Nikon F2というカメラ
校正、文章改訂日(YYMMDD方式):240830, 240904(誤字指摘)
原点にして頂点と言われた初代Fをさらに詰めて出来上がった究極の機械式一眼レフ機、Nikon F2。目覚ましい工業発展と努力の末、生まれたプロのためのカメラについて紹介します。
Ⅰ. ロマンと機能と実用性を存分に積んだ初代F
Nikon Fは1959年に発売されてから新聞報道記者、プロのカメラマン、雑誌撮影などありとあらゆる環境で多く使われた言わずと知れたNikonの名機であり、ある意味Fマウントの始祖的立場にあります。
先代のレンジファインダーカメラ、SPを一眼レフの仕様に再設計して販売されたFはその中にもSPを感じさせる面影のある機構などが残されており、ロマンを感じるものもありますが、反面操作性や堅牢性に若干の癖があることがわかっています。
そこで60年代になってある程度Fが成熟しきった後にF2の開発を開始。F2は完全に再設計オリジナルの一眼レフシステムカメラとして制作され、その後70年代初頭に世に登場。より洗練された機能や十分すぎるほどの堅牢性を兼ね備えてNikonのプロ機としての立場を築き上げていくことができました。
Ⅱ. 精悍なブラックボディ
初代Fはそれまで癖と言われていた部分、荒削りだった部分を煮詰めて出来上がった究極体。当時ではこれが報道写真の要、もしくはライバルCanon F-1がいました。
シルバーボディが標準であった中、ブラックボディのバリエーションも始めからあり、かなり玉数があるのが特徴。それでも最近は少なくなってきているのが現状。昨今のフィルムカメラブームが過ぎ去って段々と暴騰気味だった値は落ち着き始めています。と言ってもそれもインバウンドで帳消しですが…
Fでは機構上、巻き上げに対して無駄にストロークに負荷がかかることを防ぐため当時の技術では若干遊び(余裕角)が大きめでカタカタと音が鳴ってしまうことがありましたが、そう言ったところも防ぐために露出計スイッチを兼ねたストップ機構が巻き上げレバーに新たにF2で図られるなど徹底されています。
ブラックボディは自分のものはそれなりの使用感で傷もありましたが、一部分厚い後塗りがあり、傷が補修がされている感じでした。おそらく粘度の高い塗料のようなもののため本来は車用の補修ペイント剤などであるのかなという印象です。いずれにしても目立ちはしない底面部の話ですので特にはがしたりはせずそのままに。
撮影体験?という言葉が苦手な方もこの界隈には少なくないでしょう。自分も初めは懐疑的ではありますし正直今でも「んー」という漠然としたイメージしかありません。でもフィルムを使うのもブラックボディを買うのも結局「自分がそのカメラで撮りたいから」という観念からくる「撮影体験の訴求」ではないのでしょうか。という苦しすぎる言い訳を出しておきます笑
撮りたいカメラで撮ろうとする意志がある時点で撮影体験というべきなのかもしれません。矛盾が多いのがカメラ界隈ですから。
ロマンも当然あります。上級機というNikonの堅牢性の伝統はそのままにさらに進化を遂げたボディ。もう言うことはないでしょう。
旅に持ち出すのもなかなかよく使えるカメラだと思います。
Ⅲ. 作例
フィルムですので基本的にレンズが写りに影響してくるわけですがとりあえず見ましょう。
フィルムはFujicolor100。定番のものですね。というかもはやこれ以外があまりないイメージ。
現像機はFuji frontier sp-2000、ケミカルは FUJI FP363SC、スキャンはEPSON GT-9400UFです。未補正ですが若干色合いにズレが出ていますのでオリジナリティは薄れています。
レンズは記載がないものはNIKKOR-H Auto 28mm f3.5です。
F2のシャッターはそれまでのSPから続くシャッターとは違う完全に新設計のものです。そのため「F」とも「F3」とも違う独自の音を奏でています。ここではなんとも音を表現する言葉を使うのは控えましょう。Fはそれこそ独特の金属音がしますが、こちらはある程度シャッターに優しめなダンパー吸収の音が混じっているように感じます。
Ⅲ.プロのカメラに相応しくあるべきとされたカメラ
プロというもの。
高度経済成長からの躍進的な企業成長の中で自社の製品をいかに業務、世界(当時の横文字ブームならユニバーサルに)に対抗できる強い製品を出して更なる高みに目指すかが焦点だった昭和の世代がありました。まあ背景にはハラスメントや過労など影の側面もいろいろあったでしょうが…
特に自動車はその目覚ましい成長から海外でも日本車狩りが起こったほどなのは有名な話。オイルショック以後、その動きは落ち着きますがそれでも日本の製品というものはバブル期まではとても余裕のある製品でした。
当然、業務には耐久性や使用用途など配慮できる面が一般製品より多くなるのが常です。
部品点数なども増えれば機械設備も増えますし、何より実際の製品が本当に使えるかどうかが肝でした。
そんな中、威信をかけて開発されたF2は試行錯誤を得て見事大成功。プロに認められて愛されるカメラになった、そしてニコンのプロ機としての地位をここで大きく獲得して示すことができたのです。
防塵、防滴は謳っていませんでしたが、防塵は「ある程度許容できる範囲」で防塵で防滴はおろか防水レベルまで強かったようです(海の撮影で水没した個体をNikonに持ち込み、軽く分解して直しただけで復活した、サハラの砂漠地帯でダカールの撮影で2週間連続で未整備で運用したが壊れなかった、結果的にはその後さらに2週間後に壊れた)。
Ⅳ. デザイン
大元は初代Fと相違がないものになっています。マイナーチェンジというには小さいし、フルモデルチェンジとは言えないレベル。ビッグマイナーチェンジという言葉がしっくりくるでしょうか。
撮影のミスでホワイトバランスが盛大にくるっています。ご容赦くださいませ。
Ⅴ. 使用雑多
良くも悪くも古さを感じさせない、というか操作系がすでにだいぶ完成された代物で扱いやすいカメラという印象です。
シャッターのレリーズタイムラグはとてつもなく速いのはよく知られたことなので、ほとんど気になることはありませんでした。というかデジタルとほとんど遜色を感じない。この時代のシャッターとミラー動作には感動するものがあります。
重さに関してですが、確かに上級機の重さを感じるものの、個人的にはほとんど気にならないレベルでした。というのもこの画像を出したら自分が普段どんな装備で出ているかは、、お察しの通り。
不満点は測光。この時代ですので若干不安定。それでも自分が慣れればそれも妥協できるぐらいの程度の不満点なので、正直そこまで感じません。
自分はそれなりのものをメルカリで落としましたが、今考えるとあれは転売ヤーだったのかそうでなかったのか微妙な感じの人から買い取ってました。でも見た感じ日用品を多く出品している感じで釣り上げた感じもなかったのでバイヤーとしても珍しく良心的ではあったとは思います。ちゃんと汚れとか傷も正直な(テンプレじゃない)記載で、後塗りの可能性も詳細に書かれてましたし。
とまあ購入の注意を若干垂れながら雑多の続きを言うと、塗装のブラック、若干弱め。あとからちゃんとブラック塗装のものとわかりましたが(まあ詳しい人にTwitterで聞いたりなど)意外と取れやすいです。香水の瓶の塗装に近いイメージです。香水の瓶で塗装がされているものは思いのほか弱くすぐに剥げてしまうことで有名なんですが、その感じ。知らないでガンガン使っているとすぐに剥げていきそうな感じ。
ホワイトバランスがくるっているのはスキャン結果による色転びが原因ですので特にカメラに異状があるというわけではありません。あらかじめご了承くださいませ。
Ⅵ. 最後に
F2。時代の中には万博以後、オリンピックは日本ではすぐに札幌、その後ミュンヘン、モントリオールと業務用途ではなかなか寒冷地の使用形態がとられるものでした。その中でも横走フォーカルプレーンシャッター機として存在を示しライバルCanon F-1と時代を切り取っていきました。
南極観測船やウエムラスペシャルなどまだまだ小ネタとして話せるものは多くありますが今回はこのぐらいにして。最後までお読みいただきありがとうございます。またほかの記事でこれらの話ができたらここにURLを貼ることにしましょう。では