小樽にやってきた~わたしの祖母の物語②
小樽におちついた祖父は、築港の仕事にかり、はたらく人が方々からあつめられて来ました。
其の人々の中に、野付牛(今の北見)から来た楯身友蔵と云ふ若者がゐました。
友蔵は、野付牛で〇玉と云ふ大きな工場の小分でした。
祖母と母は大ぜいの食事の仕たくをし、弟の武士は床屋に弟子入りをし、妾もすくすくと大きくなり、四才になったある日、突然妾しが見えなくなりました。
家は水産學校の下にありましたので、妾はいつも學校のまわりで遊んで居たのです。
母は食事もノドに通らず、くる日もくる日もさがしまわるうち、かきねの有るりつぱな家の中より、妾しの泣く声が聞こえてきました。
中にわ、きれいな着物をきせられ、御人形を持った妾が泣いてゐたそうです。
母は見るなり、着物をぬがせ自分のハヲリでくるみ、妾しをだきかゝへて家に帰りました。
其の後、又、外に居たはずの妾が見えなくなりました。
こんどは警察と支那人が妾をつれて来ました。
警察にとゞけたのでさがしてくれたところ、支那人と遊んで居るうち、あまり可愛らしいので自分の子供として國へつれて行く所だったそうです。
※ほぼ原文ママ。
※句読点は読みやすさを考慮して追加。
※写真はイメージ。
【登場人物】
妾し(幸子):この物語の主人公。T.Yamazakiの祖母
ノヱ(小野ノヱ):幸子の母。
小野康太郎:幸子の祖父。
ノブ(小野ノブ):幸子の祖母。
武士(小野武士):幸子の叔父、ノヱの弟。