「フォークダンス?」
※この物語はフィクションですが、若干実話な気もしています。
「じゃあ、私と踊ろうよ!」
私の耳に届かなかったセリフだ。
今から約10年前、私の通っていた高校では、体育祭においてフォークダンス?のようなプログラムがあり、その相手探しで、私の高校の同級生達(主にバカな男子)は皆浮き足立っていた。
そのフォークダンス?と言うのは高校3年生だけの行事であり、高校2年生の時に踊る先輩たちを見て、ああ、、、来年否応無しに誰かを誘わないといけない・・・と言う気持ちにさせられたのである。
私はその当時かなりスカした男であり、どうしよう・・・と心の中では不安に思いながらも、皆の前では気恥ずかしさがあり、「そっか、そんなのあんのか。。。全く気にしてませんけど・・・」みたいな態度をとっていた。
ここで私のプチ情報を一つ。
私は、ルックス的には下から数えたほうが圧倒的に早いが、勉強はそこそこにでき、運動もそこそこにできるタイプだった。
友人Aが私に告げる。
「なあ?是津君よ。ダンス踊る相手決まってるのか?」
私は思った。予定通りだ。そんな質問。
「あ?なんのことだよ?」と私はとぼける。
すると友人Aや周りにいた友人たちが
「例のダンスに決まってんだろ?C組のやつあの娘と踊るんだって」
「なんだよそれ!!いいなぁ・・・」「絶対赦さねぇ!!」「ああ、なんか可愛い女の子転校してきて俺誘ってくんないかなぁ」
と賑やかに語り始めた。
私は、相変わらずスカした調子で、奴らの会話を適当に聞き流していた。
その日の夜。
私は真剣に考えた。
「〇〇ちゃんは、あいつの彼女だろ?揉めたくないし、、、」「▲▲ちゃんに声かけたら、あいつにぶっ飛ばされそうだな・・・」「□□ちゃんは、、俺のこと人間とは思ってないだろ・・・」
などなど、受験生にも関わらず、その日は数学の問題を一つも解かずに、「B子ちゃんしかいない!」と思い当たった。
B子ちゃんは教師や周囲の生徒からの評価は高いものの、若干、内気な印象で、且つ、クールな雰囲気を身に纏っていたため、皆びびって声をかけづらくなっている・・・と勝手に思った。「競争相手がいなけりゃ、OKもらえるかもしれない!!」という、全く根拠のない解を導き出し、その日は床についた。
次の日、学校に登校すると、C子ちゃんとD子ちゃんがいた。
私は朝早くに登校し、図書室で物理の問題集を解くと言う習慣が身についており、基本的に教室に着いた時には誰もいないのが通例だったのだが、その日は違った。
隣の席の大人気女子、C子ちゃんと、真面目な女の子D子ちゃんが教室に既にきて、教科書を出して、勉強しようとしていた。
D子ちゃんがいるのには全く驚かなかったのだが、なぜ?C子ちゃんがいるんだ?と私は思った。
「おはよう!」と爽やかな声でC子ちゃんが挨拶をしてきた。
「ああ、どうも」とスカして返す。
「何それwwwおじさんみたい。」とC子ちゃん。
全然面白くないと思うかもしれないが、彼女とはいつもこんな調子で会話していた。
C子ちゃんとは当時、席替えで隣の席になることが多くあり、結構話す機会があった。そんなに嫌われていないだろうと言う自負はあったのだが、そのフォークダンスにC子ちゃんを誘おうなどというのは、微塵も考えていなかった。
理由は、競争相手が多く、私のような下賎な民など歯牙にも掛けないだろう・・・と、読んだためであった。
C子ちゃんが私に話しかける。
「ねぇ?ダンスの相手決まったの?」
私はスカして答える。
「決まってりゃあ、もうちっと気持ちに余裕ができてるから、スキップして教室に入ってきてるよ」
続けて、私は「俺のために、B子ちゃん誘ってくれないか?」といった。
同時に「ええっ!!」という声が響き渡った。
声の主はD子ちゃんだった。
ん・・・?と私は不思議に思いながらも、勉強しないと!!と思い、図書室へと急いだ。
その後ホームルームのために教室に戻ると、いつものC子ちゃんの様子ではない。冗談を言っても全く響かない。気まずそうに微笑むだけだった・・・。私は思った。これは何かとんでもない地雷を踏んでしまったのかもしれないと・・・。
しかし、1日経つと、その気まずさも、過ぎ去り、いつものような日常が戻ってきた。
私のダンスの相手は無事、B子ちゃんに決まり、心から受験勉強に専念することができた。
1ヶ月後・・・
このフォークダンス?という行事。相手が当然決まらない場合が当然出てくる。その場合どうなるって?もちろん「アミダクジ」だ!
このアミダクジ、選択ではなく、無作為で決定してしまうので、避けたいという気持ちになるのはもちろんだ。
しかし、もっと嫌なのは、このアミダクジ、3年の皆んなの前で行われることだ。「見世物になるのは嫌だ!」という私のような連中が全力で女性を誘おうとしていたのがほとんどだったように思う。
アミダクジ実行委員(私が勝手につけた。)が全員に声をかける。決まってるやつ左にいけ!私は左に移動する。
アミダクジ実行委員「おい、是津くんよ。君はそっちじゃないだろ?」
私「ばか言ってんじゃねぇ。こっちは決まってんだよ!」
周囲にざわめき・・・「え?是津、決まってんのかよ・・・」「是津と踊るってwww」
本当にこんなことを言われていたのかは定かではないが、相当に驚かれたのは事実だ。
私は思った。私はそんなに騒がれるほど外見が醜いか。いや、内面は外見以上に相当に醜いと思うけど、いや、外見超えるほど内面が醜くいことを自分で認めたら救いようがないし・・・などぐるぐるぐるぐるくだらないことを考えていた。
その時、同じクラスのおしゃべり女がそこそこの声量で
「あっ!C子ちゃんだよ。是津を誘うって言ってたからさぁ」と言った。
私は思わず、腰が抜けそうだった。いや抜けてたかもしれない。
しかし、いや、そんなわけないと・・・その時、1ヶ月前のある朝の場面がフラッシュバックしてきた。
私が「B子ちゃん誘ってよ!」と言った瞬間。
C子ちゃんは、同時に「じゃあ、私と踊ろうよ!」と言っていたのではないか・・・だから、D子ちゃんは驚いたのでは、ないか・・・そう考えると、震えが止まらない。
10年以上経った今でも、時々考える。なぜ、あの距離で声が届かなかったのだろう・・・。と。
最近になって結論が出た。そんなことある訳ないと勝手に決めつけていて、自分がしなきゃならないことにしか目が向いていなかったからなのだと。
とまぁ、格好をつけましたが。まだ私も、日によってこのエピソードの解釈は変わるけれど、でも、まあ、前向きに捉えて生きていきたい。