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人間だけのものではない
リビングの窓から見える木々の緑が濃くなってきた。青空を飛ぶ鳥や、風に揺れる立木をぼんやりと眺めながら、いま窮屈な想いをしているのは人間なんだと思った。
朝刊の国際面に「人が出ないと現れた」という見出し。
ベネチアでは、運河が透き通って水の底が見えるようになっているそうだ。鵜が小魚を追い白鳥が泳ぐ様子も目撃された。
ミラノの公園では野ウサギが駆け回り、ローマのスペイン広場の噴水でカモが水浴びしているという。
インドのニューデリーではサル。南米では、サンチアゴでピューマが現れ、アルゼンチンのビーチの大通りをアシカの群れが埋めている。
リード文には「人影が消えた世界で、それまでの光景や環境に変化が起きている」。でも本文にはアメリカの専門家の「人類が長い時間をかけて地球環境に与えた変化は、すぐには修正されない」というコメントも載っていた。
反動は。
経済回復への刺激策が打たれたとき、どんなことが起きてしまうのかの心配はある。
地球は、人間だけが生きているわけではない。
窓から見える木々に命の鼓動を感じる。