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たかが広報配布、されど広報配布

≪おごおりト−ク28≫

「まちづくりの未来予想図」では書き切れなかったのですが、どうしても触れておきたい地域活動に自治会の「広報配布」があります。
今回はこの「広報配布」にスポットを当てて考えてみます。過去のトークと重複する内容も含まれますがご容赦ください。

小郡市の広報配布の現状

現在、市の広報については62自治会と広報配布に関する協定を締結しており、全市民を対象に年間18回発行しています。令和5年度以降は委託契約に変更することとしていますが、今後も引き続き自治会で広報配布を継続することに変わりありません。
しかしながら、自治会では役員の高齢化や担い手不足の問題が深刻化しており、一部の自治会では地理的要因も相まって広報配布を継続していくことが困難な状況も出てきています。

この自治会の広報配布は、行政から自治会への委託事業であるため本来的には自治会固有の活動ではありませんが、実態としてはそれぞれの自治会の組織体制(隣組や班長等)を活用した自治会活動として地域に定着しています。

このことは「#18.持続可能な自治会活動とは」で述べたように、役員交代が常態化している自治会においてこれまでの活動が継続的に引き継がれていくという「自治会の活動のルーティン化による継続性の“強み”」でもあると考えています。

たかが広報配布、されど広報配布

では、なぜ行政は市の広報配布業務を自治会へ委託しているのでしょうか?
実は十数年前、私が自治会長会(区長会)の担当だった頃、自治会長(区長)の負担軽減の観点から広報配布の委託化を検討したことがあります。広報配布を自治会にではなく、民間へ全戸ポスティングとして業務委託するというものですが、その際、自治会長会から反対意見が出され、結果として断念することになりました。

行政からの提案に対して自治会長から出された意見は「たかが広報配布、されど広報配布」。
「広報配布は単なるポスティングではない」「自治会が広報配布を行うことによって誰がどこに住んでいるかが把握でき、住民相互のコミュニケーションの機会にもなっている」「地域の高齢者の見守りや住民相互の安否確認にもつながっている」などなど、その実情を把握していなかった行政の認識を反省することとなったのです。
つまり、地域での自治会を通じた広報配布の活動は、単なるポスティングとは異なり、様々な付加価値を伴って自治会活動の活性化につながる役割を担っていることに気づかされたのです。

例えば、自治会で広報を配布する際、自治公民館に行政から広報紙が届きます。それを自治会役員が手際よく組数ごとに仕分けし、必要に応じて地域回覧を差し込み、隣組長や班長が公民館へ必要部数を受け取りにきます。自治会ではそれぞれが役割を分担し、実に効率よく作業が行われており、その場では住民相互の会話に花が咲き、地域のつながりが生まれるきっかけにもなっているのです。

また、広報配布は住民が自治会の存在を認知する機会でもあり、自分自身が自治会に加入しているという帰属意識を醸成するとともに、ひいては自治会の加入率低下の抑止にもつながっていると考えられます。

何よりも、全ての自治会の広報配布によって、概ね1週間以内で必要な行政情報が市内全域の市民に届けられていることは特筆すべき地域活動だと思います。確かに広報配布活動は住民一人ひとりに負担を強いるものではありますが、それらの活動が住民の総意(総会での合意形成)によって地域で許容されていることの成果だといえます。

高齢者の見守りと災害時の安否確認

自治会ではすでに広報配布は当たり前の活動として地域に定着しており、現在までその活動が継続されていることは貴重な地域資源であり財産であるともいえます。
さらに、この自治会の広報配布活動は、実は地域の高齢者の見守りや災害時の安否確認の活動にもつながっています。

前回「まちづくりの未来予想図」では、ふれあいネットワークが自治会と一体化し、月2回の広報配布の“ついで”に高齢者の見守り活動が行われていることを述べました。
小郡市社会福祉協議会においても、地域の見守り活動の担い手不足の課題への対策として、自治会の広報配布の機会を活用した見守り活動が推奨されています。

また、地域の自主防災組織についても自治会と一体的に組織されており、平時の自治会活動の延長線上に災害時の要支援者の安否確認や避難支援が位置付けられています。自主防災活動を自治会の広報配布を活用した平常時の見守り活動と連携して取り組むことができれば、災害時の迅速な安否確認が可能になるだけでなく、日頃から顔の見える関係性によりスムーズな避難支援につながることが期待できるのです。

日頃はあまりにも当たり前すぎて、あらためて考える機会も少ない自治会の広報配布ですが、こうしてスポットを当てて考えてみると、実は貴重な地域資源といえる活動が地域の住民や自治会の手によって継続的に実践されていることがわかります。

今後の「まちづくりガイドライン」の検討において、将来にわたって持続可能な地域活動を展望するためには、今そこにある地域資源をあらためて再認識するとともに、この自治会の“強み”や地域住民による支え合いのシステムを活用していく視点が必要になると思うのです。

皆さんのお住まいの地域では、どのように広報誌の配布が行われていますか?
(2022.10.19)


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