父が探している~わたしの祖母の物語⑤
妾しが心配な祖母は小樽の家を売り、叔父を呼んで東三丁目に床屋の店を出してそこで暮らす事に成り、妾しが七才になった時、警察から捜索願いが東京の石坂幸益と云ふ人からだと○○でした。
秋田で母と妾しをおいて大學にもどつた父は、母一人子一人の人でした。
卒業して本所、柳島、柳島病院の院長と成った父は妾達をさがしましたが、秋田から北海道にわたり、又、野付牛に来たのでわからなかったのです。
また其の後も度々の話しにも女の人をむかいによこして○祖母は「何も不自由はさしてゐません。學校を出る迄はだれにもわたしません」の一てんばりでした。
八才になり入学しましたが、体が悪かったので半年くらいで又入院しました。祖母は運動のためにと、三味線と踊のけこに通わしてくれました。
其の頃祖父は梅乃屋といふ料理屋を建てゐました。
一年おくれ九才に成った妾は學校に行きました。
それからは東京の三ツ○しからは着物やハカマが送って来ました。
父が送りくれたのでした。
其の頃楯身の父は、神社の下に盛楽館と云ふ劇場を弟の来蔵夫婦にやらして居ました。
来蔵にも先妻の子が二人と今の妻の子が二人居ます。
父方の祖父は朝おきると三味線を手にトキワズを口にするのが日果です。
ある日野付牛にも相撲がくる事に成り、町は大さわぎです。
祖母と駅に行き、小さな妾が一番前に出て見てゐると、大きな相撲がひよいと抱き上げてあるきだしました。
〇みと云ふ果子店で、あんのはいった餅をたくさん買ってくれ、家はどこかときくので、すぐそばの床屋を指さすと叔父の家の前でおろしていってしまいました。
横つなで梅ケ谷とヒタチ山の方だったそうです。
相撲にだいてもらって上部になると祖母は大喜びでした。
※ほぼ原文ママ。
※句読点は読みやすさを考慮して追加。
※写真はイメージ。
【登場人物】
妾し(幸子):この物語の主人公。T.Yamazakiの祖母
ノヱ(小野ノヱ):幸子の母。
楯身(楯身友蔵):幸子の養父。
小野康太郎:幸子の祖父。
ノブ(小野ノブ):幸子の祖母。
武士(小野武士):幸子の叔父、ノヱの弟。