まち協の「自主財源」のあり方
≪おごおりトーーク38≫
「まち協の活動を充実するために自主財源が必要だと思いませんか?」
「たしかに自主財源なら市役所からいろいろ言われずに済むね」
「でもその分、補助金が減らされるなら一緒じゃない」
前回、協働のまちづくり協議会(以下「まち協」)への市の財政支援としてについて述べましたが、まち協の自主財源のあり方についてはあまり触れることができなかったのであらためて稿を起こしてみたいと思います。
まち協の自主財源と一言でいっても様々な事情や形態があると思うので一概には言えませんが、ここでは自治会からの助成金(協力金や協賛金の類)を例にとって考えてみたいと思います。お気軽にお楽しみください。
平成24年度からの協働のまちづくり推進事業において、この協働のまちづくり事業を各小学校区において具体的に推進していく組織として「まち協」が設置されました。そのためまち協に対しては協働のまちづくり推進事業支援金(以下「支援金」)による財政支援が行われています。
前回も述べたとおり、この支援金の内訳は事業補助金と運営交付金となっており、まち協の事業や運営に要する経費についてはこの支援金でカバーしているため自主財源がなくてもまち協の事業実施や組織運営に支障が生じることはありません。当初の制度の建て付けでは、一部人件費や飲食費等は対象外とされているものの、まち協の活動はこの支援金で賄っていくことが前提とされています。
しかし、市としては財政健全化の一環として補助金交付の最適化及び適正化に取り組んでおり、その中では補助金交付団体に対してできる限り自主財源の確保を促し、その不足する部分について補助対象とすることが望ましいとされていることから「まち協においても自主財源を確保する必要があるのでは」といった意見が出されています。
この問題、皆さんはどのように考えますか?
地方自治体の自主財源といえば代表的なものは市税でその他に負担金や使用料、手数料、財産収入などがあり、たしかに自主財源が多いほど行政活動の自主性と安定性は確保されるといわれていますが、ではまち協ではどうなのでしょうか?
自治体の市税に相当するのは会員(構成員)の会費になりますが、そもそもまち協には「会員」という概念がありませんので地域住民一人ひとりから会費を徴収することはできません。それ以外では、各構成団体からの助成金(協力金や協賛金の類)やイベント時の参加費、物販による事業収益などが考えられます。
実は、まち協における自主財源の先行事例として自治会バス事業があげられます。自治会バス事業においては、車両は市から無償貸与され、運行に必要な経費(ガソリン代、保険料、車両管理費等)には市から補助金が交付されていますが、この必要経費のうち補助金の対象外経費(ボランティア謝金、消耗品費等)については自治会からの助成金が充てられており、この自治会助成金が自主財源に相当するものだといえます。
この自治会バス事業は、民間公共交通の撤退により移動手段がなくなってしまうことに対して地域住民から多くの要望があげられたことを受けて、地域の関係者間で高齢者の買い物支援の必要性について協議が重ねられ「協働事業として果たして行政支援は得られるのか」「地域のボランティアの協力は確保できるか」「自治会助成金について住民の理解は得られるのか」など様々な検討や協議が行われた結果として実現したものです。
特に自治会助成金については、地域の関係者との意見交換や自治会バスの事業説明、自治会総会における合意形成などを経てようやく了承が得られたものだといえます。
つまり、自主財源として自治会に助成金を求めるということは「具体的にどのような事業を行うのか」「その事業を誰が必要としているのか」「なぜ自治会の助成金が必要なのか」「その助成金が何に使われるのか」「その結果自治会はどのような受益が得られるのか」など現実的に区費を負担する地域住民に対して事業の意義と助成金の必要性を丁寧に説明し、理解・納得を得るという合意形成のプロセスが必要不可欠であるといえます。
私としては、まち協の自主財源をすべて否定するつもりはありませんが、少なくとも自治会助成金の必要性やその使途が地域の関係者間で共通理解され、その会計処理がいつでも公開の状態におかれることが必要であり、単に自主財源があったほうが都合が良いとか支援金では使い勝手が悪いからなどという理由で安易に自治会に助成金を求めることは適当でないと考えています。
こう考えると、まち協が自主財源として自治会に助成金を求める理由は、市の支援金の対象外経費の財源を確保する必要があるとき以外にはないように思えます。
そう言い切ってしまうと支援金の交付が前提となるので「それでは補助金の適正化にならない」という反論があるかもしれませんが、市民の税金を原資とした支援金も、自主財源として負担する自治会助成金も、市内に居住する地域住民が負担しているという点では出処は同じです。「補助金を適正化するためにまち協でも自主財源を確保する必要がある」というのはあくまで行政側の理屈であって、まち協にとってみればそれが市の支援金であろうと自治会助成金であろうと自分たちが負担している財源を原資としていることに違いはありません。
一方、まち協側の理屈として、自主財源を確保することになると事業費に優先的に充当することになるので結果として支援金が減額されることにもなりかねません。そうなれば「まち協が損をする」という反論もあるかも知れませんが、よく考えてみれば支援金の減額分は市の予算で翌年度に繰り越され、その分だけ翌年度の予算が充実し市民のために使える財源が増えることになるので、市民として決して損をするわけではありません。このように考えてみると、まち協があえて自主財源を確保しなければならない積極的な理由は見当たらないと感じるのは私だけでしょうか。
それでもおそらく今後、まち協の自主財源のあり方については様々な検討が行われると思いますが、まち協についての基本的理解が不十分でまち協への信頼性も低い地域住民に対して、いきなり自主財源の負担をお願いしたところで理解や納得が得られるはずはありません。
やはり、まち協に対する地域住民の共通理解を得ながら、まちづくり活動の必要性について分かりやすく伝えるとともに、地域のプラットフォームとして住民相互で対話ができる関係性を構築していくことが重要なのだと思います。
まち協にとって必要なのは、まち協の活動を固定化された役員だけで担うのではなく、校区全体に幅広く有志の人材を募り、興味や関心のある人誰もがオープンに参加できる機会と場所を提供していくこと。つまり、まち協のプラットフォーム化の取り組みこそが地域住民のまち協に対する基本的理解を深め、信頼性を高めていくことにつながるのではないでしょうか。
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