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新聞社で「EVトラクター」を作ってみた!3

【前回はコチラ】

という訳で2024年5月、苦労の末にプロトタイプ機「電農トラちゃん」が完成した。

EVトラクターのプロトタイプ機「電農トラちゃん」

本邦初公開の動画は、コチラでぜひご覧いただきたい。
カチカチの休耕田を、ちゃんと電気で耕せているのが分かるだろうか。これまで多くの人とEVトラクターについて話してきたが、「ホントにできるの?」とどこか信用されてなかった所がある。なんとか形にすることで見事に証明できた。うれしかったというより正直ホッとした。

「考えた」は、何もやってないのと同じ。だから形にしてみせた

これはTEDxHimiの時にも紹介した話だが、「いろんな課題に対して解決策を考えた」というのは、常に多くの人がやっている。でも実際に「やってみた」「作ってみた」という例はすごく少ない。新しいアイデアを実行するのはリスクもあるし費用もかかるが、実際にやったから分かることもあるし、周囲の理解も一気に進む。逆にいうと「考えた」は、何もやってないのと同じだと思っている。

その意味でも、思い切った開発にGOサインを出した会社と、プロジェクトを支えてくれた同僚には心から感謝している。社業とかけ離れた分野で、一見無謀と思える計画を信じてやらせてくれた。実際、改造の現場では製作過程で想定外のトラブルもあり、良い報告がなかなかできなかった。本当に完成するのか心配だったに違いない(この辺りの苦労話は、別の記事で)。でもおかげで、大きな成果が残せたと自負している。

新品ではなく改造でお届け

また今回のスキームでは、今あるトラクターを電動に改造する形を想定した。その理由は、低価格・最適なスペックで届けたかったから。技術力はあっても利益の少ない市場には入ってこないメーカーの論理を逆手に取り、ユーザーのニーズに合ったカスタマイズ性を高め、手間がかかるニッチな市場で勝負しよう、と考えた。そうでないと生き残れない。(この話は、また改めて)

圃場で耕運作業をデモ運行

2024年5月29日。安佐南区白木の圃場へ若手農家を招き、プロトタイプのEVトラクターが動くところを見てもらった。ベースとなるトラクターは18馬力の小型で、中小農家にとっては馴染みのあるサイズ。圃場の端にセットし始動させると、力強く土を耕していった。

若手農家さんにEVトラクターが動く様子を披露

「走行も耕運も全て電動。コンセントから充電するので給油作業も不要です」と説明すると、30代後半の男性は「電気だとトルク不足で無理と思い込んでいた。むしろエンジンより耕すスピードは速い」と、初めて目にするEVトラクターに強い関心を示していた。
この日の実験では、想定より省電力で耕せると分かった。一方、かん高い動作音も走行中に確認された。今後は音の原因を突き止めてさらに小さくし、エンジンより大幅に静かなEVトラクターに仕上げるため、さらに開発が必要と分かった。

社会全体が脱炭素へ向かう中、エネルギー効率が高い電動トラクターの普及は、必要な施策の一つといえる。しかもまだ、大手農機具メーカーも含めて電動トラクターを国内で販売した実績はない。そこを新聞社が始められたらかなりインパクトのあるビジネスになれるはずー。農家の方々の反応を見ながらそう確信した。

(つづく)

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