PORT TOWER再販に寄せて
PORT TOWERというアルバムを初めて作ろうとなったのは2008年のこと。実に14年も前のことである。その頃のことは生活することに必死であったため、正直あまり覚えていないのだが、the Stag Party Show TOKYOのメンバーとして劇中歌を作り、本番中に生演奏していた際に本盤のプロデューサーである桜井氏よりお話をいただいたような覚えがある。
その後、同アルバム内に収録されている「イエロウ」が某企業の楽曲コンテストにてグランプリを受賞(過去の栄光なので具体名は避ける)し、音楽事務所関係者の目に留まりあれよあれよと所属することになるのであった。
前置きが長くなったが、今回はこの話ではなくその頃に制作したCD「PORT TOWER〜完全版〜」のお話。
PORT TOWERの構想は当時で全6曲入りのミニアルバムだった。いろいろな事情から5曲入りとなってしまったが、収録するはずだった1曲ともう1曲人気の曲を足して7曲入りのアルバムにしようという話になった。追加曲は「スピード」「耳鳴り」の2曲。どちらもライブではそこそこ人気のある曲であった。
さらにその時点で発売済みであった旧版PORT TOWER収録曲「群青」のボーカルが個人的に納得がいっておらず、録り直しを決行。この曲の旧版/新版をお持ちの方はコアな灯ファンと言えるだろう。
発表する際に、どうしてもジャケットのデザインをお願いしたい画家の方がいた。友人の芸術家からの紹介で知り合ったタガワマコト(現在は漢字表記:田川誠)氏その人であった。
彼とは新宿の展示会で初めてお会いし、彼の柔らかい人柄と、キュートだけどその中に感じる影やユーモアに惹かれて興味を持ち、たくさん連絡を取り合って(私の基準だが)親しくなっていった。お茶したりご飯を食べながら話している中で、その柔らかい人柄の中に秘める熱い情熱とこだわり、一本筋の通った性格はまさに「芸術家」と呼ぶに相応しい人だった。
そんな彼にぜひ新しいCDのジャケットをお願いしたいと思い、快諾いただきこの絵が完成したのだった。
この作品を初めて見た時、思いが込み上げてきて泣きそうになってしまった(もしくは泣いてしまった)。私が生まれ育った街・神戸市中央区。そこにいつでもあったポートタワーが、大好きな画家さんの手によって描かれるなんてとんでもないことだなと思ったからである。
色合いや様々な星、横顔で向かい合った人、1人ずつイヤホンで音楽を聞いている、好きなところを挙げるとキリがないのだが、一番気に入っているところは「ポートタワーに道が続いている」というところである。私は今東京に住んでいるが、いずれ神戸に帰ろうと思っているということが大前提としてあり、そう考えた時「みんな好きな場所や物へ帰っていくのかも?」という、そんなニュアンスを好きな理由として挙げさせていただく。そこへはきっとこういう曲がりくねった道が続いているんだろう。もちろん解釈は様々である。
お気づきの方もいることと思うが、田川氏のポートタワーには2も存在する。後述する公式サイトにてWeb展示をされているので、ぜひそちらもご覧いただきストーリー性を感じていただきたい。
当時私は若く、浅はかであったために何度か不義理をしてしまった覚えがある。次に会った時には謝らなきゃいけない。そして一歩でも田川氏の活躍に近づけるようにまた精進するのみである。
最後になったが、「PORT TOWER〜完全版〜」がじき再販される。みなさんの手にこのCDが届くことを嬉しく思う。愛を込めて。
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