お読みください。単品で楽しんでいただいても構いませんが、繋げるとテーマの「若者の日常」をより感じ取れる作品になると思います。
*人物名M「〜」は、モノローグで心の声を表しています。
*人物表と注釈は、字数に含めておりません。

↓↓↓ ★☆未読の方はこちらから☆★ ↓↓↓
1.「それでも、地球は動く 気づき編〜あの日、手を差し伸べてくれたのは〜」

2.「それでも、地球は動く 告白編〜100回目の告白〜」

 
【プロット】
○桜が咲き乱れる校庭

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○休憩時間の教室
嶺井、友達と喋りながら、華麗にリフティングをしている。

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友達「桜の木の下には、死体が埋まっているって知ってた?」
嶺井「子供じゃないんだから、怖がらないって」

嶺井のスマホ画面には、結衣からのLINEの通知。
嶺井、送られた動画ファイルを開く。
嶺井が鹿せんべいを撒く様子、側溝に落ちた千春に手を差し伸べている様子が全部映っている。

嶺井、慌てて出ていく。

○男子トイレ

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嶺井、結衣とビデオ通話している。
嶺井「押水!こんな動画をいきなり送ってきて、どういうことだよ!」
結衣「この動画、千春に見せよっかな?」
嶺井「やめろ」
結衣「あんたが、影の守護神だったとはねえ」

嶺井「影があるから光は輝き続ける。俺は影のままでいたいんだ」

結衣「ということは、光は千春?」
嶺井「いいから、早く消去してくれ」
結衣「状況が分からない?千春の王子はあんたかもしれないけど、あんたの王は私。命令には絶対服従、いい?」
嶺井「……」
結衣「千春が昼休みに行く場所があって」

○校庭

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地面は、桜の絨毯になっている。
嶺井、汗を拭いながら、箒で桜の花びらを掻き集めている。
嶺井「ったく、なんで俺がこんなことをしているんだ」

校舎から千春が出てくるのが見える。

嶺井、慌てて、掻き集めた場所に潜り込む。
千春、何も気づかず、嶺井の隠れている場所の隣に、大の字で寝転ぶ。

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桜の花びらの中に埋もれて、息を潜めている嶺井。
嶺井の手がふと、千春の手に触れる。
嶺井M「しまった!」
嶺井、顔を赤くして、シュッと手を避ける。

千春「ん?」
千春、不思議そうに一瞬見るが、気にせずスマホを取り出し、結衣とビデオ通話し始める。

嶺井M「ふう〜!助かった!」

結衣「その調子。告白のリハやろう」
千春「ここで⁉」

嶺井M「あいつ、何を?」

千春「付きあ……あっ……」

嶺井、ビクッと身体を震わす。
嶺井M「な、なんだか、モゾモゾするな……」
腹部を見ると、ムカデが身体を這っている。
嶺井「ひいっ!」
ムカデは嶺井の顔に向かって突き進んでくる。

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嶺井、口を必死に噤んで、目を瞑る。
嶺井M「動くな……俺は死体だ。決して動くな……」
嶺井、ゆっくりと目を開けると、ムカデが消えている。
嶺井M「助かった……!」

再び、ムカデが現れ、顎を這い上がってくる。
嶺井M「ぎゃああああ!」
嶺井、思い切り息を吹きかけると、ムカデは飛んで行き、練習している千春の横を通り過ぎて行く。
嶺井「はあ……はあ……」
嶺井M「疲れた」

千春「つ、どつき合ってください!」
結衣「ど突き合ったらダメでしょうが」
嶺井、クスッと笑う。

千春、声を枯らしながら練習し続けている。

嶺井M「馬鹿だな……こんな俺のために必死に練習して」

千春「嶺井くん、私と付き合ってください!」
結衣「お疲れ、ようやくだね」


強く風が吹きつけると、桜の花びらが舞い上がり、嶺井の手が露わになる。
千春「きゃあ!」
千春、腰を抜かす。

嶺井M「バレたなら、仕方ないか」
嶺井、桜の絨毯の中から現れる。

千春「み、嶺井くん!」
嶺井「よお」
千春「もしかして聞いてた?」
嶺井M「聞いてないって言うか……。いや、これ以上、嘘を重ねるのは嫌だ」
嶺井「99回目の付き合ってくださいまで」

千春、愕然と地面に手をつき
千春「全部、聞かれていた」
嶺井「で、100回目は?」
千春「嶺井くん……だめ、言えない!」
嶺井M「俺が助け舟を出さないと」
嶺井「99回も練習したのに、その程度?」
千春「え?」
嶺井「だから、今までの練習は無駄だったのかって聞いてるんだよ」
千春「できるもん」
嶺井「なら、やれよ」

嶺井M「しまった、言い過ぎたか」

千春、深呼吸をする。
千春「嶺井くん、私と付き合ってください!」
千春、目を瞑りながら、お辞儀をして、片手を突き出す。

嶺井、千春の手を握って
嶺井「こんな面倒臭い俺だけど、よろしくな、千春」
千春「ありがとう、……涼介」

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チャイムが鳴り響く。
嶺井「やばい」
嶺井、千春に手を差し出す。
嶺井M「これからは正正堂堂、守護神としてお前を守る」
千春、嶺井の顔を見て手を掴むと一緒に駆け出す。

○神社(夕)

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くじを恐る恐る開く千春。
千春「……!」
嶺井「どうした?また凶?」

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嶺井、覗くと大吉のくじ。
嶺井「おお!大当たりじゃん」
千春「結衣、疑ってごめんね」

社務所の結衣に、ウインクする嶺井。
結衣、サムズアップのポーズをする。

千春「涼介のは?」
嶺井「いいよ、俺のは気にしなくて」
嶺井、咄嗟におみくじを背後に隠す。

千春「お互い隠し事無しって約束したじゃん。見せて!」
千春、嶺井のくじを取り上げると、大凶。
千春「ぷっ!はははは!」
嶺井「おいおい、そんなに笑うなよ」
千春「だって、大凶は初めて見たもん」
嶺井「凶確定ガチャだって」
千春「凶ばかりだけど、大凶は出たことない」
嶺井「なんだそれ」
千春の笑っている顔を見て、嶺井も笑顔になる。

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嶺井と千春が仲睦まじく歩いている。
二人の後ろ姿を見ている、結衣。
結衣「こんな時代でも、地球は動く」
社務所には、『学問の神様』という掲示がある。結衣、満足そうに、その掲示の下に『縁結びの神様、始めました』の貼り紙を貼る。

【了】(本文:2098文字)

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