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ふみサロ10月課題≪死と詩をむすぶもの≫詩人と医師の往復書簡を読んで
エッセイ塾、ふみサロに参加して3年目になりました。
毎月課題本から得たインスピレーションをもとに800字程度のエッセイを書き、参加者同士で講評する。SNSで発信するまでが課題。
以下がエッセイ
一人っ子のお守り
小3の夏、祖母が亡くなった。
連絡が来た翌日、親戚一同で徳之島へ飛んだ。徳之島は、奄美諸島の一つ。鹿児島で飛行機を乗り換えるので、朝、羽田を出発して、到着はお昼過ぎになる。祖母の家に行くと、既に葬儀の準備が整えられ、大勢の人たちが集まっていた。
私にとって、初めてのお葬式だった。
台所では近所のおばさんたちが食事の支度をし、母たちは目を腫らしながらお客さんたちの相手をし、祖父や男の人たちはお酒を飲みながら何やら話している。
「お葬式って大変だ。」
私も大人になって、親が死んだら、こうやってお葬式をしなくちゃいけないんだな、母には兄弟がいても大変そうなのに、私は一人っ子。
「これを私がやるのかー。」
ズーンと重たい気持ちになったのを覚えている。
母は65歳を過ぎて、徳之島へUターンした。
徳之島は長寿の島で、70代でもまだまだ若手。いろんな集まりに顔を出しながら、忙しくしているようだ。
幸い、今は病気や怪我もなく、元気な様子だが、あのとき感じた漠然とした不安が、現実にだんだんと近づいてきているような気がして、私の心は静かにざわつき始めた。
そこで具体的な対策をしようと、
まず、航空会社の株を買うことにした。株主優待券が目当てだ。いざ!のときは、早割などのサービスは使えないので、通常のチケットは片道6万円ぐらいかかる。優待券があれば、およそ半額になる。
夫に「冬のボーナスでなにか欲しいものはある?」と聞かれたとき、
「株が欲しい」と答えたら、びっくりされたけど、理由を話したら納得してくれて、一緒にドキドキしながら証券会社に行った。
初めて優待券が届いたときは、「これでいつでも行けるぞ!」と、ちょっとだけ安心できた。
まだ一回も優待券を使わず、有効期限が切れてしまったのもある。せっかく手に入れたのに・・・どこか行けばよかったかな?
でも、それで使ったあとに、いざ!が来たら?
やっぱり使えないか。優待券はお守りだ。
おわり
今月の課題本
本自体はとても興味深く、面白く読めましたが、これを元にエッセイを書くとなると、何を書いたら良いのか。
これまで体験した身近な死を思い浮かべたり、家族のことを考えたりしましたが、やはり、最初に思い浮かんだこと。一人っ子を自覚して、覚悟のようなものが芽生えた瞬間を書いてみようと思いました。
親の死に直面したときに、やることはたくさんあるだろうし、それを全て書くことはできないので、一つに絞り、まずは現地に行くための手段を得たことにしました。
内容としては重たくなりがちですが、少しでも軽やかに、面白く読んでもらえたらいいなと思います。