Vol.10 フィンランドで学んだ「Understanding(理解)」の考え方
このnoteでは、フィンランドのプレスクールから小中高/職業専門学校を訪れる中で、フィンランド教育の根底にある価値観のようなものを探る過程で発見したことをシェアしていきます。フィンランドの教育現場を初めて訪れた2017年から7年が経過し、緩やかにフィンランドの社会の変化を学校現場を通してみてきました。今回のnoteでは、この夏、2024年の8月2日から19日に日本全国から集まった高校生、大学生、社会人、教員の方と学校現場や町を様々な視点でフィールドワークをする中で発見したことを記録として残していけたらと思います。
今回のnoteのキーワードは「Understanding(理解)」と「Openな文化」です。この理解という言葉は、私が今勤めている国際バカロレアの認定校で教育活動を行う中でも大切にしている考え方でもあったので、同じキーワードが現地の高校の校長先生から出てきた時に、つながりを感じました。校長先生との対話の中で、校長先生は次のように話をしていました。
・ この地域のバックグラウンド
背景となる情報として、私が訪れた地域は人口が約3200人の町です。フィンランドの中でも、小さな自治体になります。小さなコミュニティだからこその良さを活かして様々な教育活動を行っています。例えば、人と人との繋がりを大切にしていること、学校がハブとなって、地域の多くの人が訪れる機能を担っていること、子どもの人数が少ないので、一人一人に合った教育を提供できること、プレスクールから高校までが集まっており、安心して学校で学べる環境があること等の強みがあります。
その一方で、フィンランドの中でも田舎の地域でもあるので、社会や世界との繋がりを感じにくい課題もあります。この自分たちの置かれた環境の中で、何ができるのかを学校が主体となって考え、地域だけでなく、社会や世界に開かれた教育活動も大切にしています。
これは、フィンランドの法律でも定められており、学校は保護者等の外部の人が学校を訪問したいと言われた時はいつでもオープンにすることが定められています。私が勤めていた学校では、外国人である私たちに対してもオープンな気持ちで、受け入れてくれています。
・ 私の発見
私がフィンランドの学校現場と7年間、協働する中で発見したことがあります。
今回学校現場を訪れた時に、初めて会う私たちに対して現地の子どもたちは積極的に英語でコミュニケーションをとる姿が見られました。フィンランドでは、英語は第二言語でもあり、日常生活の中では英語を使って実際に外国人とコミュニケーションをとる機会がほとんどないのに、積極的にコミュニケーションをとる姿は印象的でした。その中でも、子どもの頃の外国の人と人と関わり異文化に触れた経験が、学習者に与える影響について感じた出会いがありました。
その中の1人(5年生の男の子)とのコミュニケーションの中がとても印象的でした。
当時プレスクール(6歳)だった男の子が、5年前の記憶を思い出した時間になりました。幼少期の記憶が5年という時を経て、再び再会する喜びを一緒に感じられた時間でした。教育現場での子どもの成長の変化を感じるのは、とても時間がかかるもので、短期間で変化を感じることは難しいです。今回の出来事は、まだフィンランド語も学んでいない時に出会った子どもが、5年という時を経て英語でコミュニケーションを通して、心と心で繋がった時間に感じました。まさに、この学校の校長先生が大切にしている、様々な文化をもつ人と出会い、コミュニケーションをする方法を学ぶステップを一歩ずつ登っているように感じました。
また、こんな出会いもありました。5年前に、私がフィンランドの高校で働いていた時に、日本語コースの生徒が日本に行く修学旅行のお金を集めるためのクリスマスコンサートを行っていました。私もできることとして、日本文化のワークショップを地域に開いて行いました。その時に、当時幼稚園生だった子が来てくれました。その時の記憶は私は覚えていなかったのですが、5年ぶりにコミュニティカレッジ(フィンランドの生涯学習機関)と協働でオープンな日本文化のワークショップを行いました。
すると、5年を経て当時幼稚園生だった子が遊びに来てくれました。その子のお父さんは、このイベントの情報をFacebookでキャッチして、仕事終わりに、ギリギリ滑り込んで参加してくれました。
YouTubeの世界ではなく、実際に異なる文化をもつ人と関わった小さな経験が、見えないところで子どもの記憶に残り、そこから興味の種から芽が出て、ゆっくりと育まれていくんだなと感じる再会が今回いくつかありました。
今回、私たちは夏休みが明けて、1週間という学校現場が忙しい時期に訪問をさせていただきました。私も学校現場で働いてるので、新学期の最初の2週間は、とても忙しい時期になります。それでも、私たちを温かく受け入れて、実際に現地の子どもたちに授業や、ワークショップをさせてもらえる根底には「経験することによって生まれるUnderstanding(理解)の価値」が学校全体で共有されているように感じました。授業やワークショップの時の子どもたちの表情を先生方は観察していて、子どもたちが笑顔になっている姿、日本文化を通して子ども同士、日本人とコミュニケーションをとる姿を見て、まさに、普段出会わない人々と出会い、そしてコミュニケーションをする方法を実際に経験を通して学ぶ貴重な機会にとらえているようでした。
私もつい、学校現場で授業をしていると、授業のつながりを考え、イレギュラーで外部との交流を行うことに抵抗を感じることもあるのですが、子どもたちの学びの先にあるものを考えた時に、目の前に起きている思考だけでなく、長期的な視野で学習者が、様々な人と出会い、様々な人と関わる方法を学ぶ経験の価値を改めて感じました。
・ 学校現場で活かせそうなこと
私が、今日本の学校現場で勤める場所を選んだ一番の理由は「学校のオープンなカルチャー」です。初めて今働いている学校現場(サニーサイドインターナショナルスクール)を訪れた時に、現場で働いている先生方とそこで学んでいる子どもたちのOpen-mindedな姿がとても印象的だったのを覚えています。学校がオープンなカルチャーを丁寧につくることが、そこで学んでいる子どもたちのOpen-mindedを育むということをフィンランドの学校のカルチャーを改めてみて感じました。
日本では、学校をオープンにすることに対して、安全面等の理由からリスクや不安を感じると思いますが、まずは保護者や地域の方を対象にしたり、繋がりのある人から学校をオープンにするなど、安心できるカタチで開かれた学校にすることもできると思います。学校を外部にオープンにすることで、学習者にとっても自分が何を学んでいるのかを訪れた人に、言語化する機会になり、知っている状態から理解するに近づくことになると思います。
今回のnoteでは「学校のオープンなカルチャー」が与える「学習者への理解」についてまとめてみました。いつも読んでいただきありがとうございます。
moimoi!
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