Kodak Digital Science DC260 1998は最初のDigita OS機
校正、修正(YYMMDD):240929
ガジェット界隈の皆様こんにちは。今回はPower PCの~、、あれっ?なんか違うって?いいえあっていますよ。カメラに内蔵されているOSです。その名もDigita。Kodak DC260に搭載されています。今回はこのカメラを紹介します。(一部の写真はブルーミングが起きたように見えるかもしれませんがモニターとの相性ですのでご容赦ください。)
Ⅰ. 迷走コダック列伝第一話 「独自OS組んでカメラ売ればいろいろ便利なんじゃね!?」
kodakがまだフィルムやデジタル産業にいけいけですごい力を入れていた1990年代。これからの未来がデジタルと化学技術の力の融合によって進化していくと見越してつけられたまんまの命名「Digital Science」シリーズ、通称DSが誕生します。
初めにつけられたのは皆さん大好きF3をデジタルバックと融合してできたDCS100。
その後にDCS200
でなぜか300系は時代的な側面では登場がなく400。(その後に登場する300番台)
中にはEOS系も登場
で現在最も入手後運用がしやすいといわれているDCS315。幸い自分の家にはwin95やLinux環境が構築されているためどの個体も動かせるには動かせるのですがピン変換などが面倒なので結局実機を買った方が早いんですよね、、一番古くて動く実機は95なのでDCS200などのDOS時代のモノは動くか見当がつきません。
ただこれらは高級な一眼レフにつけるデジタルバック方式でお世辞にも「家庭用ではない」ものでした。
外で使うにもなかなかまだデジタルが普及していない時代かつパーソナルコンピューター自体の普及も少なかった時代です。そこで打ち出したコダックの一般販売向けデジタルコンパクトカメラ(このころにはまだコンパクトという表現自体が定義されていなかったが)がDC40。
これが1995年のこと。ちなみにそれよりも前のApple QuickTakeシリーズはコダックの協力が入ってできたものです。2006年まではコダック自社生産、それ以降はシンガポールの別会社がOEMで生産しているものになります。
Ⅱ. 迷走コダック列伝第二話「日本の会社にカメラを作らせる!」
Kodakは進むデジタル化のスピードに何とか追いつくために開発を進めていましたが生産ラインが追い付かずなかなかカメラを完成させることはできませんでした。他社や日本製のSony、Canon等のカメラメーカーのみならず日立、カシオ、三洋などに後れを取ってしまい、早急に作り上げる必要がありました。コダックはプロ用の機器の販売には強かったのですがコンシューマー向けには弱い部分があったのです。(あれ、Nikon?)
そこでソフトウェア開発において独自性を持ち「のちのち時代が変わって様々な機能が他社についてきたときにそれをソフトウェアのアップデートのようにして更新していけばいい」と考案。斬新というかアメリカンというか、、
そこである程度カメラとしての性能が成熟してきた1998年にFlash Point Technology社と開発したDigitaOSをDC260の販売と同時に公開。
当時OSを積んだカメラとしてはかなり特殊な事例で、他に類を見ない異質なカメラになって販売され、フラグシップであったDC260は販売定価は日本円で126000円程度、ドルでは999$、実売では10万円前後と非常に高価なものだったようです。
スペックは当時のApple Power PCと同等と言われ、それなりの動作は当時快適な部類だったといわれています。
もうほぼすべての情報がネットアーカイブになってしまっていますがまだ一部のデータはダウンロード可能で汎用サイトからではありますがファームウェアのダウンロードも可能。
Ⅲ. 「スペックと外観」
操作系はこちらの説明書を流用。全文英語ですが、まあ読めるでしょう。自分が読めるんですから頭のいい皆さんなら…(なんてリスペクトのないことを)
infoのダイヤルで電源を入れるとこの画面表示に。すでに時代を感じる配色。
全然カメラと関係ないですが、中の人は「20世紀のキミ」という映画が好きでこの時代によくマッチしている感じで哀愁感じます。でも映画はバッド、トゥルーエンドなんですけどね…というか写真を撮るアイデンティティがこの映画に詰まってるぐらいです。人によってはだいぶ好みが分かれる韓国の映画です。現在はネットフリックスで配信しています。
1990年台の若き女子高生の青春時代を描く映画でラブコメ要素を少し取り込んでいるのですが、監督の方がこれを時代背景に落とし込むのが上手く、主人公が使っていたカメラは一世代前の機械式、業者の役をしていた人は当時最新のF4やF5だったりなどしていて、後日談でも「時代背景で相違が出ないようにしたかった」と語っているものです。とにかく、あの頃の懐かしさを残しつつ哀愁を程よく感じる優しい映画です。反面、ありきたりではありますが…
韓国経済では90年台の終わりを題材にした映画などでは、IMFの問題が取り沙汰されることが多いですが、それらには触れていません。
とまあ俺の小話は置いておいて…
中に入っているOSは先述通りDigita。Digitaは過去につくられていたAppleのOSから構築された専用のOSで中身はApple Power PC 823のチップ類などが使われて構成されているものになります。
なお公式ではすでに取り扱いもなく情報が古いためOSなどの構築データを探す場合はWayBackMachineなどアーカイブを利用する形となる見込みです。
以下は説明書スクリーンショット。順番がバラバラなので軽く目を通してみてーというイメージで飛ばしてもらって結構です。
説明書をしっかり読むと当時のウォーターマークを入れるとか、日付は左からどれだけのオフセットで印字とか、上からのオフセットはいくつとか、接続とか、AFはどのように動かすとか、割と細かく相当凝って作っているのがわかります。さすがフラグシップ。
Ⅳ. 「作例」
作例は未編集、未加工で日付表示などはすでに標準で印字できるものです。普段はフリー画像として転載を無許可でもOKにしていましたが、今回の作例転載などはご遠慮ください。
撮ってて感じるのはやはり圧倒的なホールド感、使い勝手の良さ、反面に出るOSからの起動時間の相当な遅さ。
起動時間は公称値でも16秒と極端に長いです。そのため撮り逃がしたりすることやそもそも撮っていて保存が全然終わらない、なんてことはざらにあり、「下手したらフィルムカメラより時間のかかるデジタルカメラ」の部類です。実はマビカなど特殊ディスク、フロッピーディスク仕様のカメラも極端に読み込みが遅いことは有名ですが、それよりもはるかに遅いです。
こちらより下は後日撮影したもの。相変わらず面白いものです
ここからは花や都市部の写真を掲載していきたいとおもいます、一部には花とは全く別の写真もありますがご容赦ください
Ⅴ. 「故障と復旧」
はじめこの子を救出する際は「すでに亡くなっています。単3電池を入れても動作できませんでした」というジャンクというよりは完全に故障品。
メルカリで数少ない初期のOS搭載DSシリーズを購入できたので、動かなくてもそれはしょうがないと思いましたが案の定届いたら動かない。
で、このカメラは初期PC同様OSを積んでおり電源を入れる際2段階で電源を入れる特殊な仕様でした。まずOSを起動しOSが動いた後にメモリや他の機器が動作中で無いかを確認した後にカメラなど駆動部を起動します。
駆動部まで行くのですがそこでたいていの場合ありがちなコンデンサ不良を起こします。コンデンサ不良を起こすと撮影画像が縞々になったり、駆動部がうまく動かずOSごと落ちて電源が切れてしまいます。典型的な古いPCの不良と同じです。
初めのうちはそのような症状が続き電源もろくに入らなかったのですが、徐々に動き出すように。コンデンサが息を吹き返し、動作するようになりました。それでも初めは電源OFF時にレンズがうまく格納されない、ピントが全く合わないなど不具合まみれでした。
出品者さんはおそらく、個人で購入していらないものを整理して販売している方で、業者ではなかったので「ぜひ動かして使っていただければ、動くと嬉しいです」ということだったので最後に「一応動作するようになりました」と伝えたところ喜んでいただけました。
それでもやはりコンデンサは死にかけで、たびたび電源を入れてフラッシュなど大電流を流してあげて電荷を作らないとクラッシュしてダウンしてしまいます。昔のPCで電源が弱く電圧が足りずに不具合を起こす事例はよくありましたがそれに近い気がします。
下部におそらくコンデンサ等の部品やメモリなどが備わっており非常に使用中熱くなります。カイロレベル。
ACアダプターは7V-8Vレベルを使用して、と記載がありますが一応6Vでも動作はします。動作する理由は基本単3電池が1.5×4で6V運用しても問題がないように設計されているためです。ちなみに1.3Vのエネループでも動作しますが電圧が鈍ってくると画像に縞々が出て電圧不良を引き起こし始めるときもあります。
電池は満充電エネループで液晶もずっとつけっぱなしだと40分程度が限界です。おなじみの当note恒例寒冷地試験では21分でした。
この子は逆に夏は熱暴走を防止するために一定の時間か熱量を持つと電源を落とし保護する回路が内蔵されています。
Ⅶ. 高度利用者向け情報
この項は高度利用者向けのより詳しい説明をしたものになります。難しい内容も含まれますので実際に所有あるいはよりニッチな部分を攻めていきたい人におすすめです。
DC260ではOSを積んでいることから独自にプログラムを組んでDigita専用のスクリプトをかきこむことができます。
スクリプトは通常のOSとは異なりDigita専用のものでかつこのDC260専用のカスタムされたエンジンに対応するコードが必要になります。
当初のインストールCDには5つの機能が搭載されていましたが詳細は割愛させていただきます。
インストールができると専用の画像編集ソフトなどが一部破綻した状態で出来上がります。(動作自体はできます)
接続に関しては要件を満たせないために当時の実機を持ってくる必要があります。(PS2変換等もダメです、もちろんUSBも)
またスクリプト応用やアップデートでDOOMを入れて動作させることも可能になっています。
ただもっとも初期のDigitaOSであるために動作が不安定なため推奨はされていません。実際に実機で試したところは正常に動作しています。
Ⅷ. 「最後」
ジャンク自体は楽しいですがかなりこの手のモノは故障しているとシビアな修理が必要になります。購入の際は心して。このDC260は運良く動いてくれていますがいつ死んでしまうかわかりません。
率直に言えばこのカメラ、ポテンシャルがしっかりあり、自分にはすごいマッチするカメラです。
動作も非常にもっさり、フィルムカメラよりもさらに慎重になれる撮影を楽しみたいのんびりさんにはお勧めです。
あ、言ってなかったですが縦位置で撮影すると自動で調整したり文字入れ込むことも可能です。ギミック要素あるのでそこも楽しみかも!?
随時書き足して更新していくと思いますので更新があればぜひ。