いろんな、人生
「思ったより平凡な人生だな、って。
なんか前はあったのに何か失った感じがして、
すごく淋しく思ったんだ。」 ああ、それだ。
わたしが探していた言葉は、それだ。
あまりに自分のこころに
ポツンポツンと
独り言のように湧いてくる
言葉にまだなっていない感情みたいなものを
彼女があまりに一字一句言い当ててしまったので
わたしはどきっとした。 ”平凡な人生“
平凡ってなんだろう? ”特別な人生“
特別って、なんだろう?
彼女は
学生時代から
わたしを知っている。
そしてわたしも同じように知っている。
大きな決断を迫られていた時、
頭が破裂しそうで、
自分の判断基準もなにもかも、
わからなくなるくらい考えていた末、
助けを求めて電話してしまったのも、
彼女だった。
いいところも、隠したいところも、
知っている、
自分と似てる部分より
違っている部分が多い彼女。
互いに異なるものを持っているのに、
根幹で大事にしたいものが似ている
数少ない彼女。 「なんかいつも必死で苦しそうだったよね。
“突き抜けたい”が口癖みたいになってて、
いつも何かに悩んでた。
でもそういう向上心みたいなのって、
わたしにはなかったから、
すごいなぁって思ってたよ。
いまは穏やかになった。
結構、趣味も違うし、
会って何話すのかなぁって思うんだけど、
会うと今まで会ってなかったのを感じさせないんだよね。
気づくと沢山話しちゃって、
こういう友だちって
大人になると意外といなくて、
本当に有難い。
いつもありがとう。」 「こちらこそ、本当にいつもありがとう。」 久々にいつも連絡を取り合うから、
互いのLINEメッセージは、
”ありがとう“
が溢れてる。 “なにか、なにか、
すごい大事ななにかを
気づいたらどこかで
失ってしまった気がする”
はっと気づかされた時には、
その心の内のもの、
たしかにあった
泉みたいに流れ出たり、
溢れ出たりするものを
また探そうとする自分よりも、
ああ、どこかに行ってしまったんだ、
って見ている自分が
いまは近くて、
と同時に、
それは失われたかもしてないけど、
代わりに手にしたものがある、
とふっと思う。
いまの日常のなかにある
“日常になったもの”、
言い換えたら、
それらの幸せが物語っている。
何かが満たされたんだと思う。
言葉にすると簡単で、
でもほんとはきっと思ってるより
少し深くて、すこし複雑なもの。
それなのに、
どこかまた、いつあの泉が湧きだすだろうと
淡い期待を抱く自分も捨てきれず、
いまはきっとそういう時なのだ、
と前向きな現実逃避をしたりもする。
そうやって自分を騙してみたり、
いやそういうものだよ、って励ましたりもしながら
いまを生きていく。 「“平凡な人生“って思いながら、
その平凡が、いかに大変で、
みんなよく生きてるんだなぁって思うんだ。
そしてそれがいかにありがたいかって。」 って
気づいたら4時間も経っていた
あの温かいけど透明感のある空気感を思い出す。
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