あえて、言葉にする
こちらは、私の所属する株式会社レッドジャーニーのアドベントカレンダー12日目の記事となります。
昨日は、侍れっどさんによる、予防型プロジェクトマネジメントのお話でした。事後に慌てる火消しのようなマネジメントではなく、予防型でプロジェクトをマネージするために計画を立てるポイントがまとめられていました!
興味のある方はぜひ!
本編
アジャイルプロジェクトに限らずですが、チームで働くうえで「言語化」はとても大事な要素です。特にアジャイルでは「透明性」を高められるような取り組みをすすんで行っていくため、あらゆる場面で「言語化」というキーワードを聞くことがあります。
「言語化」をすることで、誤解なく、共通認識をつくりながら前に進むことができるようになります。また、なにかに迷ったときには立ち返る先にもなります。
プロジェクトの目的や制約をあらわす「インセプションデッキ」や、チームが今立てているあらゆる側面の仮説を示した「仮説キャンバス」とも、「言語化」したもののひとつですよね。
タスクはどうなったら終わりか?
「言語化」はプロジェクトのあらゆるところで必要になります。日常レベルに落とし込んでみましょう。
大きな目的・目標のために計画を立てる。マイルストーンを表現し、中間ゴールを見立てる。それに向けてスプリントを運営し、スプリントゴールを策定し、スプリントバックログを選択する。すると、日常で取り組むバックログアイテム、ひいてはタスクまで粒度は細かいものになります。
あるタスクが、なんのためにやるものなのか、どうなっていたら終わりか、このあたりの認識があいまいなまま進むと、そのタスクで実現したかったことを誤る可能性があります。
そのために、タスクについては「How?」はメンバーに任せますが、「Why?」と「What?」の目線を合わせる「言語化」が重要ではないかと思います。
「Why?」とは
「なぜこのタスクをやるべきか」「このタスクを行ったことでもたらされる価値はなにか」といった、タスクの目的です。
もちろん、スプリントゴールを達成するために用意されたタスクなので、大外しはしないでしょう。スプリントバックログに組み込まれているものなので、優先順位もついているものでしょう。
しかしながら、たとえば開発機能の場合、「価値」まで考慮すると、実装方式として、その先につながりそうな拡張を見越した方法を選択する、というケースもあり得ます。
つまり、「このタスクは、なんのために行うタスクなのか」を意識することで取り組み方も変わることがあります。
また、先述の通り優先順位はすでについているものの、なにかしらの事情で優先度を変更しなければならなくなった際には、「価値」を基準に優先度を判断することもできます。「どちらかひとつの優先度を下げなければならないときに、こちらがよりスプリントゴールに直結する」といった判断です。
ここがずれてしまうと、せっかくタスクをこなしても、やっただけ、になってしまいかねません。
「What?」とは
タスクとして取り組むこと (やること) は通常、タスクのタイトルとして表現されますよね。
では、どこまでやればよいか。ここで認識の齟齬が起きる可能性があります。
「まずはいったんやってみる」なのか「レビューまで含める」なのか、「関係者に周知を行う」までなのか。もちろん、タスクを分割すれば良いこともあるかもしれません。それ以上に細かい度合いはどう表現すれば良いでしょうか。
そういった度合いは、「受け入れ条件」として設定しましょう。
「どうしたらこのタスクは完了といえるのか」という完了状態をあえて「言語化」し、共通認識とします。
タスクとしてやることだけではなく、「受け入れ条件」も合意することが「ここまでやらないといけなかった」「そこまではやらなくてよかったよ」というすれ違いを防ぐことができます。
「やってみないと、その先の進め方がわからない」というようなものも、進め方の分岐点になるところまでを条件に設定し、そのあとのタスクに分ける判断ポイントをつくる、ということもできるようになります。
言葉にして残す
これらのタスクについては、スプリントプランニングやバックログリファインメントで話されることが多いと思います。
タスクについて、タスクを追加した人が「どんな内容か」を一方的に口頭で説明するのではなく、「言語化」されたものはタスクのメモに残しておくのがよいでしょう。
特に、「Why?」「What?」は、口頭で説明があってもメモを取りそびれてしまうと、いざタスクに取り組んだときに忘れてしまっていることもありえます。都度確認することになると、タスクが止まったり、聞かれる方の手も止まってしまいます。
また、やることについてだけ説明があっても、「Why?」や「What?」について言及がなかったときには、メンバー相互に質問し、明確になるまでディスカッションをしましょう。
このディスカッションを進めていると、メンバーのこだわりが出てきて意見が衝突してしまうことがあるかもしれません。ですが、それこそが大事な時間となり得るのだと思います。
もし、この衝突がなければ、「あとから気づいたらずれていた」ということが起きていた、ということですから。
もちろん、チームの成熟度合いや意思疎通具合によっては、すべてを書ききる必要はないですよね。「そんなことわかっているよ」が、本当に全員の共通認識になっているなら、冗長になるだけです (本当に全員の共通認識になっているなら、ですが)。
そうでないなら、あえて、言葉にしましょう。
重要なのは認識のずれなく、本来の目的を達成できるよう、タスクを進めることです。