その一瞬を撮りたい(1)
今でこそ応援している人の姿を撮るために全国を駆けずり回っているが、そうなったのはここ数年の話。それまではカープやサンフレの試合をGWや盆、余裕がある時にフラッと年に1~2回関東あたりに見に行くことがあるかないかの人間だった。
もともと島根・松江で育った私は、身近にスポーツがある環境ではなかった。地理的な要因や親がカープファンだったことから、野球はカープ・サッカーはサンフレと自認こそしてはいたものの、田舎の少年は頻繁に観戦に行くことも叶わず、身近にプロスポーツがある環境に憧れていた。
大学進学に際して、実家からもそう離れず憧れのカープやサンフレが身近にある環境から広島の大学と決めていた。
実際のところ大学に進んでからは、友達とあてもない日常を過ごすことにかまけて、そこまで頻繁に球場やスタジアムに通ったわけでもなかった。
だが、やはり思い立ってすぐ試合を見に行ける環境というのは格別で、気が向けば原付を走らせては旧広島市民球場へ赴きメガホン片手に日々の応援を楽しんでいた。
この頃は手元にあったコンデジや当時まだ主流だったガラケーで、球場の雰囲気をなんとなく撮っているだけだった。でも撮っておくというのは重要で、今見返してもあの頃の情景が思い出される貴重な写真だ。
その後就職し、広島で過ごしながら(一時徳山に3ヶ月ほど住んだが)スポーツが身近にある環境でなんとなく過ごしていた。
この頃まだハンドボールのことは知らない。いや、知ってはいたが、中東の笛で注目されたときに「そんなことがあったのか」と思った程度だったり、たまにローカルのテレビで広島メイプルレッズが出てきたり、そんな程度で名前は知ってはいるが自分の世界にあるスポーツではなかった。
ちなみに、高校へ入学した時最初の部活見学でハンドボール部を見に行ったのは覚えている。結局入部はせず、その高校もすぐに辞めてしまったので縁はなかったのだが、あの時入部していたらどんな人生だったのだろう。今は知る由もないが。
カープやサンフレッチェを応援していく中で、Twitterを使って試合の実況などよくしていたが、その流れでタイムラインによくファンが撮った素敵な写真が流れてきていた。写真への仄かな憧れが芽生えたのはこの頃。当時は写真を撮る機械はスマホや埃をかぶったコンデジだけだったので、自分には撮れないものと思っていたが、いつかカメラを手に入れたらあんな写真を撮ってみたいなと心のどこかで思っていた。
2017年、盆。実家に帰っていつも通りのんべんだらりと過ごしていると、父親が「カメラを買ったが使ってない。使うならあげるけど、どう?」と聞いてきた。
今思えば第一のターニングポイント。二つ返事で「いる、いる」と返し、ラッキーパンチでカメラを手に入れた。SONY α6000ダブルズームキット。
決して高性能なカメラではないが、世界が変わった。
早速広島に帰り、マツダスタジアムに持っていく。
当時はカメラのことなんてよく知らない。実はちょうどこの頃、仕事でカメラのことを覚えろと急かされてはいたのだが、なんだか難解な気がして乗り気ではなかったし、大して調べずにもいた。
だが初心者でも扱いやすいよう設計されたカメラは屋外ならオートでもある程度綺麗に撮ってくれる。大好きなスポーツの世界を、レンズを通して切り取ることが楽しくなった。