見出し画像

どっちが大事かを考える

プロジェクトを進行するうえで、取捨選択の判断はつきものです。ひとつの目的に向かって突き進むにしても、あれやこれやとなんでも最優先にすることはできません

インセプションデッキのなかの問いのひとつに、「何を諦めるのかをはっきりさせる」というものがあります。

トレードオフ・スライダーというテンプレートを用いて、関係者で認識を合わせるものですが、これに取り掛かるタイミングが重要だ、というお話です。

「何を諦めるのかをはっきりさせる」

プロジェクトは一般的に、達成したい目的に向かって予算を確保して取り組む、有期的な計画、およびその計画を遂行する業務を指します。

つまり、品質(Quality)、コスト(Cost)、リリース日(Delivery)、要件(Scope)といった基本的な4つの要素 "QCDS" が重要になります。

リリース日が近付いているにもかかわらず、求められる品質が伴わず、追加コストをかけて対応した、という経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

これはリリース日と品質の方が、コストよりも重要だった、ということですね。もちろん、土壇場の判断では、現場の納得感は薄く、疲弊するだけです。判断の都度、なにが優先されるか変わっていては、プロジェクトの進行そのものもふらふらしてしまいます。

よってもって、プロジェクト進行中の判断軸となるような優先順位をあらかじめ合意しておく必要があります。

トレードオフ・スライダー

そこで、インセプションデッキで用意されているテンプレートにトレードオフ・スライダーというものがあります。

トレードオフ・スライダー
(もともとは、スライドボリュームのノブが各軸ごとに並んでいるテンプレートです)

QCDSの4項目の軸と、プロジェクトの特性に応じた軸を自由に追加することができます。
その各軸について、スライドボリュームのノブをつまんで動かすように(図では、赤い丸を配置することで)、プロジェクトの中での優先度を可視化します。

ここでポイントになるのは、「同じ優先度には置けない」ということです。必ず、どちらが相対的に優先されるか、を決める必要があります。

「コストはなるべく安く!納期は絶対死守!品質も機能ももちろん揃えきって!」という無理難題に対して、苦しい未来にならないようにトレードオフ・スライダーで合意するので、「全部最優先!」ということは許されません。

いつ準備するか

さて、トレードオフ・スライダーをいつ準備するか、です。インセプションデッキはプロジェクト開始時につくるものなので、もちろんここで取り扱うことになりますが、そのなかでの順番という意味です。

インセプションデッキの10個の問いのうち、トレードオフ・スライダーは9番目に書いてあります。もちろん、この記載順が作成順という取り決めはないですが、インセプションデッキの後半で作成されることが多いと思います。

ところが、インセプションデッキの他の要素を整える際に、プロジェクト内の優先度次第、となり、決められないケースもあります。

「やらないことリスト」を洗い出そうとしていても、プロジェクト期間でなにを優先するか、が不明瞭だとやる/やらないの判断ができない

「期間を明確にする」で線表をつくろうにも、いつまでにどの対応をするべきか決めきれない

スプリント1を始める前に、スプリントゼロの期間でこのあたりを整えるかと思いますが、このスプリントゼロの期間をどれだけかけるか、もトレードオフになりますよね。

テンプレートだけど、それる勇気

インセプションデッキは、プロジェクトに必要な情報を整理するための強力なテンプレートです。

テンプレートであるため、誰でも、いつでも、簡単に(向き合う内容は難しいですが)扱うことができます。

なので、不慣れな場合は、作成する順番も、テンプレートどおりに進めることを基本とすることが多いでしょう。

ですが、プロジェクトのなにかが決められない、となったときは、先に判断軸を明らかにする取り組みをしても良いかもしれませんね。


いいなと思ったら応援しよう!