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配球分析 2023BNP Paribas Open C. アルカラス vs J. シナー(J. シナー選手サーブゲーム)
こんにちは、トモヒトです。
今回は、2023年BNP Paribas OpenのC. アルカラス vs J. シナーでの配球パターン分析をしてみます。
今回は、3球目までの配球に絞って見ていきます。
C. アルカラス選手のサーブゲームでの分析は、以下の記事で行っています。
1stサーブ時の配球
まずは、1stサーブ時の配球を見てみます。
デュースサイド
まずは、デュースサイドでの1stサーブを見てみます。
3球目のショットタイプとの関係
デュースサイドでの1stサーブコースと3球目のショットタイプの関係を見てみます。
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3球目のショットタイプの内訳を見ると、以下のようになります。
フォアハンド(FH):42.86%
バックハンド(BH):57.14%
これを見ると、デュースサイドでの1stサーブ時の3球目は、約57%がバックハンドで返していることがわかります。
約59%をフォアハンドで返していたアルカラス選手とは、大きく異なっています。
また、3球目のショットタイプ別にポイント獲得率を算出すると、次のようになります。
フォアハンド(FH):66.67%
バックハンド(BH):62.5%
3球目がフォアハンドのラリーのほうが、わずかにポイント獲得率が高いことがわかります。
仮に、ポイント獲得率が同じままでフォアハンドでの返球率を上げることができれば、全体のポイント獲得率が高くなるという計算になります。
3球目のショットタイプ別の配球コース
次は、3球目のショットタイプ別に配球コース(3球目まで)を見てみます。
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3球目がフォアハンドで、ポイントを失ったラリーの特徴としては、リターンが深く、ハーフバウンドで対処しています。
反対に、リターンがサービスライン付近にバウンドしたケースでは、すべてポイントを獲得しています。
この結果をみると、サーブでリターンを浅くさせて、3球目をフォアハンドで打ったラリーでは、ポイント獲得率を高く保てる可能性があると考えられます。
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バックハンドのときは、ほとんどのラリーでアドサイドを狙っていることがわかります(3球目のバウンド地点から考えて、明確にフォアハンドを狙ったと考えられるショットはないと考えます)。
これについては、アルカラス選手と同様の傾向が見られます。
アドサイド
次は、アドサイドでの1stサーブを見てみます。
3球目のショットタイプとの関係
アドサイドでの1stサーブコースと3球目のショットタイプの関係を見てみます。
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3球目のショットタイプの内訳を見ると、以下のようになります。
フォアハンド(FH):88.89%
バックハンド(BH):11.11%
これを見ると、アドサイドでの1stサーブ時の3球目は、9割近くをフォアハンドで返していることがわかります。
アルカラス選手もアドサイドのほうが、フォアハンドでの返球率が高かったことから、アドサイドのほうがフォアハンドで3球目を打ちやすい可能性もあります。
これは、アドサイドのサーブ後、3球目の合理的待機位置がセンターマークよりもアドサイド寄りになることと関係があるようにも考えられます。
また、3球目のショットタイプ別にポイント獲得率を算出すると、次のようになります。
フォアハンド(FH):62.5%
バックハンド(BH):100%
バックハンドのポイント獲得率が100%というのは、3球目をバックハンドで返したポイントが1ポイントだったので、あまり参考にはならないと考えます。
3球目のショットタイプ別の配球コース
次は、3球目のショットタイプ別に配球コース(3球目まで)を見てみます。
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アルカラス選手のときと比べると、デュースサイドへ3球目を打つポイントが多かった(5/8)ように感じます。
これは、浅いリターンに対してオープンコートへ展開するパターンが多かったのも、一因と考えられます。
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3球目がフォアハンドのケースをみると、失った3ポイント中2ポイントがアドサイドのシングルスサイドラインより外側から、フォアハンドで返していることがわかります。
似たようなリターンに対してバックハンドで返したポイントでは、深い位置に3球目を打てていることを考えると、無理に回り込まずバックで返していたほうが良かった可能性もあります。
2ndサーブ時の配球
次は、2ndサーブ時の配球を見てみます。
デュースサイド
まずは、デュースサイドでの2ndサーブを見てみます。
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3球目のショットタイプの内訳を見ると、以下のようになります。
フォアハンド(FH):41.67%
バックハンド(BH):50.0%
フォアハンドロブ(FHL):8.33%
フォアハンドとバックハンドの割合はほぼ半々(フォアハンドロブを合算するとちょうど50:50)になっています。
また、3球目のショットタイプ別にポイント獲得率を算出すると、次のようになります。
フォアハンド(FH):40.0%
バックハンド(BH):50.0%
フォアハンドロブ(FHL):0%
3球目のショットタイプ別の配球コース
次は、3球目のショットタイプ別に配球コース(3球目まで)を見てみます。
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このようにみると、3球目をデュースサイド側へ返したポイントがアルカラスに比べて多いことがわかります。
仮に、3球目をアドサイドへ返球したほうがポイント獲得率は高くなるという傾向があれば、この配球が効果的ではなかったと考えることもできます(結論づけるには、より多くのデータが必要になりますが)。
アドサイド
次は、アドサイドでの2ndサーブを見てみます。
3球目のショットタイプとの関係
アドサイドでの2ndサーブコースと3球目のショットタイプの関係を見てみます。
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3球目のショットタイプの内訳を見ると、以下のようになります。
フォアハンド(FH):21.43%
バックハンド(BH):78.57%
アドサイドでの2ndサーブでは、3球目の約8割がバックハンドで返していることがわかります。
また、3球目のショットタイプ別にポイント獲得率を算出すると、次のようになります。
フォアハンド(FH):0%
バックハンド(BH):54.55%
3球目のショットタイプ別の配球コース
次は、3球目のショットタイプ別に配球コース(3球目まで)を見てみます。
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3球目がフォアハンドのケースでポイント獲得率が0%だったのは、リターンが深くサーブの優位性を保つのが難しかったことが一因の可能性はあります。
3球目がバックハンドのケースをみると、多くのポイントで3球目をアドサイドへ返しています(明確にデュースサイド側へのショットといえるのは2ポイント)。
2ndサーブの3球目で相手のバックハンド側を狙う配球は、アルカラス選手にも見られた特徴です。
まとめ
今回は、2023年BNP Paribas OpenのC. アルカラス vs J. シナー(シナー選手のサーブゲーム)での配球パターン分析をしてみます。
アルカラス選手の配球と比較すると、似ている点・異なる点がありました。
似ていた点としては、以下の点が挙げられます。
デュースサイドの1stサーブで、3球目がバックハンドのときはアドサイドへ返す確率が高い
デュースサイドと比べて、アドサイドの1stサーブのほうが、3球目をフォアハンドで返す確率が高くなる
アドサイドの2ndサーブで、3球目がバックハンドのときはアドサイドへ返す確率が高い
反対に、違いが見られた点は次の通りです。
デュースサイドの1stサーブ時の、3球目のフォアハンド/バックハンドの返球率の割合
アドサイドの1stサーブとデュースサイドの2ndサーブ時の、デュースサイドへ3球目を返す割合
似ている点については、より多くのプレーヤーにみられる特徴なのかや、別のプレーヤーとの対戦でもみられる特徴なのかといった点を検証することで、汎用的なパターンであるかを考察する必要があります。
また、異なる点については、プレーヤー個々の特徴なのか、試合の流れでそうなったのか、たまたまなのかを追加で見ていく必要があります。
加えて、その選択が試合の勝敗に関係していたと考えられるか(ポイント獲得率が低い選択だったのか、選択自体は適切だったが別の要因でポイントが獲得できなかったのか)を見ていくことで、より効果的な配球とは何かを見つけるヒントになると考えます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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