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世界最速プレーヤー相手にエースを取る方法を考える⑦~センター寄り・ベースライン後方1m~
こんにちは、トモヒトです。
今回も、相手の想定としてジョコビッチ選手を取り上げます。
前提条件
ここで、いくつかの前提条件を定義しておきます。
ジョコビッチ選手のフットワーク所要時間
ジョコビッチ選手がヒッティングポジションへ移動する時間を、次の式で定義します。
$$ t= 0.25 + (sprint length / 10) $$
この式は、以下を想定したものです。
反応時間=0.25秒
スプリント時間=スプリント距離 / 10〔m/s〕
ショットの条件
ショットの落下点=想定よりも0.5m以上短い位置でバウンドした場合はカウントしない
ネットの上0.5m以上を通過したものをカウントする
エースの条件
エースの条件は、相手がベースライン後方2mにポジショニングしていると仮定し、ベースライン後方2mのショットの到達時間がフットワークの時間を下回った場合とします。
結果
それでは、結果についてみていきます。
このあと出てくるshot widthは、以下のように値を定義しています。
ストレート:ネットを挟んで反対側のバウンド地点を0とし、シングルスサイドライン方向をマイナス、センター方向をプラス
クロス:シングルスサイドラインからの距離
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今回は、シングルスサイドラインから4m内側・かつベースライン後方1mからのショットを考えてみます。
これは、センター付近で、ベースラインの1m後方に当たります。
【ストレート方向】
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このケースでの合理的待機位置を、センターマークからクロス側へ0.045mずれた位置とします。
これをもとに、ジョコビッチ選手のフットワーク所要時間を算出します。
shot width=-4.0: 0.6983s (0.25 + (4.483 / 10))
shot width=-3.5: 0.6442s (0.25 + (3.942 / 10))
shot width=-3.0: 0.5902s (0.25 + (3.402 / 10))
shot width=-2.5: 0.5361s (0.25 + (2.861 / 10))
shot width=-2.0: 0.4821s (0.25 + (2.321 / 10))
これらの結果から、エースになる最低速度は次のようになります。
shot width=-4.0 => 打点=0.6m: 180km/h / 打点=1.5m: 175km/h
これをみると、ストレート方向へのショットでは、合理的待機位置に構えられるとエースを狙うのは困難であるといえます。
また、-4.0middleはサービスラインとベースラインの中間、-4.0shortはサービスライン付近と、やや角度のついたショットとなっています。
これらについてshot width=-4.0のときのフットワーク所要時間を当てはめると、-4.0middleでは155km/h、-4.0shortでは140km/hでエースが奪える計算となります。
反対に、shot width=-3.5以下(シングルスサイドラインから0.5m内側のエリア)のショットでエースを取るためには、相手が何m以上離れた位置にいればいいのかを見ていきます。
センターマークを0mとすると、ショットスピード別に次のようになります。
100km/h => 打点=0.6m: 6.875m / 打点=1.5m: 6.635m
110km/h => 打点=0.6m: 5.345m / 打点=1.5m: 5.285m
120km/h => 打点=0.6m: 4.345m / 打点=1.5m: 4.205m
130km/h => 打点=0.6m: 3.425m / 打点=1.5m: 3.375m
140km/h => 打点=0.6m: 2.665m / 打点=1.5m: 2.615m
150km/h => 打点=0.6m: 2.055m / 打点=1.5m: 2.015m
160km/h => 打点=0.6m: 1.515m / 打点=1.5m: 1.465m
170km/h => 打点=0.6m: 1.065m / 打点=1.5m: 1.025m
この結果をみると、150km/h以下のストロークでエースを取るには、ヒッティング時の相手のポジションをB・Cよりも外側に追い出す必要があると考えることができます(下図黒丸)。
一方、160km/h以上であれば、B,C内であっても、センターマークとの距離とショットスピードの兼ね合いによっては、エースを取ることができます(下図青丸)。
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170km/hのショットであっても、B,Cラインの半分よりも外側に相手がいる必要があります。
このことから、センター寄り・ベースライン後方1mからストレート方向へのショットでエースを狙いに行くのは、その前の組み立てで相手のポジションを崩すことができたときに絞るのが効果的と考えられます。
【クロス方向】
次は、クロス方向へのショットを深さ別でみてみます。
ショートクロス
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仮に、センターマークから0.045m横にずれた合理的待機位置から、ボールの軌道に対して最短距離(直角)に動くと仮定します。
この条件の場合の、エースとなるボールスピードは以下のようになります。
shot width=0.0: 110km/h
(移動距離=5.650m/フットワーク所要時間=0.8150s)shot width=0.5: 120km/h
(移動距離=4.989m/フットワーク所要時間=0.7489s)
ミドルクロス
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合理的待機位置を、センターマークからクロス側へ0.045mずれた位置とします。
これをもとに、ジョコビッチ選手のフットワーク所要時間を算出します。
shot width=0.0: 0.6705s (0.25 + 4.205 / 10)
shot width=0.5: 0.6097s (0.25 + 3.597 / 10)
shot width=1.0: 0.5489s (0.25 + 2.989 / 10)
shot width=1.5: 0.4882s (0.25 + 2.382 / 10)
以上から、各バウンド地点でエースになる最低速度は、次のようになります。
shot width=0.0: 打点=0.6m: 155km/h / 打点=1.5m: 155km/h
shot width=0.5: 打点=0.6m: 170km/h / 打点=1.5m: 170km/h
反対に、このポジションからミドルクロスでエースを取ろうすれば、センターマークからどのくらい離れていればいいのでしょうか?
センターマークを0mとし、サイドラインから0.5m内側のエリアのショットで考えると、下のようになります。
100km/h => 打点=0.6m: 3.542m / 打点=1.5m: 3.442m
110km/h => 打点=0.6m: 2.482m / 打点=1.5m: 2.392m
120km/h => 打点=0.6m: 1.612m / 打点=1.5m: 1.592m
130km/h => 打点=0.6m: 0.922m / 打点=1.5m: 0.922m
140km/h => 打点=0.6m: 0.312m / 打点=1.5m: 0.312m
150km/h => 打点=0.6m: -0.158m / 打点=1.5m: -0.168m
160km/h => 打点=0.6m: -0.548m / 打点=1.5m: -0.648m
170km/h => 打点=0.6m: -0.858m / 打点=1.5m: -0.998m
この結果をみると、エースになる条件を次のように考えることができます。
ショットスピードが110km/h以下
=>自分がストロークを打つ時点でB,Cより外側にいる必要がある(下図黒丸)ショットスピードが120km/h以上140km/h以下
=>B,Cにいてもセンターマークを越えずにストレート側の半面にいれば、エースになる可能性がある(下図青丸)ショットスピードが150km/h以上
=>センターマークを越えていても、ショットのコースがよければエースになる可能性がある(下図赤丸)
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深いクロス
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深いクロスの場合、一番相手との距離の遠いshot width=0のときでも4.070m(フットワーク所要時間=0.6570s)となります。
よって、相手に合理的待機位置に構えられると、深いクロスでエースを奪うには180km/h以上のショットスピードが必要になります。
もし、深いクロスでエースを取ろうすれば、センターマークからどのくらい離れていればいいのでしょうか?
サイドラインから0.5m内側のエリアのショットで考えると、下のようになります。
100km/h => 打点=0.6m: 5.894m / 打点=1.5m: 5.754m
110km/h => 打点=0.6m: 4.584m / 打点=1.5m: 4.494m
120km/h => 打点=0.6m: 3.534m / 打点=1.5m: 3.464m
130km/h => 打点=0.6m: 2.684m / 打点=1.5m: 2.684m
140km/h => 打点=0.6m: 1.974m / 打点=1.5m: 1.974m
150km/h => 打点=0.6m: 1.424m / 打点=1.5m: 1.364m
160km/h => 打点=0.6m: 0.894m / 打点=1.5m: 0.864m
170km/h => 打点=0.6m: 0.464m / 打点=1.5m: 0.424m
この結果をみると、次のように考えることができるかと思います。
ショットスピードが130km/h以下
=>エースを奪うには、B, Cの外側に相手が残っている必要がある(黒丸)ショットスピードが140km/h以上
=>B, Cにいても、ストレート側の半面に残っていれば、エースになる可能性がある(青丸)
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まとめ
今回は、センター寄りでベースライン後方1mからのエースの取り方について考えてきました。
今回の結果をみると、センター寄り・ベースライン後方1mからでは、ショット単体でエースを奪うのは困難であると考えられます。
このポジションでは、そのあとのラリーへつながるショットを打つ位置と割り切り、相手のポジションが崩れたときだけエース狙いのショットを打つというのが効果的と感じます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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