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教授と1週間デンマークへクルージングに行った時の話

この時期にヨットクルーザーでデンマークに行かないのは3年ぶりだ。ドイツ留学での恩師ヘルムート・エルプ先生はバルト海に面したドイツ北端の街にヨットクルーザーを持っていて、毎年クルージングへ連れて行ってくれた。

門下に入る一年前にも旅行に誘ってくれ、それがあったおかげで先生の教授最後の1年に習うことができた。2019年と2018年の写真を両方とも貼っていく。

ドイツの港町

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ドイツは知っての通り内陸の国で魚はほとんど食べない国だが、唯一バルト海だけはある。ハンブルクやキール、ロストック、そしてこのカッペルンなどがその海に面した港町だ。

北ドイツは南の雰囲気とは大きく異なり、建築や食べ物、言葉などまるで別の国のようである。あくまでドイツは連邦なのだなと実感した。

先生がお住まいのシュパイヤーという南西ドイツの街から一緒に車で8時間ほどかけて行った。残念ながらドイツでは運転できないから74歳の先生にアウトバーンを運転させてしまいとても心苦しかった。そこでも色んな話をした。

ヨットクルージング

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逗子という海辺の街で育ったが、ヨットはおろかウィンドサーフィンもやったことがなかった。ヨット旅行と聞いて少し不安だったがモーターもついているクルーザーだった。

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1週間分の食料を買い込んで、伴奏助手の日本人の先生と3人で出発。

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カッペルンは巨大な入り江のようになっているから港をでてから完全に海に出るまでにも30分以上はかかる。エンジンをつかいながら自分も操縦させてもらったりしつつ進む。ちなみにエンジンは日本製。

先生は当然、終始風向きのことと進路のことだけを考えているから船長という感じになる。トランペットの先生ではなく。

海にでる途中にも多くの船とすれ違い、みんな本当に楽しそうにしている。ドイツ人にとって海がいかに非日常なのかよく感じた。海辺で育ってきた自分にはなんだか不思議な気分だったが、日本の海とは随分違うものだから同じように新鮮で楽しかった。

バルト海は波も風もなく退屈に思えるほどに静かだった。風のないときはほぼ無音になる。視界に入るのも水平線だけ。

「ここで楽器のことや普段の人間関係などあらゆること忘れ心をリフレッシュできる」

先生はいった。港をでてから北上していき、デンマークの小さな島につく。

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本当に何も雑念がないような怖いくらいにクリーンな空間。ゲームの世界のようだった。ゴミもまるで落ちていないしこんなところで生まれ育ったらどんな人間になるのだろう。

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この時期は白夜とまではいかないものの、かなり日が長かった。23時頃まで明るくて空は不思議な色になった。これも非現実的な景色で、常に静寂のなかにあった。

幸運なことに、いつも天気が良く外で楽器を吹くこともできた。

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先生が常にきいているところで1週間練習する

先生のレッスンはいつも突如に始まった。

「ロングトーンするぞ!!」

といい先生は引き出しからマウスピースとポケットトランペットを取り出す。

そこから5分から10分濃密なレッスンをしてくださった。先生のおっしゃる奏法の理論は自分にとって今までで一番わかりやすく納得のいくものだった。

初めてクルージングにいきレッスンを受けた時にその10分間で上達した。もしくは上達へのヒントがもらえた。

「吹いてろ!」

と言われて船の上でロングトーンや曲を練習することもあった。しばらく何も言われないが少し気を抜くと先生が飛んできて助言をくださる。

つまり毎日1~2時間ほどの練習時間でも、全て先生の耳に入っているという恐ろしくも贅沢な環境だった。そして時々アドバイスをくださる。

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3人での写真

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デンマークの焼けるような夕日は本当にきれいだった。

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帆走で程よい風があるとすごい爽快感

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デンマークの砂浜。

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パイプ体験。先生の海賊感すごかった。

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この港に着いたとき、デンマーク人の漁師っぽい人が船を停めるを手伝ってくれたのだがドイツ国旗を見るなり”Arbeits Machts frei!"とナチスのスローガンを言ってきた。先生は”ははは、時々ね”と返していたがドイツへの嫌悪感は本当に根深いと改めて感じた。

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デンマークの自然はほんとうに穏やかで癒された。

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先生から学んだこと

先生はトランペットの技術も音楽はもちろん、それ以上に「学ぶことの大切さと楽しさ」を教えてくださった。

毎日先生と一日中話を聞いたり議論をするうち、様々なことに興味を持って学ぶこと、知ることが人生をどれだけ豊かにするかを知ることができた。ヨーロッパの歴史や宗教についても自分は本当に無知だと思ったし、もっと知りたい、勉強したい。と前にもまして思うようになった。

土台となる知識や教養があって初めてその先の世界を知ることができるし、色んな人と話すことができる。もっと多くのことを知れば、それだけ楽しくなるだろう。

また先生とクルージングに行くまでに1冊でも多く本を読んでまたおもしろい議論ができるようにしておきたい。

旅行した時の動画↓


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齋藤友亨 Tomoyuki Saito
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