YASHICA 35
ヤシカ、かつての有名なカメラ、光学メーカーでした。今でもちゃんと残ってます。こういう書き方はよくないかもしれませんが、、
富岡光学製レンズとレンジファインダー
富岡光学。好きな人は好きでしょう。何かと好評を得ている富岡光学製レンズ。実際カメラ関連雑誌「アサヒカメラ」のレンズ解像度の本数の診断でも上位に出てくるほど数値上はしっかりとしたレンズが多いのも事実。それだけ素晴らしい作りができたということですね。潤沢していたのかも。
今回のヤシカ35は1959年製、ヤシカとしては初の35mmレンジファインダーカメラとして登場したものです。ただレンズは固定式で取り外しのできるものではなく一体型カメラです。
そのレンズの種類は2種類。取り外しのできないものですしコパルMXVの一般的なレンズシャッターになりますが解像度はお墨付き。45mmのf1.9版とf2.8版です。アサヒカメラのニューフェイス診断室。辛口で有名なレビューでこのf2.8版が当時取り上げられました。もちろん、その診断室で度肝を抜くほどの高評価を得たのが今回のモノ、f2.8版。1959年の11月?の発行物と情報では出ていますがその刊は所持していません。
ただ恐ろしい持病も
自分のはギリギリ耐えているという印象ですが「巻き上げスタック」と「シャッターキャンセル」があります。このうち前者は自分のモノでも若干症状が発生気味な動きをすることが。
後者のシャッターキャンセルは有名な持病で、巻き上げを行って本来シャッターが切れる状態になるのにもかかわらずシャッターが押せない、再巻き上げを行ければならないというもの。これはこれでフィルムがもったいないものです。
前者の持病は少ないですが発生すると先ほどの症状より厄介です。フィルムの巻取りスプールの一つがスタックしてしまい途中で巻き上げができない状態になってしまい多重露光になってしまうもの。幸い、機構上分解をした人ならわかると思いますが巻き上げの軸の一本目はダイヤル連動ですのでスタックする=鉄のダイヤルが壊れるということになりますので摩耗で極端に壊れていることがない限りは大丈夫ですが、二本目の巻取りスプールが固定されてしまうのはちょっと怖いというか、フィルム撮影上ではリスクになりかねませんね。。
写真掲載についてサイトに尋ねましたが返信がなかったため写真は掲載できません。ご了承を。(サイト自体はフリーですので許可いらないですと記載があったためそのまま掲載しています、詳しくはサイト下部へ)
持病の説明の補足
なぜ一本目のスプールが連動できるのか。という件で説明します。
まず一般的なフィルムカメラと同じようにヤシカ35はフィルムの巻取りの軸(スリット巻取りの軸を指しています)とスプール、フィルムを巻き取る軸の二つの至ってシンプルな近代構造で、バルナックやライカのように構造が見えにくいわけではありません。ただ回るだけの穴を巻き込む軸ではなく巻取りの軸としてきちんと引っ張ります。
この引っ張る軸は底面にあるヤシカ35特有のA、R表記のダイヤルロックがあります。Aは巻き上げで巻き上げの軸が巻き上げシャフトと連動してスリット巻き上げの軸とともに巻き上がります。Rはリロードのことでシャフト軸、つまりスリット巻き上げ軸がフリーになります。ここまでは普通ですが普通にリワインド状態でも巻き上げは見かけ上は普通にできますし、シャッターも切れます。そして音もほぼ変わらない。なので意外にも、「スリット軸がフリー状態でフィルム自体は巻き上がっていないのに、シャッター巻き上げはできて本人は巻き上がったと判断してしまい、シャッターを何度も押し続けてしまう現象(俗の多重露光)が起こる」という機構のわかりづらいというのが難点です。
まあ要はこのA、Rのシャフト切り替えノブが故障すると常時「巻き上げフリーのリワインド状態」でフィルムが巻き上がらないまま延々とシャッターを気づかず切り続ける恐ろしさを兼ね備えています。
前者のシャッターキャンセルは比較的多い症状でよくレンジファインダー気にも表れることがあります。
簡単な構造でこのカメラは巻き上げていない状態ではシャッターロックがかかりますが、それがフリーの状態で巻き上げても巻き上げのロックも効かずシャッターロックも効かない状態でシャッターを切ってしまうとこのトラブルが起こります。要はシャッターロックがかかった状態でも巻き上げロックが適用されずいくらでも巻き上がる状態になってしまうということです。なのにシャッターが押せずキャンセル状態、となるのが症状です。この逆もしかりで巻き上げが延々に止まらない個体も存在します。
持病とはさすがに時代物、1959年製というもので避けられるものではないですがうまく理解して扱えるようになれば心配はいりません。なんらカメクラの方々には日常茶飯事でしょう。安心してかまいません。
外観
構造はシンプルなこの時期特有のレンジファインダー機です。二年後に出たキヤノネットは底面巻き上げでしたが当時は底面巻き上げが流行っていたこと(と言っても全盛は50年代なので若干時代遅れ感も否めないが)構造上下に配置する方が窮屈でなく作りやすかったんでしょう。セレン光の電池のシステムを見るにそういうことなんだろうと思います。だいぶ抽象的な表現になっちゃいましたが。
特にバルナックのように先端を調整しなきゃとかもないですし重さも一般的です。一般的というのは1950年代のレンジファインダー機と比較してですが。
スペック
スペックはシンプルなコパルMXVシャッターを搭載したレンズシャッター機の分類です
巻き上げ音
独特な巻き上げ音をします。キュルキュルいう整備済みの個体を一度だけ見たことがありますが自分のはキュルキュルではなくキィージィーという少しか弱い音です。巻き上げ機構に負担のかかるシステムではないので整備済みでなくともまあ動くには動く、というタイプのジャンク商品ですが油がちょっと切れてるのかもしれません。ですが自分は油切れぐらいではあまり分解はしたくないのでそのままです。下手に壊したり分解してオリジナリティを損なわれるのであれば油切れによる故障なら喜んで整備店に送ります。大金を払ってもプロに行ってもらうことに自分は重きを置いている立場です。
レンジファインダー機
当たり前の見た目と言えばもったいないぐらいつまらないですがレンジファインダー機です。結構びっくりなのはこのレンジファインダー、なんとミラーではなくプリズムを二枚合わせて見るファインダーで結構どころか相当ぜいたくで大きいファインダーを積んでます。さすがに機構も技術もライカには劣りますが決して劣等感を感じさせない、一級的で素晴らしい技術だと感心します。
心配した人もいるでしょう。「張り合わせ剤のプリズムが曇るんじゃ」と。自分は分解していないのでこれについてはネットの情報になりますが、張り合わせ剤は曇るような化学薬品由来でのきっついものではなく糊のような当時まだ途上だったガラス同士の貼り付けがそのまま使われているそうなので問題はないそうです。自分のモノも全く出ていません。むしろカビを心配した方がいいぐらいです。ただプリズムの腐食は残念ながらあるようです。まあこれは宿命。
ライカも大好きなランタンガラス
というよりもこの時代はランタンやらトリウムやらを含有させて屈折率を向上させていたのが50年代。クラウンガラスとかもそうです。
ヤシカ35はこの4群5枚の構成でf2.8を実現しました。当時まだISO32系、64系のフィルムが多かった時代にはありがたい明るさです。
で描写は先述の通りアサヒカメラのお墨付き。木村伊兵衛氏が「レンズだけ」絶賛しただけあり描写はかなりシャープかつコントラストが強めでモノクロには向くようです。コーティング技術がまだ途上だった1950年代、カラーに関しては意識はしていましたが少し色乗りが弱いといわれています。
作例に関してはいま現在モノクロでは通していますがカラーでは予算都合上未定です。でも通すつもりではいます。
修理について
貼り革をはがしレンズのシャッター部と巻き上げの機構部とで分離します。分離したらシャッターはコパルのMXVですので知っている方は速いと思います。知らない人はもっと簡単なものから分解しましょう。それこそ完全に壊れている個体。流用はできるようです。(一部は剛性が合わないため不可)
作例
現在はILFORD XP2 Superにて撮影中。カラーもおそらくSUPERIA X-TRA400を通す予定ですが未定です。
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